緋山酔恭「山水石美術館」 全国の水石・美石を紹介 西美濃 金生山 化石花瓶


金生山 化石花瓶




金生山〔きんしょうざん・正式にはかなぶやま〕は

岐阜県大垣市赤坂町にある伊吹山地の南東端に位置する

標高217mの山です

金生山は化石界で有名です



2億5千万年前(古生代ペルム紀)、赤道直下のサンゴ礁に生息した

フズリナ、サンゴ、ウミユリ、巻貝、二枚貝などの化石が豊富に産出し

「日本の古生物学発祥の地」「古生物のメッカ」として知られています

中でもシカマイアという二枚貝やウミユリは、世界一の大きさを誇っています

(金生山化石館のサイトから引用)




大理石自体は4億年前の地殻変動により出来たとも云われています




さて、化石であるにもかかわらず

水石としてとりわけ評価される石があります


門司の梅花石ですね


菊花石ほどでないにせよ

景色のよいモノは、10万円近くいったりします



ちなみに門司の梅花は

輪切りにした茎(おくらを輪切りにしたような感じ)を

花として見ているわけです



ウミユリの骨格は、死後短時間で分離してしまうため

完全な形のままで化石となることは大変まれとされます


門司梅花の銘品とされるものは

茎の輪切りなので、水石としての評価はあっても

化石としての評価はつかないようです







ウミユリの標本 (転写)




岐阜県地名文化研究会 会長 説田武紀さんのサイト

http://noukakuken.jp/lecture/lec1609.html

に、以下のようにあります


【 ウミユリは、ヒトデやウニなどの棘皮きょくひ動物の仲間です

冠部かんぶと呼ばれる花のような部位と茎があることから

植物のような名前がつけられたのです


最古のウミユリの化石は

約5億年前の古生代オルドビス紀の地層から見つかっており

古生代の浅海で大繁栄したようですが

現在のウミユリは水深100m以上の深い海にしか分布していません


他の海洋生物から身を守るために

比較的安全な深い海に逃げ延びたものと考えられており

当時の祖先形を最もよく保存している生物として

「生きている化石」のひとつにも数えられているのです


幼生から成長して成体になるまでの間は

海の中を自由に動き回れるようです

そして成体になってもゆっくりですが動くようです


最近、深海底を這い歩くウミユリの映像が公開されています


この映像の真為は確認できませんでしたが

化石から連想されるウミユリのイメージによく合っています 】


映像(動画)のリンクです

https://www.youtube.com/watch?v=cZcomBnNKXg






水石愛好家ならこの本を目にした人は多いのではないでしょうか

いわば「門司梅花石の聖典」とされてきたと言っていいでしょう











私もこの本に影響を受け

「門司の梅花石ってすごい景色のモノがあるんだな」

と信者になっていたわけです



ところが水石ばかりでなく、美石をも極めてくると

「これ作っていない?」

と疑問がでてきたわけです



そこで九州の水石業者の佳石庵の中路さんに尋ねると

「松本さんの石は、幹や枝に手を加えた(石を叩いて作った)ものばかり」

「うぐいすも、アンモナイトの化石のまわりを叩いて鳥にしたもの」

「怪しい石が入ると、幹や枝を酸で溶かしてみて

どこまでがホンモノかまず見極め、必要なら仕上げ直しさせている」

と言うのです



松本さんという人を批判しているわけではありません

趣味の世界は自由です

ただ、ほとんどの人が、松本さんの写真の石を

自然の芸術と信じていることに対して

「審美眼」をもつことの意味を問いかけたいのです



「審美眼」をもつと

一級品の天工の妙と信じられていた

多くの「門司の梅花石」が

花だけホンモノで

あとは作られた作り石ということが判ります




こうした事実をふまえて

金生山の「化石壺」をみると、評価が逆転します


石質(質がいいから石が輝く、あたりまえですね)

景色の豊富さ

門司の梅花の比ではありません



フズリナの化石から作ったものだけでも

化石の量と、母岩の性質の違いで、多彩な景色の花瓶ができます



門司の梅花の場合、バリエーションがないので

いくつかいいものを持ってしまうと

「もういいかな」となってしまいます




こういった真実が理解できれば

金生山の「化石壺」を単なる工芸品とみられないでしょう


一級品と信じられてきた「門司の梅花石」のほうが

じつは工芸品なのです(笑)






ちなみに

石に入る白い線を、一般的に、ニュウと呼びます

陥入のニュウだと思うんですが・・

石の陥入(割れ目・すき間)部分に

石灰岩などが流れ込んで空間を満たして凝結します

その結果、白い線のような模様が、石の中にできます


ただ、白いことから「乳」→ニュウ

と呼ばれるようになったのかもしれません


それを、枝など景色の一つに見立てて鑑賞できる場合もあります



美濃の金生山で化石花瓶の原料を採掘をしてきた

清水さんに聞くとによると

「作れますが、私は偽造嫌いなので作りません」とのお話でした






現在、唯一人 金生山の更紗花瓶、化石花瓶を

作っているのが長谷川さんです

(関ケ原マーブルで売られているものも長谷川さんか、先代の作です)


傑出した名人で、長谷川さんほど石を薄く削って

花瓶に仕上げられる人は存在しないそうです

先代の作は厚みがあります



その長谷川さんに、よい景色になりそうな石を

見立てて提供しているのが、清水さんです

もう80歳に手が届くかたで、墓石の製造などをしている石屋さんです



清水さんは、かつては

花瓶になる更紗や化石を探すのに、山をかけずり回っていたそうで

金生山は「庭同然}と語ります



以下の「銘」は全て清水さんによる命名です






クリックすると写真が拡大表示されます







銘「雷雲」




直径12.5×高さ13  1950g




フズリナとウミユリ(雲)の化石


フズリナとは、古生代石炭紀にはじまり,二畳紀末に絶滅した原生動物の一群で

約1億年にわたって存在したとされます







清水さんのお話では


「雲」の部分は、依然、何の化石か不明なんです

ベレロフォンの圧縮か…想像はしても、確信がもてないので

不明か、あくまで想像としてください

〔ベレロフォンとは、外形はオウムガイに似ていて、巻貝の祖先らしいです〕


まだ削る前の石の塊の時には、表面に出ていなかったので

花瓶が出来上がってきたら表れてびっくりだったんです

フズリナの化石塊だと思い、フズリナの花瓶のはずでした


しかし、中のほうは風化が進み

フズリナはほぼ石灰岩になってしまっていました

代わりにこの石には、とんでもないものが入っていたっていうわけです

もし、花瓶にする芯の位置がずれていたら、この雲は永久に出ることはなかった

何重もの偶然、恐ろしく低い確率でできた花瓶です


とのことです







また


削ってみたら、雲のような形の化石が現れてびっくりしたものです

突然発生する雷雲のように・・・

過去50年石にかかわって、このような化石は初めてで

そうでなくてもおそらく2度と手に入らないでしょう


花瓶の何倍もの大きさの石から作るので

いいものになるかどうかは、勘と経験が頼りです


とも言っておられました








銘「白梅」




直径16×高さ16 およそ4㎏




フズリナの化石









銘「紅梅」




直径17×高さ15  およそ4㎏




フズリナの化石


地層の境目にかかったところか母岩が変わり

それがまたいい景色になりす

さすが、金生山4億年の歴史です


長い年月をかけ、フズリナの化石が変化し

ピンクがかった変わったものになっています










銘「霧笛」

(むてき)





直径11.5×高さ27  およそ3㎏


基本フズリナの化石塊で、白い部分はフズリナの集合です


清水さんによると、左上の大きな丸は

腕足貝の一種ではないかとみているとのことです









銘「細雪」




直径15.5×高さ12.5  2520g







フズリナの化石









銘「露」




直径14.5×高さ14  2790g




ウミユリの化石

萼や花とか呼ばれる部分は、化石が見つかることは珍しく

化石になるのは茎や触手がほとんどだと言います

なので模様は、ウミユリの茎の輪切り(丸)や斜め切りになるでしょう

門司のゴカクウミユリより大きいです












銘「吹雪」




直径18×高さ16  およそ4.5㎏




フズリナの化石












銘「世界」




直径16.5×高さ16.5  4㎏強




フズリナの化石


清水さんのお話では

この石の白と黒はどちらも石灰岩です

色の違いは、成分量の差だろうと思います

化学分析したわけではないので、正確ではないですが

カルシウムなどの含有量、他にも、金属成分の含有量で色が変わるのでしょう

更紗石の赤が、鉄分が入り込んだために赤く発色するように

モザイク状に成分量の違うところができた結果だと思われます

均質でなく、このようにモザイク状に石ができるのが

やはり金生山の特徴で不思議なことです










銘「大陸」




直径16.5×高さ14  3004g




「世界」が、今の地球に近いものとすれば

これはまだ分かれる前の超陸地、パンゲア



「世界」と同じ原石でつくられた兄弟の石です

この石のフズリナの化石は、淡く姿を確認できる程度まで石と同化しています










銘「大山」




直径21×高さ19  およそ8.5㎏







フズリナとサンゴ(ゾウリムシみたいなのがそうです)の化石


大山は、風化が進んだ化石なので、フズリナがやや薄いですが

そこれが逆に清楚に美しくなったものです



形も大きさも不均一、中の模様は瞳の虹彩のような

放射状の線が見られるものが、サンゴです

フズリナは、大体大きさのそろった結構きれいな円ないし楕円で

中の模様は年輪のように線が見られます




大山は表面が鏡のようで、映り込みが起きるので

撮影がうまくいきません










銘「凛」




直径17.5×高さ15.5  4㎏弱




フズリナの化石





この石は、私が最初に手にした化石花瓶です

化石には興味がないことから

最初、更紗花瓶にしか目がいっていませんでした

なので参考程度に1つもっておこうぐらいの気持ちで購入しました


ところがこの石の漆黒の闇に星が浮かびあがるような美しさに驚き

つぎに「大山」を購入することになり

さらに化石花瓶を収集することになったのです



この凛も表面が鏡のようで、映り込みが起きるので

撮影がうまくいきません










銘「風花」




直径16.5×高さ14  およそ3.5㎏




フズリナの化石





フズリナも、白(それも大小)、黒抜き、年輪状、瞳状、虹彩をもつもの

色々あります

この風花のフズリナは、年輪がよく出ています










銘「樹氷」





直径14.5×高さ17  およそ3.5㎏





















黒いサンゴと白い珊瑚両方の化石です


写真の「星」は白サンゴ

全体に黒いものを黒珊瑚といっているそうです












銘「淡雪」







直径16×高さ13.5  2745㎏




フズリナの化石









銘「氷柱」




直径15×高さ17  およそ3.5㎏










シカマイアと珊瑚の化石です

この石は、景色がいいだけでなく

化石標本としても価値をもつそうです



清水さんによると


珊瑚は、化石でも通常四射サンゴの白いものが大多数ですが

この花瓶に含まれる化石は黒珊瑚と私たちはよんでいます

化石になる過程で中が黒くできるものがたまにあるようです

とのことです



白の網目の中に黒抜けしているのがサンゴのようです




Uの字の白い部分が、シカマイアです


ウキペディアによると

シカマイアは古生代ペルム紀の巨大な二枚貝

畳一枚ほどの大きさにもなり、史上最大の二枚貝とされる

「日本の古生物学発祥の地」「化石研究のメッカ」

とも言われる岐阜県の金生山で初めて発見された

とあります







殻長1mを超えるとされる

超巨大な二枚貝 シカマイアの復元模型


(出典:大垣市文化事業団)





清水さん所有のシカマイアの入った化石

長さ1メートルくらい

重さは測れないが100キロ以上あるとのこと


こうした原石が美しい花瓶になるのです










銘「真珠狩り」




直径15×高さ21  3356g













黒,白、中抜き、瞳様、虹彩様、年輪状…

これほど多様な形で化石となったフズリナが

一つの花瓶に会したものは他になそうです










銘「彗星」




直径15×高さ23  4026g




フズリナとシカマイアに、おそらく貝類が混合した化石とのことです

シカマイアのの一部が入って、銀河をながるる巨大な彗星のようです













銘「天女」




直径16×高さ17  3955g







フズリナの化石












銘「静淵」

 (じょうえん)




直径17×高さ16  4637g




フズリナの化石





この景色が一番









右は、大陸から離れる前の日本列島をイメージさせます









銘「神秘」




直径13×高さ22.5  3290g




清水さんによると、この「神秘」は

今までにないもので、小型巻貝でしょうか

何か小さな生物の大群の化石が入った化石大理石


とのことです









銘「玉姫」




直径15×高さ15.5  3606g




















銘「彩文」

(さいもん)




直径16.5×高さ17  4026g




フズリナと、おそらく貝類の化石とのことです
























銘「臥龍」




直径17×高さ15  3305g



















シカマイアが見事に入っています


清水さんによると


これまで手掛けた過去最高の逸品です

金生山の巨大2枚貝 シカマイア

通常花瓶に入りきらないその姿が、カーブを描き

竜が臥せっているような景色になりました

貴重な化石標本というでなく、芸術的な要素も多く持ち合わせた花瓶です


とのことでした










銘「魔術」





直径16×高さ29  5081g




清水さんによると


シカマイアの化石というだけでも希少ですが

これは特に、貝の足に当たる部分がはっきりと残って出ているの

でとりわけ希少かつ貴重な標本です

化石がちょうど、壺の中に何かが眠っているようにうまく入りました


とのことです


書の大家の「書」を思わせる素敵な花瓶です




また

衝撃で亀裂が生じやすいため

このように過去にない軽さに加工することは至難の業で

日本最後の石細工職人にして最高の職人の技術の高さが光ります


とのことです







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