緋山酔恭「山水石美術館」 全国の水石・美石を紹介 嵐渓石


嵐渓石




ネットで、嵐渓石を調べたところ

新潟県の三条市を流れる

五十嵐川(いからしかわ)に産出するとありました


ただ、嵐渓石を画像検索して見る限りでは

川ズレの具合からいって

また嵐渓石の名の「渓」からいって

おそらく上流部からあげられるのではないかと

想像できます




五十嵐川は「いからし」と呼び

信濃川水系の河川で、長さ38.7km

三条市の南東の烏帽子岳(1350m)に源を発し、北西へ流れ

三条市由利と三条市本町の境界で信濃川に合流するそうです





赤の指すところが、烏帽子岳


なお、御神楽岳(1386m)と

守門岳(すもんだけ・1537m)は

日本200名山で

ともに登っています




守門岳  転写





五十嵐川の名前は、 この地域を開拓した

第11代垂仁天皇の第八皇子

五十日足彦命(いかたらしひこのみこと)に由来するとされます

五十日足彦命の子孫は「五十嵐」を名乗ったそうです



また、アイヌ語に由来した地名との説もあり

この説によると

アイヌ語で、物見をするような見晴らしの良い場所を

「インカルシペ」または「インガルシ」などといい

北海道の遠軽(えんがる)と同様に

「いからし」もここからはているといいます





さて、嵐渓石には、赤が主体もの、黄色が主体のもの

緑が主体のものがあるようです




転写  5㎏





       

転写  25㎏



主には、庭石にされたようで

いまでは現地で「幻の石」とされているようです






クリックすると写真が拡大表示されます







横19×高さ(台なし)32×奥22  およそ11㎏














水に濡らした状態








ヤフオクに

新潟の骨董品屋さんと思われる方が

≪数10年間 嵐渓石だけを専門に採石された方から譲り受けました≫

ということで


出品なさっていたものを、即決価格にて落札したものです


他に、蘭渓の出品はほとんどみられないので

この骨董品屋さんが、およそ唯一の専門店化しています



私のみるところでは

この石は、五色石と呼べるもので

特別よいものと感じました


なお、外殻は、軟らかいですが

中は、ジャスパーに間違えありません





土中石として出品なされるので、拾われている方が

原石地から採取してきたものと思われます



なお、古谷石なども土中石といっても

土の中から掘り起こしているわけでなく

実際は、斜面が崩れるなどして

谷や沢に現れているものを拾ってくるので

出品なさっている蘭渓もそうしたものだと思います


原石地が小さな沢だと

何度かいくといいのが拾えなくなりますが

台風や、雪国なら雪どけで、斜面が崩れたりすると

またいいのが拾える可能性が出てきます











横14×高さ28×奥11  およそ5㎏










嵐渓石の赤玉です

質がよく、赤も鮮やかで

大きさも、水石として観るにはベストです


前の石と同じで


新潟の骨董品屋さんと思われる方から

ヤフオクを通して入手できました











横16×高さ23×奥15  およそ7㎏



最初に掲載した写真の石よりさらに上をいく石です


ヤフオクの写真では

くっついていた石がはずれた跡と思われる

「白」が邪魔かな?

とみていましたが


この石に限っていうと

白の入り具合がよく


白があることによって

色彩が一層よくなっています












前の石と同じ

新潟の骨董品屋さんと思われる方から

ヤフオクを通して入手しました


この骨董屋さんに

電話でお尋ねしたところ


「これこれこういう嵐渓石が欲しい」と

嵐渓石の持ち主に

注文を言って、買い取ってきているのでなく


遊びに行って、相手が気分がいいと

適当な石を出してくれる

とのことでした


そうして出してくれた石のその中でも

この石がいまのところ一番とのことでした






私が石をはじめたのが

20代の後半で

いまが50代後半なので

30年以上経ちますが


当初から、この写真の石にずっと憧れを抱いてきました




クリックすると写真が拡大表示されます


昭和40年刊行の木耳社「水石」 村田慶司にみられる

佐渡五色石です





それからずっと気にしていましたが

このような石はみることがありませんでした


以前

現在ただ一人、佐渡で、原石から仕上げまでする

石磨き職人の高野さんに

この写真を送って聞いてみたところ


「佐渡五色」ではなく

「羽茂(はもち)五色」である

とのことです


「おそらく、底には、べったりと黄色が入っているはずだ」

とも言っておられました








確かに、佐渡の大澤さんより入手した

この羽茂五色

(大澤商会さんのサイトの看板石になっていました)

と、色が類似していると言えます







雷光石


また、猿八の雷光石にも

色は似ています



猿八という場所は、青玉の産地で

猿八の五色の可能性もあるのではないでしょうか?










なお、≪五色石≫というのは一種の「美称」にすぎず

全国的にみても

赤、黄色、青(緑)の三色で「五色石」と呼んでいるものが多く

羽茂五色も基本はそうです






羽茂五色




また、先代(高野さんの父)の時代

昭和30代後半から昭和40年代はじめに水石ブームがあり


当初、ちょっと色が混じったモノは

なんでもかんでも「赤玉五色」や「佐渡五色」と称され

あれもこれも「赤玉五色」という状態があったそうです


その後、【五色】の名称は

基本的には「五色メノウ」(岩谷口五色・錦紅石)と

「羽茂五色」にのみに統一され

≪赤玉五色≫や≪佐渡五色≫という名称は消滅したといいます





それから、青(緑)のジャスパーとしては

佐渡の青玉、出雲メノウ(花仙山のジャスパー)、土岐石の碧玉

がよく知られています


このうち土岐石は、ウッディージャスパーであり

磨かずにそのまま観賞するので別物とすると


佐渡の青玉は、硬さ、色味ともに落ちます


出雲メノウ(花仙山のジャスパー)のいいものは

硬度、色 それなりにはいいですが

巣穴が多いという欠点を持ちます


また、佐渡の青玉と同様、猿八で採れる 雷光石も

ジャスパーとしては軟らかく

おまけに巣穴だらけの石です


なので日本一の青系のジャスパーとなると

北海道の興部(おこっぺ)のジャスパーでしょう






いずれにしても

青(緑)の碧玉(ジャスパー)というのは

土岐石や、興部という例外はあるものの

全体的に、赤に比べると軟質である

ということです



高野さんによると

雷光石も、赤いや黄色い部分が硬く、青がやや軟らかいので

艶を出すのがやや手間のいる石とのことでした





そんなこんなで

≪青が多い五色石≫ ≪青系統の五色石≫で

なかなか

この石↓に比肩しうるものは入手できませんでした







私の場合、写真を実物の色に近づけるための加工を修正します

デジカメでは多くの場合、青が強く映りますし・・・


石に対するひいき目から、多少は誇張があっても

そこは許容範囲を超えないように心がけて

修正しています



ところが、昔の本などの写真は

実物と色が全く違う

実物は、写真よりずっと劣る

なんてことも多い

というかほとんどがそうなのです


ですので

実際の色彩がどれほどのレベルかは判りません


また大きさについての記述もない

のが実情です



なお、ジャスパーで「青」と呼ばれるのは「緑」で

緑より青く見える部分が混じる場合は

それは、緑の濃いものです


また、紫が混じるものはありますが

この写真にみられるような完全な青が混じるジャスパーというのは

わたしはまだみたことがありません・・・




群馬県の下仁田なんかに

見た目、ジャスパーに近そうな青はありますが

ジャスパーとは言えないほど

硬さも重さもありません




下仁田の青




とはいえ

昭和40年刊行の木耳社「水石」 村田慶司にみられる

佐渡の五色石は

私に、多大な影響を与えてきたわけです





しかし、今回、手にいれた嵐渓は

ウブで、大きさがあり

赤が鮮やかで、黄色も入り

なんといっても色の混じり具合がよく

上の石に劣らぬ青・赤系の五色と言えます






このような石が出るとしたら

「羽茂五色しかないだろう」

とみていましたが

まさか以外な産地から出てきました




実は、高野さんや、市川さん(佐渡名石協会副会長)に

何年も前からこのような羽茂を探してはもらっていますが

いまだ出てきません


仮に出てきたとしても

50万、またそれ以上 言われるでしょう


ところがヤフオクでなんと38000円で入手できました






さらにその後

このような↓素晴らしい青系の五色石も入手できました






横30×高さ(台込)14.5×奥11.5  およそ4.7㎏







この石は、大鰐(おおわに)産の津軽錦石です











横29×高さ33×奥22.5  およそ22㎏


























この石は、20㎏を超える大きさで

青系の五色石の最高峰と言える石です


写真で、青に見える部分は、やはり緑の濃い色ですが

我々は、目を通して得た情報を、脳で感じているので

濃い緑に見えたり、青に見えたりします

それくらい青に近い緑と言えます











ヤフオクの写真では判断がつかず

入札を、みな、迷ったのでしょう


出品者が値を下げていって

即決で2万500円(送料込み2万700円)になっていました



たまたまこの石の前に購入した

嵐溪石の縁から

出品者に電話をしたところ


出品者が、この石を2万で譲るというので

「それでは悪いので、送料込みで、2万3千円でもらいますよ」

なんて話をしていたくらいでした



ところがびっくり 1桁どころか2桁違うんじゃない?

といったレベルの石でした



日本というか世界のものも含めて

青(緑)系統の五色石で、この石を超えるものは知りませんよ



私ですら、ヤフオクの写真では

これほどの石とは見抜けず


電話する用事がなければ、見送っていた石です




「値を下げたこともあり、ウオッチリストに10数人入れているし

今回は、落札されると思うよ」

と出品者が言っておられましたが


本来、別の人のもとに渡り

庭石なんかになっていたはずが

ホントに不思議です




のような

石に心があるとしか思えないようなことは

多々あります



先日、栃木の愛石家からいただいてきた

桐生川(旗川)の更紗も

前所有者は

私の掲載した写真のようには飾っておらず

もらってきたときは

それほどまでの石とは思いませんでした


家に帰って「どうみればよくなるだろう?」と

こねくりまわしているうちに

「この石すごいぞ!!」

と気づいたわけです








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