緋山酔恭「山水石美術館」 全国の水石・美石を紹介 『抽象石・心象石』


抽象石・心象石




抽象という意味を知らず

「抽象石」という言葉を使用していたり


「抽象石」と「心象石」

という言葉をごっちゃに考えてしまっていたりする


水石家の方がほとんどだと思いますので

判りやすく「抽象石」「心象石」とはなにか?

について述べておきます




抽象とは、経験されたもののなかのある特性に注目し

これを取出し、ほかを捨てることです



抽象的の反対が、具体的です

「具体的には」とは、はっきりと実体を示すことを言います



例えば「高額な石です」というだけでは

金額がつかめませんよね


これに対し「およそ20万の石です」というと

具体的に示したことになるわけです



それと同様に、
山形石の場合でいうと

谷(沢)やカール(氷河に削られた場所)

あるいは滝などを備え

山として観賞されるものは、抽象石とはいえません



これに対し、そうした地形的要素を全て捨てさって

形のみ、、形という特性だけで山として観賞される石が

抽象石と言えるでしょう





ついでに「鑑賞石」なのか? 「鑑賞石」が正しいのか?

についてふれておきます


観賞は、見て楽しむことを意味します


鑑賞の「鑑」は「鑑識」「鑑別」というように

「これはどっちだろう」「良いものだろうか悪いものだろうか」

と見分ける意味があるようです


鑑賞は「音楽鑑賞」や「絵画鑑賞」、「詩を鑑賞する」というように

芸術作品全般に用いられます


娯楽映画は見て楽しむものなので「映画観賞」

芸術映画であれば「映画鑑賞」と書いたりするそうです



水石の場合、本来、鑑賞なのでしょうけれど

堅苦しさを感じるので

私なんかは「観賞石」と書くことが多いです


そのときの気分で 適当に用いているところもあります





話を、抽象石・心象石に戻します


一方、心象とは、イメージです


水石自体、心に浮かぶ

理想的な山水の景を表現したものであるという意味では

全てが心象石と言えますが


神居古潭石の大家として名を馳せた

吉田凡石さんなんかが確立した心象石とは

その石がなにかを感じさせる存在であるなら

それが抽象石である

ということではないかと思います



例えば、丸い石から、禅の心を感じとれれば

その石は心象石ということになります




かつて札幌愛石会の相談役をしている野村さんは

吉田凡石さん宅に古潭を見にいったことがあったそうです


しかし何百と凡石さんが所有する神居古潭石の中で

野村さんが「いいな」と思える石は

2つしかなくその1つをもらってきたといいます


野村さん曰く「凡石さんは、抽象石が好きだから、見方が偏るんです」

とのことでした




私も、吉田さんのような芸術家タイプの右脳はもちあわせていないので

抽象石、心象石というのは、私にとってとくに意味をもちません

収集の対象として特別の地位にないということです



ただ、石質が素敵て

「よく自然にこういう形ができたものだ」というように

天工の妙を感じさせるさせるものであれば

抽象石でも、それなりによさは判ります







さて、一方、抽象画というのがあります

抽象画とはなんでしょう?


20世紀前半におこった新しい絵画芸術で

「描かれる主題がない」のです


それ以前の絵画というのは

描かれ方や技法というのは様々なものがありましたが

どんな形式であれ、描かれるモチーフが存在しました


人物であったり、花や果物といった静物であったり、風景であったり・・・


キュビズム(ピカソはその代表)など、写実性が低い作品であったとしても

人物や静物などのモチーフは存在していました



つまりそれまでの絵画というのは

目に映る世界を、独自の目線でどのようにキャンバスに再現するか

が命題だったわけです


これに対しあらゆる主題をキャンバスから排除し

描かれる対象が存在しない絵を描くという大革命が

抽象絵画だったわけです



こういった意味から「抽象石」をとらえると

抽象石=心象石になるのです





つまり、私を含めた大部分の凡人が

「この絵、抽象的で何が描かれているのか分からん」

「凡さんの石、抽象的でどこがいいのか分からん」

というものであるからこそ

抽象芸術になるといった世界なのです





ちなみに、形象石という言葉もあります


形象とは、形、姿の意味なので

主に「姿石」を指す場合が多いですが


水石全てをいう場合や

抽象石や心象石をいう場合もあるので注意が必要です





また「山型石」「山形石」どっちが本来の意味から正しいのか?


これに関してはどちらでも問題はないと思います


「形」とは、具体的に姿を意味し

「型」とは、分類される基準や様式を意味します


例えば、本来はこんなの使い分けが正しいようです

「はやりの髪型」「今日の私の髪形」

「ほっそりとした体型」「昔と変わらない体形」




水石の本をみると「山形石」「島形石」

と書かれているものがほとんどですが


水石は、≪型≫を重んじる文化なので

私個人としては

本来「山型石」「島型石」のほうがよいかとは思っています


ちなみに、水石のみならず

日本人の文化では「型」というのを重視します




それと、≪山形≫イコール≪おにぎり形≫のイメージが強く

形が限定されてしまう感じをうけるところもあります






クリックすると写真が拡大表示されます







天草真黒石





横19×高さ(台込)7×奥10.5  912g







この石は、山がもつべき

谷(沢)やカール(氷河の侵食によりつくられた窪地)などといった地形的な要素を

一切捨て去り、形のみをもってみごとに山を表現した抽象石です










信濃川石






横17×高さ(台込)15.5×奥8  2318g


















茨城 久慈川石





横16×高さ10.5×奥7.5  1696g











この石は、オイルを塗った状態よりも

そのままの方が味があります












横16.5×高さ(台込)10.5×奥7.5  1599g














三陸海岸石





横14.5×高さ10×奥9.5  1503g







単なる丸い石というだけでなく

なにかを感じさせてくる心象石です










三陸海岸石





横11×高さ(台込)14.5×奥5.5  1322g



上下逆転







上下逆転















久慈川石





横7×高さ(台なし)4.5×奥  174g




小品ですが、質の良い真黒の丸石で

オイルは塗ってありません










矢作川石

(やはぎがわいし)










横16×高さ(台込)14×奥6.5  1481g


本来は、このように観賞するよう台座がありますが

これでは山に雪が降っている景色を想像させるので

心象石とはいい難いです










鞍馬石

〔そげ石〕





横20.5×高さ(台込)8.5×奥12  993g




鞍馬のそげは、抽象石(心象石)の代表と言えます


この石は、整形も錆つけもしていない

自然のそげ石と言えそうです










鞍馬石

〔そげ石〕





横18.5×高さ28×奥10  1453g













鞍馬のそげで、三日月形、大きさもわりとあります

しかし自然そのままのものと比べると

錆付けがなされているはずですし

形も整えてあると思います










多摩川石

〔そげ石〕




横27×高さ12.5(台なし)×奥9.5  903g










写真よりも実際は黒っぽく、時代を感じさせます









茨城 久慈川石





横22×高さ38×奥9  9㎏弱










オイルを塗っての撮影です




この石は、良質な真黒石の心象石(抽象石)です

質はキンキンの硬さです










加茂川石





横22×高さ(台込)13.5×奥9.5  2697g




抽象的な山形石









瀬田川 金真黒石

(かねまぐろいし)





横32.5×高さ(台込)19×奥5  およそ3.5㎏














瀬田川 真黒石





横18.5×高さ(台込)8.5×奥9.5  1249g




















瀬田川 梨地真黒石





横23×高さ(台込)15.5×奥6.5  2086g







形のみをもってみごとに山を表現した抽象石です









瀬田川 梨地真黒石





横40.5×高さ(台込)18.5×奥11  およそ10㎏



















山形風の抽象石で

瀬田の梨地石の中では

最も質のよいタイプです


まさに、≪梨地真黒≫と呼ぶにふさわしい石質です



裏もみごと!!

左上は、ちりめん肌に近いです










秩父の糸掛け+ムラサキ孔雀石





横24.5×高さ14.5×奥15  3㎏強







この石は、ムラサキ孔雀石と、糸掛石が同居した

とても珍しいものです



竜宮へ向かう亀として観賞できるかな?

抽象石でもよいと思います








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