「山水石美術館」 全国の水石・美石を紹介 糸魚川(姫川) 翡翠 緑・白


糸魚川の翡翠 緑・白




糸魚川の翡翠は「姫川の翡翠」と呼ばれるように

姫川本流、姫川の支流である小滝川や横川

さらに小滝川の支流のコン沢などで採取できます




また、ウキペディアに

姫川には

蛇紋岩中に構造岩塊として含まれていたヒスイの産地があり

現在確認されている日本全国の縄文時代早期から

奈良時代の遺跡から発見されている


ヒスイ製大珠や勾玉などの装身具の原料は

この川の流域や西方にある青海川流域

および新潟県糸魚川市大和川海岸から

富山県下新川郡朝日町宮崎海岸にかけての日本海沿岸で

採取されたヒスイを用いて現地で加工されたものであると考えられている

とあります



すなわち、姫川の他に、青海川(おうみがわ)と

新潟県糸魚川市から富山県の朝日村にかけての海岸で採取できるわけです




なお、姫川の水源は、長野県北安曇郡白馬村の親海湿原の湧水とされます

かつては青木湖であったようですが、地すべりにより

堆積物によって堰き止められたと考えられています




縄文時代早期から糸魚川の翡翠は利用されてきましたが

千年以上にわたって忘れさられ、昭和13年に再発見されるまで

地元の住民でさえ、川や海で翡翠が拾えることなど知らなかったといいます


それ以前は、長い間ミャンマーが唯一の産地とされていたそうです

縄文時代から古墳時代初期の遺跡が、北海道から九州まで各地に点在していて

いたるところで翡翠の加工品(勾玉など)が発見されていますが

材料となる玉はミャンマーの奥地から中国や朝鮮を経由して

日本に渡来したというのがそれまでの通説だったといいます


このため日本産翡翠の発見は

考古学の常識をくつがえす大発見であったわけです





小滝川ヒスイ峡は、昭和14年に確認された日本最初のヒスイ産地だといいます

小滝川の清流の中にヒスイの原石が点在し、ロッククライマーたちが

登攀する明星山(1188m)の大岩壁を望むことができます






高浪池(たかなみのいけ)と、明星山(みょうじょうさん)  転写

明星山の下が小滝ヒスイ川峡





古事記には

沼河比売(ぬなかわひめ、奴奈川姫)は

「越」という古代国家を治めていて

越は、さまざまな玉を産し、栄えていた

この石が出雲の大国主命に伝えられ

大国主命は、越に赴き、 沼河比売を妻とした

とあります


万葉集に詠まれた「渟名河」は現在の姫川で

その名は奴奈川姫に由来するとされます




「翡翠」という名称は

中国では元々カワセミを指す言葉であった

翡翠は、瑪瑙やその他の宝石とともに「玉」と総称されていた


のちに白地に緑色の翡翠は

カワセミの羽の色に例えられ翡翠玉と名づけられた

そして翡翠玉がいつしか「玉」全体をさす名前になった


古代日本では玉は「たま」、カワセミは「しょうびん」と呼ばれていた

したがって「翡翠」の語は比較的最近の時代に

中国から輸入されたと推察できる

ということらしいです




翡翠には、硬質のジェダイトと、軟質のネフライトがあります

硬玉翡翠の主な産地は、ミャンマー、ロシア、アメリカ、中南米そして日本です

軟玉翡翠は、中国の新疆ウイグル自治区

ニュージーランド、アメリカが主な産地だといいます



糸魚川ではどちらも採取できます

ネフライトは、中国では彫刻されたりしますが

軟玉は中国以外では宝石とされず半貴石に分類されます

糸魚川ではキツネ石(ニセ翡翠)扱いされるほど価値が低くみられています





我々が「翡翠」と呼んでいる石は

鉱物学的には、ヒスイ輝石岩(ひすい輝石が集まってできた石)というらしく

ヒスイ輝石は、元来 無色透明で

翡翠の緑色の部分は、オンファス輝石あるいは

コスモクロア輝石などといった緑色の鉱物と

緻密な構造を形成しているそうです

ラベンダーは、チタンによる発色、青はチタンと鉄による発色だといいます


正確に言えば、ヒスイとは、ヒスイ輝石を50%以上含むヒスイ輝石岩だそうです




ダイヤモンドがモース硬度10に対し、翡翠は6.5~7とされます

但し、モース硬度とはひっかき傷に対する抵抗力を示すもので

ダイヤはハンマーで叩くと粉々に割れてしまいます

これに対し翡翠は、ハンマーを跳ね返すほど硬い石だと言います





翡翠の最大の評価の基準は

宝石質であるか(透過があるか) ということであり

「この石からどれだけ勾玉やルース(指輪用などにカットされたモノ)が採れるか」

ということです



これに対し、私が趣味とする水石、観賞石」は

「この石は、台つけして、観賞にたえうるものなのか?」

「どのように台つけすれば、飾ることができるのか?

に主眼が置く世界です


それには、石肌、形、絵柄 などをいくつかの観点から石を見て

総合的な見地から、価値判断を与える世界です


つまり、一般の翡翠愛好家とは世界が違う、趣味が違うのです



但し、翡翠の愛好家には、川ずれや、海ずれした翡翠を好む人も多く

これらに一定の価値を与えているところに

日本人の美意識がうかがえますし、水石文化に通じていますよね





さて、翡翠がどのように誕生したかです


糸魚川の翡翠は5億年前にできたそうです


これまで、曹長石という鉱物が

ヒスイ輝石と石英に分かれてできたとされていたようですが

翡翠の中および周囲の岩石にも、石英が発見されていないので

これは間違えだと判ったそうです



翡翠は蛇紋岩と関係するようです

翡翠の出来方についてはまだ謎の部分が多くあるそうですが

不思議なことに、翡翠は蛇紋岩地帯で見つかるそうです

(但し、蛇紋岩地帯だからといって必ず翡翠が見つかるとは限らない)



海洋プレートが沈み込む地帯では、プレートが持ってきた水分と反応して

橄欖(かんらん)岩が蛇紋岩に変化します

橄欖岩とは地球の地下深くマントルの岩石を形成している岩石です


地下深くにあるので地上には存在しないはずですが

地殻変動などで地上にも出てきます


蛇紋岩は比重が軽いので浮きあがろうとするそうですが

これも地殻変動に便乗して地上に現れるそうです

とはいっても、地下から地上へ億年単位はかかるようですが・・・



金生山の大理石と根尾の菊花石の生成について

プレートテクトニクス を参照してください 】




翡翠も蛇紋岩が出来るような地下深くで形成され

翡翠を蛇紋岩が地上へ運んできたのではないかとされているのです



ヒスイが世界的にもまれにしか採れない理由は

低温(といっても300~400度)で高圧という

非常に限定された条件下でしか生成されないからだといいます


普通は高圧の場所は高温になってしまいます

しかし海洋プレートが冷たいため、地下30キロぐらいまで沈んでも

比較的低温が保たれ、ヒスイが生成されるらしいのです


それが比重の軽い蛇紋岩に取り込まれて上昇してくるわけです

このためヒスイが採れるのは

ミャンマー、グアテマラ、メキシコ、カリフォルニア、日本などの

環太平洋造山帯に限られているそうです






クリックすると写真が拡大表示されます






横21×高さ(台込)24×奥19  およそ9㎏
















ヒスイのお店 Kiyo Shop の川口清志さんより購入











横21×高さ9×奥10.5  2360g










日本人はとくに翡翠が好きだとされています

糸魚川の翡翠のよさは1つには、川ずれ、海ずれの

自然石を観賞する文化があるということです


ミャンマーのものは山から掘り出した石であるのに対し

自然石の情緒というか風格を持ち合わせています



つぎに翡翠には100%がないところによさがあります

全部完全に緑とかラベンダー色とか・・・

つまり未完成の完全を求めるところに翡翠の魅力があります



それと世界的にみても、硬質の翡翠が採れるところが少ないという魅力や

川の翡翠、海の翡翠、沢の翡翠、また圧搾翡翠 などあり

さらに色も、緑、ラベンダー、青、黒など豊富で、コレクションするのに楽しい石です



また、観賞石、鉱物、装飾品・・・様々なコレクターがいるのも翡翠の強みです

ちなみに宝石としての価値をもつのは、だいたい硬度7以上で

硬度7というと石英系(水晶、ジャスパー、メノウ)と、硬質の翡翠です


ジャスパーやメノウは

全国あちこち、また世界のあちこちに存在するためか観賞石が中心です

翡翠は宝石としても扱われるので、観賞石にならない小さな石でも価値を持ちます



翡翠に批判的な人は

1つには「うさんくさい」ことをあげます


確かにヤフオクに毎週のように

「昭和初期に採取」とか「博物館級」などと謳う翡翠が

出品されているわけですから

「ミャンマー産じゃないのか?」と疑いたくなりますよね



川ずれなら、まず糸魚川のモノだろうと思ったら

それも間違えで

原石を外国で購入し

バレル研磨(同質の硬さの石と一緒に

コンクリートミキサーのような機械でころがす)

を軽くかければ川ずれに見えるわけです


つまり「これは糸魚川産です」

と言われたら信じるしかないのです


佐渡の錦紅石のように「間違えなく

佐渡の錦紅石だ」と言えないところがあります


また「佐渡の錦紅石」や「菊花石」のように

日本産が世界一と語れないところもあります



もう1つは、翡翠の結晶が、ダイヤモンドのような金剛質でなく

味の素を固めたような結晶質で、磨いてもロウのような質感になるのを

嫌う人もいます

但し、これは好き嫌いのところなので

逆にそれが好きという人もいます




この石は、白がまさに純白で緑が映えます

翡翠の場合、緑のところが「翡翠」であとは母岩というのではなく

翡翠の基本は「白」で、それに別の鉱物が混じったところが

緑になったりラベンダーになったりするわけで

つまり白い母岩を含めて全部が翡翠なのです


おそらく軽くバレルが入っていると思いますが

川ずれ石のように風合いがあり、とてもお気に入りです

緑がべったりつく金山谷産の特徴がみられます

「これほど白いのが金山谷でとれるのかな?」(ふつうは灰色)

というところもありますが、そのへんは御愛嬌で(笑)







なお、バレル研磨は

日本では、当初、鋳型でつくられた

鉄製品などの

バリ(はみ出した薄いヒレ状の部分)取り専門に

使われていたという話を聞きました



そこで

バレル研磨機を調べてみると


回転形バレル、振動形バレル、遠心流動形バレルなどがある


研磨材、コンパウンド(研磨助剤)、水を使って研磨する湿式バレルと

水を使用しない 乾式バレルに分類される


コンパウンドには、液体と粉末のものがあり

用途目的(研磨力向上/光沢/清浄/防錆)により使い分ける


とありました




研磨材  転写




また

その昔、樽を使って宝石の原石を磨いていたことに由来している

回転バレルが最も古いタイプの研磨機で、槽(おけ)の形も似ている

ともありました



なお、バレル(バーレル)とは

ヤード・ポンド法における体積を表す単位で

語源は「樽」であり、樽の容積に由来するものであるそうです


バレル研磨は

主に切削(金属を切ること)加工・プレス加工品のバリ取りや

鋳物の表面仕上げに使用されているそうです




翡翠なんかを磨くときは、最初、大きな研磨材で粗く仕上げて

徐々に、研磨材を細かくしていくと

ピカピカに仕上がるらしいです


また、石と石が、ぶつかると割れてしまうので

ぶつからないように、研磨材をたくさん使用すると聞きました











横14.5×高さ(台込)21.5×奥7  およそ3.3㎏










長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんからいただきました

台座は、中路さん作











横7×高さ14×奥2.5  523g


キレイな白に、アップルグリーンの緑点 透過もよいです











横7×高さ12.5×奥5  612g




金山谷の黒緑翡翠

研磨してあります





金山谷は青海川の支流にあり黒翡翠で知られます











横11×高さ(台込)17×奥7  2352g














古くに、白山紋石庵の山下さんが糸井川の石屋で購入したもので

これも金山谷の黒系統の翡翠と思われます












横7×高さ2×奥3.5  147g




上質な白にアップルグリーン、透過もよい











横4×高さ8×奥3.5  173g


透過はないですが黄緑一色

金山谷産



ヒスイのお店 Kiyo Shop の川口清志さんより購入










横7×高さ4×奥5.5  274g









緑の発色は、コスモクロア(宇宙輝石)らしいです

非常に透過がよいアップルグリーンの翡翠です


コスモクロア(ユレーアイト)は、隕石から初めて発見され(1965)

当初、地球には存在しない鉱物と考えられていたようです

のちにビルマ(1984)、岡山県大佐山(1996)

糸魚川(1997)において翡翠の中に発見されています

但し、これらよりも古く1978年に、姫川産の鮮緑色の鉱物が

ユレーアイトと同定していたそうですが、論文発表されることはなかったといいます

このときの鮮緑色の鉱物が1997年に発表されたものだそうです


ヒスイのお店 Kiyo Shop の川口清志さんより購入











横6×高さ2×奥4.5  79g




青海川産だと思われます











横10.5×高さ6×奥9.5  833g




上の石と同じタイプだと思われます

研磨してあります


ヒスイのお店 Kiyo Shop の川口清志さんより購入











横6.5×高さ6.5×奥3.5  159g


小品だがキレイな白地に緑点が入り、透過もよいです

おそらく自然のままと思われます












横13×高さ19.5×奥11  3㎏強





ヒスイのお店 Kiyo Shop の川口清志さんより購入











横7.5×高さ4.5×奥8  403g










このようなとりわけ透明度が高くトロンとした色艶の翡翠を

ロウカン質の翡翠、ロウカン翡翠と呼びます


ロウカン(琅玕)とは、そもそも中国で、青々とした美しい竹を意味し

それが転じて、美しい玉や、美しい文章など美しいものの例えになったようです


この石はヤフオクに「博物館級」とうたって出品されていたものを落札しました












おまけでもらった40gのマメ石ですが山形なので

ちょっとお気に入り












横23×高さ(台込)19.5×奥11.5  およそ5㎏














透過のよい白翡翠で、蛍光灯の明かりのなかでもこれだけ透過します


古くに、白山紋石庵の山下さんが、姫川の本流で自採した石で

その時、石拾いをしていた土地の老人が

この石は横川(姫川の支流)産だと言ったそうです












横11×高さ6×奥6.5  709g










薄い水色の地にアップルグリーン  透過もよい











横10.5×高さ5×奥6  544







やや青っぽい地  透過もよい


磨いたものです











横17.5×高さ14×奥9.5  およそ3.2㎏






















ヤフオクで落札したものです


その説明文には

白系の地にきれいな緑が出ています

断面側は結晶もキラキラしており透過性も高いです

切り出したり、割った石を磨いたものではなく

姫川の激流で洗われたのみの自然石です

とあったように


白地(ほぼ白ですが微妙に水色がかったようにもみえる)

アップルグリーンと結晶が美しい自然の翡翠です










姫川産ネフライト

(軟質翡翠)



そもそも「翡翠」とくくりますが

「硬質翡翠」(ジェダイト)と「軟質翡翠」(ネフライト)に

鉱物的なつながりはなく、見た目では区別がつきにくいことから

どちらも「翡翠」(ジェード)と呼んでいきたそうです



歴史的経緯は

中国では、軟玉(ネフライト)しか採れず

古代より中国で価値ある宝石とされてきましたが

18世紀に入りミャンマーでジェダイトが発見されたため

ネフライトは軟玉と呼ばれ区別されるようになったといいます





硬玉を構成する主要な鉱物はヒスイ輝石であるのに対し

軟玉は角閃石で構成されているとされます


硬玉と軟玉の違いが科学的に示されたのは

1863年 フランスの鉱物学者ダモーラによるとされます




ネフライトはアクチノライト(透緑閃石))や

トレモライト(透閃石)などの

角閃石の極微の結晶が凝集したものをいうそうです


このためネフライトは鉱物名というより

単一の鉱物微結晶が集合・凝集した岩石名が正しいようです


トレモライトは基本色が白色で

鉄分がまざると深緑色に発色してアクチノライトになるそうです






横12×高さ(台込)22×奥11  およそ3.5㎏




軟玉は中国以外では宝石とされず半貴石に分類されます


糸魚川ではキツネ石(ニセ翡翠)扱いされるほど

ジェダイトに比べて価値が低くみられています



とはいえ、≪軟質≫といえど

ネフライトは6~6.5あるとされます

〔ジェダイトは6.5~7  神居古潭石の硬度は5.5程度とされる〕



また、ヤフオクをみていると判るように

糸魚川産のネフライトというのは

希少石ではないものの

そんなに頻繁に出品されるものではありません



この石のように

飾るのに姿がよく

ある程度の大きさがあるものとなると

なかなか手に入りにくいです



富山県の高道万石堂さんから購入しました



なお、糸魚川のネフライトは

現地では「油石」(あぶらいし)と呼ばれているようです


蛇紋岩系である神居古潭石も同様に「油石」の名があります








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