海石・海岸石 〔関東以南〕 海の石と言えば、青森県の西海岸で採れる津軽錦石や 新潟県糸魚川市から富山県の朝日村にかけての海岸で採取できる翡翠が まず頭に浮かびますが、これらは美石です ここでは水石としての海石について述べていきます 水石になる川の石は、全国あちらこちらの河川で拾え 産地で集めていたら切りがありませんよね・・・ これに対し、全国的に名のとおっている山の石・土中石と言ったら 北海道の金山石とポンピラ石と豊似石 和歌山と秩父の古谷石 静岡の静岳石と三倉石 愛媛の抹香石 福岡の千仏石 くらいしかありません 海の石はさらに少なく 山水景石となるような海石で 全国的に広く知られているのは 「玄海真黒石」くらいしかありません 関東の「湘南海岸石」も 山水景石となる海石として そこそこ知られています 湘南海岸石は、石質、景ともに 四万十川石にわりと似ていて 四万十川石を小ぶりにしたような感じです この他、東北の「三陸海岸石」、九州の「天草真黒石」 広島県の「高根島石」などが知られています 黒の丸石としては 北海道の「雄武海岸石」〔紋別郡雄武(おうむ)町〕 なんがが知られ 安倍川(静岡県)の鉄丸石と同質のものとして 高知の室戸岬あたりで採れる 「室戸の鉄丸石(てつがんせき)」が知られています また、長崎県対馬では、 「対馬渦紋石(かもんせき)」と「対馬鎧石(よろいいし)」 という海石が採取できます それから能登半島の最先端 禄剛崎付近の海岸では 「能登銀石」と呼ばれる硫化瑪瑙が採れ 形の良いものは、水石として観賞されています 以上がそこそこ名のとおった海石・海岸石です なお、海石とはおそらく 原石地から海までの距離が短いため 川で、「川ズレ石」と呼べるほどの大きさにならずに 海に行ってしまい 海で小さくなり、また海ズレもして 波の作用により、海岸にもどされた石 と考えられます 佐渡の赤玉の海ズレ石もそうですね なお、宮城県石巻市の北東雄勝町を中心に産出する 雄勝(おがつ)石なんかは おおむね沢で拾う石であるといいます やはり原石地から海までの距離が短いため 石の一部分が川ズレしても 川ズレ石と呼べるほどのものにはなならず たいがいは大きいまま海まで行ってしまうようです このため水石となるものは 本来 、沢の石が正解で 山石とも川石とも海石ともいえず 分類するのに困ります 〔ちなみに硯となる石として有名な硬質粘板岩の雄勝石と 水石の雄勝石は別モノです〕 海石というのは、総じて小ぶりで 形のよいものが少ないです 川の石なら「小さいな」と感じるサイズの石でも 海の石なら「これで十分」くらいに思って いいのではないでしょうか・・・ クリックすると写真が拡大表示されます 玄海真黒石 玄海真黒石は、主に北九州の響灘 若松地区や芦屋地区の海岸で採取できるようです 若松地区や芦屋地区は遠賀川(おんががわ)河口付近にあたるので 原石地よりこの川により運ばれた石が 海で洗われて玄海真黒石となるのでしょうか? 海岸の石で潮が引いた時を狙って探石するようです 横22×高さ(台込)12×奥12 1910g この石は、玄海の最高レベルということで 長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんからいただきました 石は硬質、キンキン音がします 「間違えなく玄海ですか?」との私の質問に 「ものすごく玄海の特徴を具えています」 というお応えだったので その玄関の特徴を聞いてみました 第一に、指で押したみたいなへこみがみられること (他の産地の石にはなかなか見られない) あと、海ズレしていること (川ズレだともっと丸い石になるということか?) をあげておられました また、玄海の石といっても 原石地によって色々なものが採れるそうですが このタイプが、本来の玄海真黒なんだそうです 台座は、名人クラスと称される 中路さんご自身の作です 横16×高さ(台込)12×奥8 1127g この石は、長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんよりいただきました 横27×高さ(台込)8×奥12.5 1881g この石は、札幌愛石会の相談役の野村さんよりいただきました 野村がヤフオクに「千仏石」として出品していたのを、落札しました その説明欄に≪本石は、品格ある遠山形で、山稜と、山裾とのバランスがよく 千仏特有の筋目も景に変化をつけており 主峰から続く山脈は上品で美しいと思います≫とありました また「20年近く前、東京の著名な石友より分けて頂いたもの」とのことでした ただ、ヤフオクの写真でみたときから 「これはいい石だけど、千仏ではないな」と感じておりました 石を手にして、おそらく、玄海真黒ではないかと思います 質は、超硬質で、古潭あたりではお話になりません 石を叩くと、清らかなよい音がします 天草真黒石 横19×高さ(台込)7×奥10.5 912g この石は、長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんよりいただきました 水石には、抽象石という分野があります 抽象とは、経験されたもののなかのある特性に注目してこれを取出し ほかを捨てること です この石は、山がもつべき 谷(沢)やカール(氷河の侵食によりつくられた窪地)などといった地形的な要素を 一切捨て去り、形のみをもってみごとに山を表現しています 対馬鎧石 長崎県対馬の鎧石です 浅茅(あそう)湾の砂地で採取されるそうです 横14×高さ(台込)19.5×奥10 およそ3.5㎏ 国宝・赤糸威大鎧(あかいとおどしおおよろい) 「梅鶯飾」(うめうぐいすかざり) 春日大社所蔵 転写 国宝・赤糸威大鎧(あかいとおどしおおよろい) 「竹虎飾」 春日大社所蔵 転写 「梅鶯雀飾」と「竹虎飾」の鎧は、平成22年、平成23年に 文化庁の監督のもと保存修理されています 鎧石は、形を鎧に見立てているわけです もちろん、底も自然です この石は、とりわけ鎧縞がみごとです ちなみに、鎧岩として名高いのは 三重の鎧石ですが 三重の鎧岩は、基本、庭石です 奥伊勢地方の度会(わたらい)郡の 山々や谷間から産出するようです チャートと石灰岩の互層岩(ごそういわ)らしいです 横25×高さ12.5×奥9 3.5㎏強 岩壁に小さな滝がみられます この石は底切りしてありますが 三重の鎧岩は、基本、庭石なので 底切りでも、こうした水石になるサイズで 鎧模様が綺麗で しかも景のあるものはまずなく 最高クラスのもののようです 対馬渦紋石 その鎧石とともに、対馬の名石として知られているのが 渦紋石(かもんせき)です 渦紋石も浅茅湾で採取できる海石で 石質は、安倍川(静岡県)や室戸(高知県)の 鉄丸石(てつがんせき)に似ていますが 紋様が出るところに面白さがあります 横13.5×高さ(台込)16.5×奥2 1371g この石は、表面をかるく磨いてあるようで 艶々です 長崎県諫早市の佳石庵の中路さんよりいただきました 室戸鉄丸石 横8.5×高さ10×奥5.5 746g たいした石ではないですが、ふつう鉄丸は錆色なのに対し この石は、鋼鉄色なのが珍しいです 波で洗われつやがよいです 鉄丸はへそと呼ばれる部分をもつのが特徴です 能登銀石 能登銀石は、硫化瑪瑙です 硫化瑪瑙とは、瑪瑙の中に、マーカサイト(白鉄鉱) もしくは、パイライト(黄鉄鉱)が入り込んだ石なんだそうです 能登半島の最先端 禄剛崎付近の海岸で採れる「能登銀石」 津軽錦石の「銀花石」 翡翠で有名な糸魚川の姫川でとれる「金華石」 がよく知られています 津軽錦石の「銀花石」 能登銀石は、能登半島の最先端 禄剛崎付近の海岸で採れるようです 形の良いものは、水石として観賞されます 北陸地方では人気の石で ほぼ拾い尽くされてしまっているそうです また、海石なので、なかなか形のいいものは出てきません 出たとしても、ほとんどが底を切った 底切り石 ですね 写真の石は、底切りなしの全くの自然です 横19.5×高さ(台込)12×奥13 およそ3.2㎏g 入道岳という感じの山容です 日本100名山 越後駒ヶ岳より見る 日本200名山 八海山(左に入道岳) 奥に小さく民謡で知られる300名山の米山 よく海ズレしています 長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんからいただきました 横6.3×高さ9.5×奥3 275g スライスするとこのようにみられますが こうしたキレイな花模様が出るものはなかなかありません 能登半島の最先端 禄剛崎の灯台 写真は転写ですが 私も20代前半に車でここを訪れ、夜のいさり火と 朝日を見て思い出となっています 横27×高さ(台込)19×奥11 およそ9㎏ 高根島石 (こうねしまいし) 高根島(こうねしま)は 瀬戸内海中部にある芸予諸島の島で 広島県尾道市に属す島です 転写 高根島灯台 転写 高根島は サイズは小さいモノしかでないそうですが 山水石となる真黒系の 海石を産することで 知られています また、真黒系とは別に 高根島石には、矢掛石に似たタイプのものもあるそうです ネットで調べてみると 矢掛石は 岡山県小田郡美星町を流れる星田川と美山川の上流地域に産する濃緑色の転石で 盆石または庭石として愛用されている 岩質は、輝緑岩(深成岩の一種 玄武岩とほぼ同じ化学組成でやや変質して緑色がかっている)や 斑糲岩(はんれいがん・輝緑岩より粗粒の深成岩)である とあります 星田川と美山川(みやまがわ)は、岡山県西部を流れる 岡山三大河川の一つ 高梁川(たかはしがわ・111km)水系の河川です 横19×高さ7.5×奥9 1088g この石は、矢掛石に似たタイプで 軟らかそうにみえますが 超硬質で、叩くとカンカン響きます 見た目と違い真黒石より、ずっと硬質です
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