鶴富石 (つるとみいし) 平家の落人の集落として知られる宮崎県椎葉村に 「鶴富姫伝説」というものがあり その主人公 鶴富姫(つるとみひめ)より名づけられたそうです 鶴富姫伝説とは、那須大八郎と鶴富姫の恋物語とも呼ばれます およそ以下のような話です 山口県下関の壇ノ浦でなされた合戦(1185)に敗れ、平家は滅亡しますが それにより残党は散り散りばらばらとなり、各地に逃れました ある一行は、椎葉村に逃れました しかしいつしかこのことが源頼朝に知れることとなり 頼朝は、弓の名手 那須与一宗高(なすのよいちむねたか)に 討伐してくるよう命じます ところが、与一はこのとき病気にかかっていたので 代わりに弟の大八郎宗久が向かいました 大八郎がそこでみたのは 源氏への敵意など捨て、畑を耕し、平和に暮らす平家の人々でした 心を打たれた大八郎は、頼朝に 「椎葉の残党はすべて討ち果たしました」と報告し この地に屋敷を建てて生活をはじめます さらに大八郎は、平家の守り神をまつる神社を建てたり 平家の人々に農業を教えたりし やがて平将門につながる鶴富という美しい平家の娘と夫婦となります 大八郎は椎葉に3年暮らしましたが やがて、帰国するよう命がくだります 鶴富姫はこのときみごもっていて 大八郎は姫に 「生まれてくる子が男子なら、私の故郷の下野(しもつけ・栃木県)によこしなさい 女の子ならこの地で育てなさい」 と言い残すと、親子の証拠の品として、刀を与え、椎葉を去りました 鶴富姫の子は女子で 成人して婿を取りましが 鶴富はこの婿に「那須」の姓を名乗らせました 椎葉村には、鶴富姫と大八郎が住んだと伝える鶴富屋敷という立派な屋敷が残って 国の重要文化財に指定されているようです 転写 また、大八郎が平家一族のために、安芸の厳島神社より分社、創建したという 椎葉厳島神社もあるそうです 鶴富石は 椎葉村の山奥でその母岩が見られるそうですが 入手した石は、県境を越えて熊本県の五木村を流れる五木川で揚石された 極めて珍しいものだそうです 全面に山桜を彷彿させるピンクがかった白色の花が咲いているのが この石の特徴とのことです なお、五木川(いつきがわ)は、熊本県と宮崎県の境に位置する 国見岳(1739m・300名山)を源流とし 熊本県球磨郡五木村内にて五木小川と合流 以降が川辺川(かわのべがわ)となるようです 川辺川は、球磨川水系最大の支流で長さは62kmです クリックすると写真が拡大表示されます 横16×高さ12×奥8 2232g 伊予石 伊予石は、愛媛県加茂川・肱川(ひじかわ)が産地とされます 愛媛県の加茂川は、石鎚(いしづちやま)山系に源を発し 愛媛県西条市で瀬戸内海に注ぐ加茂川水系の本流で 長さ28.64km です 四国最高峰のみならず近畿以西の最高峰 日本100名山 石鎚山(いしづちやま・いしづちさん 1982m) 転写 石鎚山 山頂付近 肱川(ひじかわ)は、愛媛県南予地方を流れる肱川水系の本流で 鳥坂峠(愛媛県西予市宇和町久保・470m)に源を発し 大洲市で瀬戸内海に注ぎます 肱川に流れ込む支流は474本と非常に多いそうです また、長さ103キロメートルと比較的長大な河川であるにもかかわらず 源流部と河口との直線距離が僅か18キロメートルしかなく その屈曲振りが窺えます 横32×高さ20×奥18 およそ10㎏ この石は、茨城県結城市の水石業者 株木さんよりいただきました 一度、お客の手に渡り、何十年かしてに戻ってきた石だそうです おそらく、愛媛の加茂川か肱川の沢で採れたものと思われます 伊予の赤石 神奈川県平塚市博物館のホームページに 石材図鑑というのがあり、伊予の青石について 以下のようにあります 伊予青石が属する三波川帯の結晶片岩は、中央構造線の南側に沿って 関東から紀伊半島、四国、九州まで細長く分布しています 関東地方では埼玉県長瀞~群馬県鬼石町に分布し 三波石(さんばせき)として知られています 伊予青石はこの三波石と同質の類似した岩石です 中央構造線は、世界第一級の大断層です 熊本県の八代(やつしろ)から、徳島、伊勢をへて長野県の諏訪の南を通り 群馬県の下仁田、埼玉県の寄居付近でも確認されていて 連続して陸地を1000km以上追跡できるといいます 転写 伊予の青石は、愛媛県の代表的な自然石で 昔から石碑や庭石、石垣などに広く利用されています 伊愛媛県の北部を、ほぼ東西に走る中央構造線の南側には 三波川変成帯(さんばがわへんせいたい)と呼ばれる構造帯があり この構造帯に分布している緑色・青緑色系の岩石を 「伊予の青石」( (緑泥片岩),)と呼んでいるそうです 転写 この青石の同系で、赤のものもあるようです 以下に掲載した石は 地元の水石家が、ヤフオクに出品したものを落札したものです そのときの説明には 愛媛県東部では、伊予の青石という緑色系の石が昔から有名で 2-3トンもある巨石を庭石として置いてある民家も珍しくはありません 伊予の青石が100石に対して1-2石でしょうか 「伊予の赤石」と呼ばれる、ピンク色に発色した それはそれは素晴らしく美しい石があります 学名は紅簾片岩(こうれんへんがん)といいます 絶対数が少ないだけに、たまに見つけても 水石には、大き過ぎたり、単なる破片であったり 水石として適する大きさ・形の「伊予の赤石」は滅多にありません 出品石は、据わりは抜群で、まったくの天然、うぶ石です 横22×高さ4.5×奥9.5 1759g 関川のザクロ石 以下に掲載した石は 地元の水石家が、ヤフオクに出品したものを落札したものです その説明にはおよそ以下のように書かれてありました 愛媛県の東部を流れる関川のザクロ石です 四国を東西に貫く構造線は 愛媛県南部の山脈に最も現れており、多種多様な鉱物が観られますが ガーネットと同質と言われるザクロの花が観られるのは 全国でも、愛媛県の関川水系だけに限定されます ザクロ部分は、もちろん宝石のガーネットとは異なり透明感はありませんが 時折、透明度の高いものもあります 関川のザクロ石が面白いのは、緑や灰褐色系の地肌に、ザクロの花だけでなく 白の鉱物が紋様となって現われていることが多い点です 出品石は、ザクロの花々と共に、その白の紋様が流れるように入っており 他の色彩石には決してみられない関川石固有の特長となっています 底を含めて全くの天然、うぶ石です ネットで調べてみると 愛媛県四国中央市関川は 全国でも珍しい岩石や鉱物が採集できるフィールドとして知られている 関川上流域の赤石山系には 東赤石かんらん岩体や五良津緑簾石角閃岩体などに付随して 三波川帯の中でも最高変成度の変成作用により形成された エクロジャイト(赤色の柘榴石と緑色の輝石を主成分とする)や ざくろ石角閃岩など国内でも珍しい岩石が産出する という記事がありました しかし関川という河川自体の詳しい記述はなく 長さについては不明です 関川水系の本流のようです 源流地は赤石山系の最高峰の東赤石山(1706m)であろうか? 日本200名山 東赤石山 転写 横7.5×高さ(台込)15×奥4 875g このように石を観賞するときが いちばん石がキラキラ輝いてしてみえます ザクロ石、英名 ガーネットの原石は 鉱物収集家の興味で、水石趣味の人は感心が薄いです 長野県佐久市川上村 甲武信鉱山のザクロ石 しかし、この関川のザクロ石は、川ズレがとてもよく 梅花石として観賞できますし また母岩には白雲母がふんだんに混じっているので プラチナ色にキラキラと輝いています なお、鉱物としてみても国産鉱物は 外国産に比べて、評価がずっと高いです ところがオークションは、私以外に入札者がなく なんと1000円で落ちました 3万の即決でもいただいたかもしれません こうしたマイナーな美石系の水石は 水石だけしている人は、入札してこない というか 知識がないので入札できない だろうな とは思っていましたが とはいえ1人や2人知っている人がいて 競るかもしれないとも思っていました ちなみにザクロ石の硬度は6.5~7.5 翡翠やジャスパーと同等かそれを上回ります 帝釈川石 横14×高さ20×奥8 2470g この帝釈川も硬質で、叩くとカンカン響きます ヤフオクで落札しましたが その説明には 国定公園となっている帝釈峡の下流で揚石された帝釈川石です 帝釈峡は石灰質の岩盤で、つまり軟質なものが多いのですが 出品石は超硬質ながら、中央は川擦れして浸食されており 通好みの肌と景を呈しています ずっしりと重い石ですので台座に据えていただくと 見栄えもさらに良くなるかと思います 底を含めてまったくの天然、うぶ石です とありました ヤフオクの写真が、実物より白っぽかったのでしょう とても安く入手できましたがなかなかの良石です 揖斐川石といっても通るほど、色合いやジャクレ方が似ていますね と 出品なされた方にメールすると この↓ようなありがたいお言葉をいただきました 帝釈峡は国定公園ですので、そこには入れず 石は下流の入りづらい場所からかなり川を遡らないと揚石できません また現地は石灰質の地層ですので 今回の石のような石灰質の入らない硬質なタイプは極めて稀です 揖斐川は水石の三大河川なのでしょうが 帝釈には帝釈にしかない素晴らしさがありますので 是非、「これぞ帝釈川石」としてご主張下さい 矢掛石 ネットで調べてみると 矢掛石は 岡山県小田郡美星町を流れる星田川と 美山川の上流地域に産する濃緑色の転石で 盆石または庭石として愛用されている 岩質は、輝緑岩(深成岩の一種 玄武岩とほぼ同じ化学組成でやや変質して緑色がかっている)や 斑糲岩(はんれいがん・輝緑岩より粗粒の深成岩)である とあります 星田川と美山川(みやまがわ)は、岡山県西部を流れる 岡山三大河川の一つ 高梁川(たかはしがわ・111km)水系の河川です なお、岡山県倉敷市の西北15km地点に位置する山あいの小田郡矢掛町では 高級墓石材となる「備中青みがげ」が採れます 矢掛青みかげ、讃岐青みかげ、飛鳥石、青みかげ 等とも呼ばれます 原石は、山の頂からワイヤーとロープを使っておろすそうです 転写 御影石(みかげいし)に多い花崗岩と比べて 硬く、色が黒っぽいのが特徴といいます 石質は、深成岩の一つ 閃緑岩(せんりょくがん)で きめ細かい黒に、青みがかかった、石によっては少し緑がかった 深みのある色合いものが多いといいます 横23×高さ(台込)30×奥12.5 およそ6.5㎏ 滝石として観られます フラッシュありで撮影 この石は、形もさることながら 石肌が非常にすぐれ ちりめん肌をしています ちりめん肌としては、藤枝縮緬石が名高いですが 藤枝縮緬石は石質が軟らかいと色が白っぽいのが欠点です この石は、叩くとキンキン音がする超硬質、真黒の縮緬石です ヤフオクで落札しましたが 「こんなに素晴らしい肌の石が西日本にあるのか・・・」と 驚いたほどです
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