鞍馬石(本,金,黒鞍馬,つくばい,靴脱ぎ石)・そげ石(鞍馬・多摩川・筑波石)


鞍馬石




京都地学名所めぐり 鞍馬石の地球科学的説明 地学 京都の石

というサイトによると


鞍馬石は表面が赤茶色に錆びていて

茶道の侘び寂の世界に欠かせないものです

中に穴をほってつくばいにしたり、石灯籠にしたり

また庭に敷いたり(飛び石)、縁側の靴脱ぎ石に使われています


表面の赤茶けた錆びは、風化によるものですが

鞍馬石に限らず、他の花こう岩でも見られます


しかし、この鞍馬石の錆びは他の花こう岩と違って、ほどよく錆びていて

完全に中まで錆びが浸透していないことが特徴です

それゆえに非常に価値のある石なのです


とあるように、鞍馬石とは、庭石というより

つくばいや靴脱ぎ石として、茶室に欠かせないことから

特別な石とされているわけです


むしろ「景石」

(日本庭園で、風趣を添えるために所々に配した石・竜安寺石庭の石など)

として用いられることは稀だといいます






蹲踞(つくばい)  転写





靴脱ぎ石  転写





飛び石  転写





しかし、鞍馬石については、私はよく分かりません

分からないというのは、色々調べてみて

専門家、つまり京都の石研究者、石材屋さん

あるいは水石業者によって書いてあることがバラバラということです




まず、おおかた一致しているところから書くと

鞍馬石とは、鉄錆を帯びた花崗岩(かこうがん)です

詳しくは、花崗閃緑岩です



鞍馬石と呼ばれている花崗岩閃緑岩には

磁硫鉄鉱という金属を含む鉱物が含まれていて

赤茶けた錆はこの磁硫鉄鉱が錆びて作られるものです




花崗岩は、マグマが地下深くでゆっくり冷えて固まった岩石=深成岩で

この地球の地殻を構成する主要な岩石で、世界中いたる所で産出されます






日本200名山 燕(つばくろ)岳の山頂部

遠くから眺めて風格に欠けるので200名山に甘んじていますが

花崗岩が立ち並んだ山頂部美しさが別格なことから

北アルプスのなかでもとても人気の高い山です






日本100名山 平(ひら)ヶ岳

(群馬と新潟の県境)のシンボル玉子石と高層湿原

玉子石は花崗岩による自然の芸術です





基本、花崗岩は、白黒のゴマ塩のような石ですが

この他に、ピンクやオレンジや赤といった様々な色があります

花崗岩は、石英、黒雲母、長石(カリ長石、斜長石)

という鉱物から作られる岩石ですが

色の違いはカリ長石の色の違いだとのことです






転写




転写




転写




調べたところによると、こうです


カリ長石はカリウム、アルミニウム、ケイ素と少しのナトリウム、

カルシウムを主な成分とします

ただし他の元素もわずかに含まれ

特に微量成分として比較的良く含まれるのが鉄です

この鉄の量と酸化の程度によって色が変わってきます


鉄が多く、酸化程度が進むにつれて、カリ長石の色は黄色っぽいものから

ピンク,橙色,赤色に変わっていきます





転写





ちなみに石英は透明度が非常によいので、岩石の中に埋め込まれていると

外からの光をほとんど通過させ

光が奥にある鉱物に吸収されて灰色に見えるそうです

一方、長石は、外からの光が中で乱反射して、乳白色に見えるそうです







花崗岩は、御影石(みかげいし)ともいいます

墓石、灯篭、鳥居、橋の欄干、記念碑のほとんどは

花崗岩(御影石)で出来ていますし

建物の床や壁に張ってある建築用石材などは

大理石と2分する程使われています


もともと、御影石とは、兵庫県の御影村(現在の神戸市東灘区)で

産出された花崗岩の呼び名だったそうです

本来の兵庫県産のものは、本御影石と呼んで区別し

最高級品として高額で取り引きが行われているそうです


なお、御影石には色合いによって、白御影石、青御影石、桜御影石

黒御影石、赤御影石の5種類があるようで

青御影石は花崗岩以外にも閃緑岩を用い

黒御影石は花崗岩ではなく

閃緑岩、斑れい岩、ガラス質の安山岩なんだそうです






御影石による石像  転写



驚いたことに、花崗岩の硬度は6.5もあります

古谷石が4.5、神居古潭石が5.5

翡翠やジャスパーが7~6.5なので

翡翠やジャスパーなみにあるわけです



ちなみに、神居古潭石は

その硬さゆえに川石の王、ひいては水石の王として

君臨していると思っておられる方も多いですが

むしろ、硬さに軟らかさを兼ねるゆえに

川ずれたときに、なんともいえない優美さが備わっているのです



硬さに軟らかさが加わるその微妙なバランスこそが

古潭が古潭であるゆえんなわけです







さて、花崗岩と、花崗閃緑岩の違いはなんでしょう?

カリ長石の量の違いです

カリ長石が斜長石より多いものを花崗岩

少ないものを花崗閃緑岩と呼んでいるそうです


なお、藤田崇(大阪工業大学名誉教授)の

「深成岩の特性とその見方」というサイトによると

カリ長石が少なく斜長石が多くなると花崗閃緑岩と呼ばれるが

日本ではこの花崗閃緑岩が多く、これを花崗岩と称している

とあります






また、花崗岩に比べ輝石、角閃石などの有色鉱物が多く、花崗岩より黒っぽい

閃緑岩(必ず石英を含むため石英閃緑岩ともいう)というのがあります

あとで重要なキーワードになるので頭の片隅においていてください





転写





京都地学名所めぐり 鞍馬石の地球科学的説明 地学 京都の石

というサイトに

このようにあります


鞍馬石は表面の赤錆の他に、丸い形をしているのも大きな特徴です

丸いからこそつくばいを作るのに適しているのです


花崗岩というのは地下でマグマが数百万年かけてじっくり冷え固まった岩石です

ほとんどの物質は冷えるときに体積が縮みます


花崗岩がマグマから冷えてできるときも、体積が縮みます

体積が小さくなるとき、花崗岩は鋭利な刃物で切ったように

サイコロ状にひび割れるのです

これを方状節理といいます


花崗岩が風化するとき、この節理と呼ばれる割れ目に水などが浸透し

まずは節理の部分から風化していきます


節理の中でもとくにサイコロの角っこの部分は特に風化が早く進み

サイコロの角が丸くなって、それで丸いボールのような

花こう岩ができるというわけです


うまいぐあいにたまねぎの皮がむけるように、べろべろとはげおちる場合もあり

このように丸く風化することを「たまねぎ状風化」と呼んでいます






寝覚(ねざめ)の床 木曽川  方状節理   転写






鞍馬石  転写




たまねぎ状風化によって剥離した部分が

そげ石として水石になるわけです






ちなみに、新潟の千草石という墓石になる石も

たまねぎ状に風化することで知られていて

皮目は、盆栽鉢にl利用ているようです


以下、転写























千草石をいくつかの石材屋さんのサイトで調べ、総合すると

新潟県妙高市、新井地域で産出される安山岩

美しいもえぎ色で、時間が経つと薄茶色に変化する

故・田中角栄をはじめ歴代首相の墓にも使用されている

ということになります


     



しかし、もえぎ色とはこのような↓色をいうのであり


     


ネットでみる千草石の画像は全て黒かグレーです








さて、これで鞍馬石とはおよそどういうものかは理解できますね

ここからが分からないところです



鞍馬石は、京都市の鞍馬より産し

地表下にあるものを掘り出して採取するといいます



そして多くの石材業者さんのサイトには


1、本鞍馬石は玉状に採石されること


2、鞍馬石には、本鞍馬石、丹波鞍馬石

甲州鞍馬石(新鞍馬石)というのがあって

「本鞍馬石」とは、丹波鞍馬石(丹鞍)と

山梨県産の甲州鞍馬石(新鞍)に対して

本場ものであることを示す言葉であること


が書かれています





しかし、京都地学名所めぐり 鞍馬石の地球科学的説明 地学 京都の石 には


鞍馬で有名な石はもうひとつあります

本鞍馬石というもので、これは鞍馬寺山門の石段に使われています

鞍馬寺を訪れるときはこの石段の石をよく眺めてから山を登るようにしてください


先ほどの鞍馬石とは少し違っていて

本鞍馬石は斜長石と、石英、角閃石の3つの鉱物からできた石です

黒く見えるのが角閃石。長細い形をしています

黒雲母と違って、角閃石はぎらぎらと光る光沢やぺらぺらめくれる性質がありません

少し曇ったような光沢です

とあります


つまり、花崗岩(花崗閃緑岩)でなく、閃緑岩(石英閃緑岩)こそが

「本鞍馬石」だと書いてあるのです






鞍馬寺山門と石段  転写





また、平塚市博物館(神奈川県平塚市)の石材図鑑というサイトには

京都で産する鞍馬石は、表面が暗赤褐色に錆びていることから珍重されます

甲州鞍馬石に対して本鞍馬石とも呼ばれます

京都市北方には、小規模な花崗岩体がいくつか分布しています

これらの岩体は白亜紀後期(8500万年前)の地層に、マグマが貫入してできたもので

主として石英閃緑岩からトーナル岩、一部で花崗閃緑岩からなっています

とあります


つまり、甲州鞍馬石に対して本鞍馬石という言葉があるとしつつも

主として

石英閃緑岩からトーナル岩(花崗岩と閃緑岩の中間のような性質を持った岩石)が

本鞍馬石であるとしているわけです






貫入岩体の例  転写





以上のように「本鞍馬」という言葉の内容が

石材業者と、石の研究家で一致してないのです






次に、鞍馬石の本場の京都市で

山野草や水石を販売している 石田精華園さんのサイトに

水石としての鞍馬石について書かれたものがあります



それによると、まず

水石となる石は主として堆積岩より産するが

鞍馬石は例外で花崗岩よりなっている


こうした花崗岩による鞍馬石を「本鞍馬」と呼んだのだが

産出量が少ないため

花崗岩と他の成分がミックスされたものも

「本鞍馬」と呼ぶようになった

とあります



しかし本鞍馬石は、現在、産出は減少したとはいえ

つくばいや靴脱ぎ石にするほど大量に産出されてきたわけで(笑)

佐渡の錦紅石のような希少石ではありません


つまり今、仮に採れなくなったとしても

過去に採ったブツが大量にあって、ぐるぐる回っているはずです

なのでこの話はおかしいですよね



また、花崗岩と他の成分がミックスされた本鞍馬石とは

いったいどんなものなんでしょうか?






「無」という文字が彫られているらしい  転写



こうした製品が

ふつうに石材屋さんのネットショップで売られているので

花崗岩による鞍馬石を「本鞍馬」と呼んだのだが

産出量が少ないため

花崗岩と他の成分がミックスされたものも

「本鞍馬」と呼ぶようになった

という話には、怪しさを感じます




さらに、鞍馬石を


1、本鞍馬(鉄分の酸化により、錆びの出た花崗岩)


2、鬼鞍馬(花崗岩が一度粉々に砕けて再び結晶化したものなどで

ゴツゴツしたこぶや穴をもつもの)


これは翡翠でいうところの「圧搾翡翠」ですね

再結晶化はもちろん地下深いところでなされます






3、黒鞍馬(黒雲母を多量に含む)


4、金鞍馬(鞍馬石と呼んでいる中でも、鉱物の含有量の多く

鉱物の酸化現象により、茶褐色から黒ずんだもの)


5、粟鞍馬(鉄分を含まない粟粒状の物質が混入したもののようで

鉄分が少ないため味わいに乏しいもののようである)


6、米鞍馬(石面がざらざらしていて、米粒状の白い隆起があるもの)


7、雲母鞍馬(どの鞍馬にも多少は雲母が入っているが

I字型または粒状の雲母の結晶化が模様として混入しているもの)



といったように

7つに分類していますが

京都の水石家はホントにこんな分類をしているんでしょうか?



わたしも幾人かの著名な水石業者さんとお付き合いがありますが

おおむね黄色いものを「金鞍馬」

黒いものを「黒鞍馬」と分けるくらいです




また、黒鞍馬については


「黒雲母を多量に含み、かなり硬質な地層から出る」

とありますが

黒雲母の硬度は2.5~3しかないのに

黒雲母が多量に混入すると

なぜ硬質になるのか? これもおかしな話です



また「黒雲母を多量に含む」なら

八海山石のように、なんかキラキラした物を含んだ感じ

ラメをちりばめた感じにならなければおかしいです


しかし、水石の本や、ヤフオクに出品されてくる

黒鞍馬をみていると、そうしたラメなどみられないものも多いです




28cm 底切り  転写






造園業でいう

黒鞍馬とはこれです  転写





転写




なので、本来の黒鞍馬は、こうした↓ものが正解でしょう




転写







横28×高さ13.5×奥9.5  およそ3.5㎏




この石は、菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんよりいただきました


渡辺さんが水石趣味の仲間と

八海山石の探石と展示会の見学に行って

購入してきた石です



通常の八海とは違い花崗岩だと思います

鞍馬地方の黒鞍馬とみまがうような質です


ジャグレと抜けと猿橋が見られます





ちなみに、石材屋さんには

「青鞍馬」という名称もあるので

どういうものなのか、問い合わせしてみました


本鞍馬にも、中が白っぽい灰色のものと

中が濃い灰色のものがあり

濃い灰色のものを「青鞍馬」というそうです

青のほうが上質とされているようです





鞍馬石の仏像彫刻  転写






話を戻します

以上のことを総合的に考えると

水石でいうところの黒鞍馬石とは

鞍馬地方でとれる黒い色をした山石の総称で

花崗岩系統ばかりでなく

それよりずっと質のいい石も含めていうようです

(質のいいとは、硬質という意味でなく、水石向きという意味)


花崗岩では、錆でも出てない限り

水石とならないような気もしますし・・・





また、石田精華園さんの販売サイトに

「鞍馬の鉄石」というものがありました


「鉄石」というからには、鉄分を多く含み

それが酸化されて黒くなったものだと推測されます


一般に言われている「黒鞍馬石」とは

この鞍馬の鉄石を含めているのかも知れません





いずれにせよ、いわゆる鞍馬石が、水石の分野では

神居古潭石や瀬田川石あるいは四万十川石

のような石ほど人気がでなかったのは


水石というのは、鞍馬石のような表面的な侘び寂より

石質のよさからくるもの

石の内面からにじみ出てくる美しさを重視する世界であったから

といっていいと思います






クリックすると写真が拡大表示されます






横40×高さ(台込)25×奥18  17㎏弱







の石は、黒鞍馬の一級品です



石質がよく、石に力がみなぎっている印象を与えます

大地を割って隆起したようなエネルギーを感じさせる岩山です



茨城県結城市の株木さんという水石業者からいただきました

株木さんというかたは、業者に卸す業者さんでもあり

水石の世界では、名の知られたかたです


もう80歳ちかいかたですが

業者の人みなが、口を揃えて

株木さんの人のよさを語るくらい親切なかたです



関東、東北、新潟あたりの拾い屋さんから

株木さんのもとに石がもちこまれるわけですから

岩手の久慈川の石  福島の伊南川・只見川の石  新潟の八海山や仙見川石

茨城の久慈川や鬼怒川の石  群馬の渡良瀬川や桐生川の石

あたりは専門です




株木さんによると、金鞍馬は、水石ブームのおり

かなり出回ったそうです

なぜなら、金鞍馬の場合、石質が劣るものでも

錆をつけてごまかしが効くからなんだそうです


これに対し、黒鞍馬はごまかしが効かないので

水石においては、黒のほうを上とみるべきでしょう











横18.5×高さ(台込)9.5×奥7.5  1297g




この石も、大阪府堺市の太田古陶苑さんからいただきました

黒鞍馬です


小ぶりながら石質がいいです











横21×高さ(台込)8×奥10  2340g






上から


フラッシュありで撮りましたが

実物の色はむしろこちらのほうが近いです




底面



この石は、玄人(くろうと)うけする本鞍馬です

鞍馬石のよさを、水石で表現するのに

一番かなった形と大きさと色調をもっています


菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんよりいただきました



天勝庵さんが言うには

「鞍馬石はだいたいソゲの手が入ったものばかりで、この石のように中の石が

川ずれして形のできたものは珍しいというか、あまり見たことない」

とのことでした





1960年代に活躍した水石界の大御所 村田圭司は

「加茂の七石」について

京都の北山を水源とする清流が高野(たかの)川や賀茂(かも)川に

合流するあたり一帯から産するもので

古くから最高の質を備えた雅石として名高い


(1)八瀬真黒(やせまぐろ) 高野川上流八瀬の産

落ち着いた黒い色調に巣立ちといわれる粒状の小穴が無数にある


(2)賤機(しずはた) 静原(しずはら)川の産

珪石(けいせき)に糸を巻いたような糸巻石が出る


(3)鞍馬(くらま) 鞍馬川の産

鉄さび色を帯びた渋い色調の石である


(4)畚下(ふごろし) 鞍馬川と貴船(きぶね)川の合流点から出る

茶褐色のチャート


(5)貴船 貴船川の産

帯紫色の雅石


(6)雲ヶ畑(くもがはた) 雲ヶ畑産

黄褐色のチャート


(7)紅加茂 市ノ瀬(いちのせ)産

赤色のチャート

と語られています



つまり、水石としての鞍馬石は、山の石ばかりでなく

川に入って転がったものもあるということが言えるわけです




ただ、天勝庵さんはこうも続けました

「とはいえ京都の石というのは、なんせ手が入ったものばかりで

間違えなく自然にできたものかと言われると確証がもてない」



なお、形は、かなづきのような道具で

コツコツと叩いて作るそうです




本鞍馬石には、たまねぎ状風化によってできた丸い石

という大前提あるわけですが

この石なら、形としてそんなに不自然ではないですし

錆のつき方もわりと自然ぽいですし


逆にこの石が作ったものであれば

本鞍馬、金鞍馬 については

もうお手上げということになります(笑)












横37×高さ(台込)7.5×奥13  2037g




















この石は、長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんからいただきました

鞍馬の名石です



石面がざらざらしていて、米粒状の白い隆起がある(底)

米鞍馬ではないかのことです


底は手が入っているのかもしれません



また、鞍馬石は、長年もちこむと

鉄分が酸化して

黒ずんでくると言われていますが

この石の古色が、それによるものか

養石によるものか不明です







そげ石



そげ石は、鞍馬石のところで、詳しく書いたように

鉄分の多い石の「皮目」」で


「たまねぎ状風化」によって剥離した部分です



船形、三日月形、U字形をしたものを抽象石として観賞するわけです


そげ石とは、そげた石の意味で、鞍馬石と多摩川石のそげ石が

とりわけ知られています







多摩川のそげ石は

この石(多摩の鉄丸石)についていた皮目です




以下の話は、多摩川石愛好会の3代目会長 笹本さんより実際に聞いた話です



かなづきでたたくと、中の硬い石のまわりについた外皮がはがれる


湾曲したもの(U字形のもの)が得られそうだと

ビニールシートの上でたたき

バラバラに割れた破片を集めて接着剤でくっつける


また、風合いを出すため、錆を付けたり色々なことをする


また、かなづきでたたいて外皮=そげ石を得ようとすると

細かな破片がいくつか出る


この破片もグラインダーで舟形に削って

そげ石の小さいものとしたりもする


さらには、本体のそげ石も形を削って整えているものも多い




全部がそうではないでしょうが

どこまでが自然なものか判らないものが多いということです





もともと水石に関しては、私は山形石一辺倒で

抽象石などはおまけみたいに考えているので

さらにこのように加工されたものとなると

参考に1つ2つあればいいやとなりますね




なお、多摩川の良質の石は、荒川の石とは違い上流部にはなく

下流部の東京都府中市是政(これまさ)あたりの川原で拾えます


 多摩川石のうち、最も特徴を示すのが大栗川の蒼黒石です



大栗川は多摩川の支流で

八王子の方から流れてきて是政橋で多摩川本流へと注がれますが

大栗川の最上部を20年ほど前?におとずれたとき

すでに2カ所ほどの沢をのこしてコンクリート化されていました


この小さな沢で、大栗川の蒼黒石やそげ石が採取できたのです

大栗川の蒼黒石はここから

調布市の是政(これまさ)あたりまで流れていくわけです








鞍馬石のそげ





横20.5×高さ(台込)8.5×奥12  993g







この石は、整形も錆つけもしていない

自然のそげ石と言えそうです












横18.5×高さ28×奥10  1453g




















底は叩いて座りをよくしたようです



鞍馬のそげで、三日月形、大きさもわりとあります







もともとは、この写真のとおり

もう少し明るい色をしていました


この状態で、やはり錆付けはなされているはずですし

形もおそらくは整えてあると思います





さらに、少し色が明るいので、古クギと酸化鉄で

錆付けをしてみた結果、掲載した写真のようになったわけです




メルカリで

やや小ぶりの古クギを 20本×4=80本 購入








陶芸 釉薬 原料 酸化鉄 500g を

アマゾンで購入 (506円)





古クギ80本と、酸化鉄およそ半分を

バケツに入れ、水を張った中に

鞍馬石を数週間、漬け込んでみました


もうちょっと黒っぽくしてもよかったかもしれません




[陶芸 材料] 酸化鉄 1kg

こちら↓は楽天で396円です



●鉄分が多いため、黒色釉などを作るのに使用します

とあります





他には、骨董などを古めかしくみせるために用いられる

過マンガン酸カリウムを水に溶かして煮詰め

これを、白っぽいソゲに塗ると

鞍馬石のような風合いになるようです


過マンガン酸カリウム溶液は

傷口の殺菌剤などにも使われていて、通販で普通に買えます



過マンガン酸カリウム溶液は、紫ですが

塗ると茶黒くなるようです



古物商の方から、直接聞いた話では

もともと古いモノであっても、色が悪いと

過マンガン酸カリウム溶液など塗るなどして

色を好ましいものにすることはふつうになされているそうです



過マンガン酸カリウム溶液を、水にたらし

これを温めたものを、骨董品に塗るそうです


どれくらいの色にしたいかで

濃度を調整したり

2回塗り、3回塗りとしたりするそうです






転写




転写




転写


さらにセメントに染料を混ぜて型に流してつくられた

鞍馬石風の鉢もあります



最後の写真の鉢がそうしたものなのかどうなのかは不明










多摩川石のそげ





横27×高さ12.5(台なし)×奥9.5  903g










この石も、多摩川石愛好会の3代目会長 笹本さんよりいただきました


なかなかのそげです

色も写真よりも実際は黒っぽく、時代を感じさせます










筑波石




花崗岩が、この地球の地殻を構成する主要な岩石で

世界中いたる所で産出される

ということは

鞍馬石のような錆が入った花崗岩も

そんなに希少な石ではないはずです



実際、つくばいや靴脱ぎ石などに利用されるものとして

本場の鞍馬の他、丹波鞍馬石、甲州鞍馬石が著名です



筑波石という石のなかにも

こうした錆が入った岩石があります





茨城県結城市の水石業者 株木さんは

盆栽屋さんに頼まれて

筑波石のソゲから盆栽鉢をつくっていたことがあるそうです




盆栽の鉢としては、関東では

利根さび石というのが知られていますが

これは人口の石ですね


自然石の石粒を型で固めたものです




利根さび石  転写






これに対し、筑波石は、鞍馬石と同様

天然の石で

株木さんは、そのソゲに錆付けをしていたわけです



まず、旋盤(せんばん)の工場から

鉄クズをもらってきて、

クズに水を加えサビさせるそうです



ちなみに、旋盤とは

円柱状の材料を回し、それに刃ものを当てて

金属の材料を削る工作機械です





転写




転写


鉄クズが錆びたところの水に

筑波石を2、3か月ほど漬けておくと

すっかり錆色に染まるそうです


花崗岩は、表面にデコボコがあるからなのか

錆が付きやすいとのことでした




しばらくつくっていたそうですが

手間ばかりかかり、たいしたお金にならないのでやめてしまったそうです






茨城県石岡市で

筑波石の販売と石積みをなされている業者さんのサイトによると


筑波石は

筑波山から採れる黒御影石の一種で、現在は大変貴重になっています

掘り出したばかりの時は乳白色の様な色ですが、経年変化により黒褐色していき

このさまを楽しめるのが筑波石の良いところと言われています

加工して使うこともありますが、主に庭石や石積みなどに使用されます

とあります




また、茨城県桜井市の業者さんのサイトには


「筑波石」は筑波山で眠っている石で筑波山に登ってみると

千本の梅と筑波石との融合がとても素晴らしいので是非ご覧になって

筑波石を知って頂ければ幸いです

「筑波石」は大正初期より庭石として好まれて来ました

マグマがゆっくりと固まって出来た斑れい岩で黒御影の一種です

「最高の庭石」として有名ですが、現在は大変貴重な石になっています

「筑波石」が好まれるのは、年を重ねる事に乳白色から黒褐色へと

変化していく姿を見る事が出来る事だと思います

とあります






転写



大正初期から庭石として多用され

庭石としてブランド力があるようです



なお、福島県浪江町に産する「新筑波石」という低価な

代用品もあったようですが

2011年の原発事故により避難区域になってしまい

仕入に行かれなくなってしまったそうです








深田久弥は、日本100名山の選定にあたり

その第一の条件を

人に人格があるように、山にも山格があり

眺めて立派の山であること とし


その他、個性のある山を選ぶ

歴史を重んじる

としました


さらに追加条件として

標高は1500mを超えることとしています


但し、標高1500m以上には、例外があり

例外として選ばれたのが、開聞岳(924m)と、筑波山(877m)です





開聞岳(鹿児島県)  転写





母子島(はこじま)遊水地より筑波山  転写




常陸風土記〔奈良時代の地誌〕には


御祖神(みやおのかみ)が諸神のもとを巡る途中

新嘗(にいなめ・新穀を神にささげる祭)の晩に富士山についた

御祖神に対し、富士の神は「物忌みである」として食事を出すのを断った

御祖神は怒り「お前の山を夏冬に関係なく雪や霜に閉じ込めてやる」と言って去った

このため富士にはいつも雪が降り、人も登らず供物をささげるものがいない


御祖神が東にいくと、筑波山があった

筑波の神は、快くもてなした

喜んだ御祖神は「あなたの山は日月とともに幸せである

人々が集い供物をたくさん捧げるでしょう

永遠に、遊楽は、きわまることを知らないでしょう」と述べた


という有名な話があります




深田久弥の「日本百名山」には

“「常陸風土記」によれば、関東諸国の男女は、春花咲く頃、秋紅葉の節

(筑波山に)相たずさえて登り、山上で御馳走を拡げ、歌をうたって舞い楽しみ

そこで夜を過ごす者もあった

筑波山へ登ってその会合で男から結婚を申し込まれないような女は

一人前ではないと言われさえした

わが国では宗教登山が最初のように言われるが

筑波山のような大衆の遊楽登山も早くから行われていたのである”

とあります




但し、筑波山が宗教登山の対象とされなかったわけではないようです

筑波山は、標高1000mにも満たない山ですが

その山容の美しさ

また万葉の時代から歌に詠まれ、西の富士・東の筑波と称されてきた歴史から

深田久弥は100山に加えていますが


この筑波山の山頂の2つの峰〔男体山(871m)・女体山(877m)〕には

それぞれ 筑波男大神〔つくばおのおおかみ・伊耶那岐命〕

筑波女大神〔つくばめのおおかみ・伊耶那岐命〕が祀られています



里から望むことができる山で、神々しい山容をもつ山なら

筑波山に限らず全て宗教登山の対象になってきたと言っても過言ではないでしょう








さて、ほとんどの筑波石は、白っぽい色をしているそうですが

株木さんのもとに拾い屋さんがもってくるものなかに

錆付けなどしなくても

もともと錆がよく出ているものがあったそうです


株木さんが、拾い屋さんに尋ねたところによると


山崩れがあったある一カ所からは

もともと錆のよく出ている筑波石が採取でる

とのことだったそうです




以下の3石は、その錆付けしていない石で

株木さんからいただいてきたものです






横33×高さ21.5×奥15  およそ7㎏





色のよい筑波で、2方向から山形石として観賞できますが

下のように、どちらも背面がないのが残念なところです




















横30×高さ7.5×奥16  1903g








筑波石のそげ石です


この石は、茨城県結城市の水石業者 株木さんよりいただきました


株木さんのお客さんがお亡くなりになり

株木さんのもとにきた石です


その方は、筑波の人で

その人の自採石です


叩くと清音を発します











横21.5×高さ(台込)11.5×奥11  2436g







この石も、茨城県結城市の水石業者 株木さんよりいただきました


株木さんのお客さんがお亡くなりになり

株木さんのもとにきた石です


その方は、筑波の人で

その人の自採石で

台座は以前、株木さんが職人につくらせたもの

とのことでした



筑波石としては、もっとも肌がいいというか

面白い石です




質は、軟らかそう、もろそうにみえますが

石英質なので

真黒石よりずっと硬質です








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