「山水石美術館」 紅加茂石・徳島の虎石・青虎石・那智黒石・丹波紫雲石など


紅加茂石



京都鴨川の上流、市ノ瀬で採取されるといいます

チャートです


主に庭石にされますが

紋様のとりわけよいものは

山などに形をつくって観賞石にもされています


わりと水石家には知られている石です


逆に、まる磨きされたものは少ないです



まる磨きされたものが少ないのは

一般的に

チャートは、ジャスパーのような色味がなく

まる磨きしても採算がとれないからではないでしょうか・・・



例えば、土岐石(ときいし)の場合

ウッディージャスパーである本土岐に対し

チャートは、ニセモノ扱いされるほどです





しかし、紅加茂の場合

紅は鮮やかな朱色で

紅が全体にわたって出ているとキレイな石です


ただ、そのようなものはめったに採れず

またある程度大きくないと紅加茂のよさが表現できないゆえ

まる磨きしたものが少ないのかもしれません



じつはチャートも、ジャスパーほどの硬度をもちます


そもそも、チャートとは堆積岩の一種で

主成分は水晶、メノウ、ジャスパー同様の石英です

この成分を持つ放散虫・海綿動物などの動物の殻や

骨片(微化石)が海底に堆積してできた岩石と言われています




紅加茂の特徴は、紅を流したような紋様です


紅加茂の佳石は、紅が網目状に広がっていて

さらに白い石英もうまく散らばり

景色のよいものでしょう



なお水石の分野では

加茂川の紅流し石というのも知られていますが、紅加茂とは別物です






クリックすると写真が拡大表示されます






横57×高さ(台込)30×奥28  およそ36㎏























この石は白山紋石庵の山下さんを通して

加賀市の石のコレクターのKさんからいただきました


Kさんからは、加賀愛石会 元会長 吹谷恵石氏の遺愛石である

中村夢石みがきの加賀錦石をいただいています


この石は石屋さんだったKさん自身の磨きで

特級品の紅加茂です


表、裏 観賞でき

表は、全体にわたって、紅と白の石英がバランスよく配置されています

大きさもあります



私が、実物、および写真を通してみたもののなかでは

一番の紅加茂です





山下さんの話だと

石屋をしていたKさんが、大きな庭石から

紅のいいところをとってつくったようである

Kさんのところには磨きの紅加茂が3つあった

そのなかの一番大きなものがこの石

とのことでした



2番目の20㎏ほどと思われる石は

大きさとしては一番よいのですが


「Kさんがこれだけは手放さない」

ということでしたので

一番小さいモノと、この石の写真が送られてきました



一番小さいモノでも10㎏は超えるので

大きさとしては十分だったのですが


この石にくらべると

景色は一ランク下がりました


なのでこの石をいただきました


ちなみに、山下さんによると

2番目よりもこの石のほうが景色は上だそうです












横21.5×高さ(台込).5×奥10  808g







水石愛好家をターゲットに造形されたものです









横9.5×高さ(台込)3×奥3.5  95g









法正谷の虎石



徳島県の一宇村(いちうそん・現在はつるぎ町)の

法正谷(ほっしょうだに)という場所で

採石された虎石です


つるぎ町は、2005年に、一宇村と、貞光町、半田町とが

合併し成立しています



かつては庭石として、人気があったらしく

加工が容易なため観賞石にもされたそうです



現在は、石質の低下と石のブームが去ったため

採掘されていないそうですが


昭和40年代の石ブームのときは

国道わきにいくつもの看板が掲げられるほど

観賞石として人気を誇ったそうです




法正谷は、貞光川(さだみつがわ)上流にあり

採掘場となったのは、法正谷のなんと川底だったそうです




虎石の採掘場  転写






貞光川は、別名は木綿麻川といい

吉野川水系の河川で

剣山(つるぎさん)系の丸笹山(1712m・四国100名山)を水源とし

旧一宇村・貞光町を経て吉野川に合流するそうです








丸笹山  転写






吉野川は、四国中央部を東流する川で

石鎚山地の瓶ヶ森山(かめがもり・1897m 日本300名山)に源を発し

四国中央部を東流、大歩危(おおぼけ)小歩危の峡谷をつくり

徳島で紀伊水道に注ぐ、四国三郎の異名を持つ大河です


かずら橋で知られる祖谷川(いやがわ)も吉野川水系の河川です


全長194km、四国では四万十川(196km)に次いで2位

(全国では12位)

流域面積は第1位です

〔流域面積とは、ある河川に雨や雪が流れ込む範囲が流域で

流域面積はその面積をいう〕


上の地図をみると、四万十川のほうが短く見えるのに

距離が長いのは

その分、蛇行しているからだと思います




なお、法正谷の虎石と同質の石は

徳島県の祖谷(いや)や

高越山(こうえつさん・1133m)あたりでも産出するようです






剣山(1955m)  転写


四国では

石鎚山(1982m・近畿以西の西日本最高峰)とともに

日本100名山に選定されています












横25.5×高さ(台込)16.5×奥8  5㎏弱








一見、樹木がジャスパー化した

珪化木(木化石)にも見えますが

石質はジャスパーほどの硬さはありません


科学的には、チタンを含み、黄色となった緑泥片岩だそうです










沙流川の青虎石



青虎石として有名なのは

日高の沙流川(さるがわ)産です


沙流川と言えば

幸太郎石の産地としても知られています



亡くなられた一選堂(旭川の水石業者)の相内さんのお話では

他に、空知川の青虎もあるようです


空知のものは、濃い緑だけで

薄い緑は入らないようです





空知川の青虎







空知川石

吉田凡石氏の遺愛石 銘 石韻












以下は


集まれ!北海道の学芸員

石斧に使用された「アオトラ石」【コラムリレー第10回】

http://www.hk-curators.jp/archives/3154



世界最大級の特大石斧

海越えたアオトラ石文化圏の謎

https://style.nikkei.com/article/
DGXMZO99959070S6A420C1000000/


という2つサイトを参考にまとめたものです




日高山脈の最高峰 幌尻岳(100名山)から流れ出る

額平川(ぬかびらがわ)の支流に

アオトラ石の露頭が見られるとあります

(露頭は、岩石や鉱脈の一部が地表に現れている場所)





日本100名山  幌尻岳(ぽろしりだけ)  転写





アオトラ石の鉱脈  転写




露頭に近い大きなものは、庭石として

沙流川本流に合流するまでの間に転石し

硬い淡緑色層と柔らかい濃緑色層の凹凸が顕著なものとなったものは

観賞石とされています



平取町一帯では、庭石・観賞石として

昭和30年代末頃から親しまれ

昭和40年(1965)には『二風谷銘石保存会』が誕生したとあります



さらに石屋さんにより

沙流川銘石として、本州方面まで販路を広め

昭和47年(1972)には、8割ほどが津軽海峡を越えるまでになったそうです






なお、1965年に

奥羽山脈の山里 秋田県東成瀬村の

縄文前期(6000年前~5000年前)に

およそ500年営まれたとみられる集落跡 = 上掵(うわはば)遺跡

から、世界最大級の石斧(せきふ)が4本

刃先をそろえ西を向いた状態で発見されているそうです





転 写


とりわけ丹念に磨き上げられた磨製石斧で

最も大きいのは、長さ60.2センチ、重さは4.4キロ

最も小さいのでも、長さ32センチ、重さ2.3キロ




これらの石斧が、発見から50年経った近年

日高のアオトラ石で作られていることが分かったそうです







石器に関する材質の研究は

黒曜石かそれ以外 というほど

黒曜石を除けばほとんど進んでいなかったらしいです



また、これまで、緑の石斧に使用された石材は

神居古潭峡谷から産出する神居古潭石や

住んでいる場所の石であると考えられていたようで


こうした石斧の中に

相当数のアオトラ石が含まれていることが判ったようです



アオトラ石は、適度な粘りがあり、研磨もし安く

石斧の製作に適していて

石斧は割れにくいという特徴をもつそうです



現在、アオトラ石で作られた石斧は

秋田県、山形県など東北地方北部

さらに、新潟県の新発田市、村上市、新潟市

三条市などでも確認されているそうです






虎石は、水石の分野では

滋賀の瀬田川の虎石がとりわけ有名ですが

沙流川の青虎石もわりと知られています


瀬田川の虎石は、自然の石、川ずれの石を観賞します

(但し、瀬田の虎の名品の9割がたは手が加えられているとみられる)


これに対し、北海道の青虎は、もちろん自然でも観賞しますが

磨いて観賞する文化も認められていて

多くのものが、まる磨きされています


但し、純粋な美石というより、紅加茂同様

水石分野の美石という性格が強いです



石質は、硬いとは言い難いですが

観賞石として合格点にはあります







横39×高さ(台なし)20.5×奥22  およそ17㎏弱







青虎は、やや柔らかいので

磨いたものでも多少の傷は致し方ないですが


この石は落ち着いた色調で、目立つ傷はありません











横16×高さ(台込)11.5×奥11  2716g













この石も沙流川の青虎石で

「赤虎」と呼ばれるものです


このように赤(紫)の入るものはめったになく、形もいいです


底も含め自然のままです











横13.5×高さ14.5×奥11  3450g










沙流川の青虎石  ウブ石


青虎の小ぶりのもので

これだけ縞模様のよいものは珍しいです












横26.5×高さ(台込)10.5×奥13  およそ4.5㎏















この石は、千軒石の著名なコレクターである

センゲンさん(網走市在住)からいただきました





センゲンさんのブログより


センゲンさんは、空知川石として入手したようですが


沙流川ですね


とても素敵な石です









七華石

(しちかせき)





横8.5×高さ3×奥5.5  207g




奥伊勢の七華石は、以前からその名を聞いていて

地元の愛石家の方がヤフオクに出品なされたので落札してみました

その説明によると

出品商品は、奥伊勢・藤川産の川流れの自然石で、

七華石は赤鎧石を成す互層岩に挟まれて産する当地方の銘石ですが

貝殻のような形状の上面に現れた縞目模様(石質は主に帯色石灰岩)が

大変綺麗だったので研磨をしました

とのことでした






ヤフオクの写真は、盛りすぎです 輝きすぎています



七華石は層状石灰岩で、チャート層を噛んで互層を成せば「鎧石」となるようです


藤川についてはネットで調べましたが、記述がないことから小さな河川なのでしょう






ちなみに三重の鎧石ですが

奥伊勢地方の度会(わたらい)郡の

山々や谷間から産出するようです

チャートと石灰岩の互層岩(ごそういわ)らしいです





横25×高さ12.5×奥9  3.5㎏強




岩壁に小さな滝がみられます


この石は底切りしてありますが

三重の鎧岩は、基本、庭石なので

底切りでも、こうした水石になるサイズで

鎧模様が綺麗で

しかも景のあるものはまずなく

最高クラスのもののようです










那智黒石



碁石で有名な那智黒ですが、他にも和歌山県のお土産として

硯や恵比寿大黒や招き猫などの縁起物に加工されています



恵比寿大黒や招き猫などは

那智黒石を粉末状にし、それに樹脂を硬化剤として混ぜ

型に流し込んで固めたしたものです

これらは一般に「那智黒手磨き工芸品」

また「ニュー那智黒」(登録商標)と呼ばれます





宝船  転写


現在は、こうした成形品が主流になったのは

良質の那智黒石があまり産出されないようになってしまった事

また、そもそも那智黒は、板状に割れやすい性質を持ち

彫刻などに加工をすることが困難で

量産がきかず、作っても高価になってしまう事からだといいます






泥が、水底に積み重なって固まったものを

「頁岩」(けつがん・頁は本のページの意味)といいます

堆積面に沿って薄く層状に割れやすい性質を持ちます

この頁岩が、圧力により固まったものを「粘板岩」といい

黒く緻密で、薄板状にはがれやすく、硯などに加工されます




那智黒は、珪酸を多量に含んだ頁岩が、噴出した溶岩との接触により

炭素を多量に取り込んだもので

黒色で硬質の粘板岩です




名称に「那智」を含んでおり

また、主に和歌山県那智勝浦町の熊野那智大社周辺で販売されていますが

産出地は那智勝浦町ではなく、三重県熊野市神川町周辺です

神川町は「那智黒石の里」として知られています


相当古くから知られていた石のようです





採石場  転写





採石場  転写



また、那智黒石は、粒子が小さく、きめが細かく緻密なため、古くから

金の品質を鑑定する「試金石」(こすって条痕を見るための石)

として最良とされているようす




金の硬度は爪の硬さくらいなので

試金石(那智黒石)にこすりつけると削れて付着します


最も簡単な方法は、調べたい金を同じ力でこすりつけ

て色と量を比較して判断します


さらに硝酸を使う方法もあります

濃硝酸は、殆どの金属を溶かす

希硝酸は、金属をよく溶かすが金とプラチナは溶けない

この性質を利用して金製品の純度を確かめることができるそうです


金の純度を調べる

昔ながらの手法「試金石法」は以下のとおりです

金は、混合物の割合からK10~K24まであります

前述のとおり、金のモース硬度は2.5で、爪と同じ硬さ

18金(75%の金を含む合金)は、純金よりも硬く耐久性があるとされます


試金石に金をこすりつけたら、その上に硝酸を少量垂らす

純度の高い金であるほど硝酸では溶けない

また、硝酸で溶けて緑色に変色した場合は

鉄、銅、ニッケルなどの卑金属であることがわかる


なお、硝酸は劇薬で、皮膚に付着すると薬傷を起こし、重度の場合は腐食作用を示す

眼に入ると粘膜を激しく刺激し、失明する危険がある

蒸気を吸入すると咽喉や気管支を侵す そうです



以下、熊野那智黒石協同組合公式ホームページ
https://www.nachiguroishi.com/ より引用させていただきました


〔一部、文章的(主語・述語がよく分からず)に、意味がよく分からない部分があり

(名称についての部分など)

こういう意味ではないかという観点から修正しました〕



【 那智黒石は、熊野市神川(かみかわ)町だけで採掘される希少な石で

主に碁石の黒石や、硯石に古くから使われ

粒子の細かい(0.1ミクロン)黒色不透明の砕屑(さいせつ)物からできており

試金石として使用されてきました

神上石(こうのうえいし)や神渓石(しんけいせき)、那智黒石の呼び名があります

名称については、烏翠石などと呼ばれた時期があったとか

売り出す際に観光地の那智の滝にちなんだ

という説がありますが、はっきりとは分かってはいません

那智黒石が初めて文献に表れるのは

「紀伊続風土記(1839)」で、古くから美しく珍しい石として知られていました

製品としては碁石の材料として出荷されたのが最初で

遺唐使の中国への贈り物の中にある「棋子」は那智黒石ではないかといわれています

(碁石、硯材や試金石として利用されてきたが時代は定かではありません)

藩政の頃一時採取を禁止されていましたが

明治中期に採掘禁止令が解けて硯・文鎮などに利用されてきました

那智黒石を広く売り出したのは明治になってからで

神川町神上の山西徳之助という人が

硯を作って売ったのが始まりといわれています 】





なお、碁石の白石は、ハマグリの貝殻を型抜きして磨いたものです


   

転 写



代表的な産地は古くは鹿島海岸や志摩の答志島、淡路島、

鎌倉海岸、三河などであったそうで


江戸時代末には、宮崎県日向市付近の日向灘沿岸で

貝が採取されるようになり


明治中期には他の産地の衰退により

日向市のお倉が浜で採れるハマグリが市場を独占し

上物として珍重されたといいます


それも現在では取り尽くされてほとんど枯渇し

現在一般に出回っているものはメキシコ産だといいます





転写




高級品は貝殻の層(縞)が目立たず

時間がたっても層がはがれたり変色したりしないそうです



また、ハマグリの碁石は庶民が気軽に買えるものではなく

業者によっては黒石は「那智黒石付き」と

白石のおまけ扱いにしているそうです



明治期には陶器や竹製

その後プラスチックや硬質ガラス製の製品が出回り

囲碁の普及に大きな役割を果たしたと言います




生長線が、細かいもの、多いものほど

耐久性が高く、「雪印」と呼ばれ


比較的目が粗いものを

「月印」「華印」と呼んで区別します


最高級が雪印で、それに次ぐのが月印で

さらにその下に、縞模様があまり細かくない「実用」


わずかな傷などがあったものをあつめた「徳用」があるそうです





転 写




宮崎県日向市の碁石店のネットショップをみると

メキシコ産は、グレード(縞目、色)と、品質(形・傷)で決まるようで


厳選品の雪が

厚み14.3ミリがなんと420万とありました


7.5ミリだと特級品でも3万5千円(華)~6万(雪)です



日向産だとモノ自体幻のようで

グレード(縞目、色)と、品質(形・傷)などの区別はされておらず

8.8ミリで82万円とありました









横33×高さ22.5×奥11  およそ12㎏







石肌、形 抜群にいい 大型の那智黒ですが

ヤフオクで数千円で買える時代です




昭和30年代後半から40年代前半にかけての

水石ブームのときに

こうした石がたくさん作られたようです



もともと那智黒は、美石というより

水石のものとされてきましたが


水石において「作り石」の人気が下がったことから

那智黒の評価も下がっていったと考えられます











横24.5×高さ(台込)11.5×奥8.5  1994g






























那智黒の珍品


表面を磨いてはありますが

形は、ほぼ自然のままだと思われます



長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんからいただきました









丹波紫雲石











横21×高さ(台込)9×奥11.5  1440g










京都丹波の名石として知られる紫雲石です

ときどきヤフオクで出品される石ですが

なかなかいいものはないようです


桂川の支流、春日谷で採れるといいます



古谷石や静岳石同様、硬質石灰の石のようで

秩父の孔雀石 で紹介した

ムラサキ孔雀石と同じタイプの石と思われます



但し、写真の石はとりわけ硬く、指ではじくとキンキン音がするほどです


底切りはしておらず、表面を軽く磨いたようです


大阪府堺市の太田古陶苑さんからいただきました


神舞台の銘がついていて、箱入りでした











横18.5×高さ(台込)7.5×奥9.5  601g













長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんからいただきました


質のよい紫雲石で、指で弾くと金属音がします

潮雲洞の銘がついていました











横21.5×高さ(台なし)20×奥11  およそ5.5㎏



























兵庫県の骨董商と思われる方より入手しました


商品説明に

昔、東京の銘石展示会で購入された方の関係者よりお譲り頂きました

とありました


裏は、チョコレート色が主体で

表は、そこに、紫が混じったような魅力てきな色調をしています











宝泉寺五色石



宝泉寺五色石は、大分県玖珠地方 玖珠川上流に産し

九重火山群の造山活動の中で誕生したといいます

日田・湯布院に挟まれた宝泉寺温泉からその名がつけられています



この石について、長崎県の佳石庵の中路さんにたずねたところ

「巣穴が多く、色味も佐渡の石なんかに比べると劣る」

「全国にはもっといい五色石があるでしょ」

「なぜ、宝泉寺なんか欲しいのですか?」

と話されていましたが

水石ブームのときには広く出回った石のようです



というのも

茨城県の水石業者である株木さんが

「桐生川五色というのを昔、いくつか扱ったことがある」

「桐生川五色は、宝泉寺五色に似ているが、宝泉寺五色のほうがやや上である」

と宝泉寺五色をひきあいに説明していたからことから想像できます




いずれにせよ

四国、九州には全国レベルで通用する色彩石は

この宝泉寺五色しかなく

佐渡の石とはまたちがった独特の色味と肌をもっていて

これはこれで良さはあります



また、原石が枯渇したのか、水石ブームがさって見向きもされなくなったのか

わかりませんが、入手困難な希少な石ではあります







横44×高さ(台込)14×奥15.5  およそ6.5㎏




この石は、富山県の高道万石堂さんからいただきました

表面はワックスをぬって仕上げしてあるようです


ジャスパーなのかどうかも不明です



ちなみに

信濃美術石博物館さんのこの石も

宝泉寺だと思われます



クリックすると拡大表示されます



また、金沢の業者さんで、ヤフオクで石を売っている堀口君が

出雲メノウの赤入りと称しているこれも

緋山は宝泉寺と見ています



クリックすると拡大表示されます



以下は、松江市玉湯町玉造の

玉作湯神社(たまつくりゆじんじゃ・玉造湯神社)

の御神水の脇に置かれている

出雲めのうです


(転写)













出雲にしろ、佐渡にしろ

ジャスパーの濃い緑と、薄い緑が

混じる場合は、こんな感じで混じります



緑赤系の宝泉寺五色の特徴は

巣穴で肌がボロいのと

なんとなく色彩が、メタリック調である

ということになります




要するに、標準的な宝泉寺五色というのは

他の石に化けさせて

売らないと売れない石


すなわち、ブランドを形成できなかった石

ということです










一級品の宝泉寺五色

銘 「洞天岫雲」




横29×高さ(台込)21×奥23.5  およそ12.5㎏







洞天岫雲(どうてんしゅううん)という銘が付いていました

「岫」とは、岩穴、ほら穴といった意味があるようです























宝泉寺五色としては一級品、溜まり石です

樽磨きのように見えます






昭和41年、石井銘石店刊行の

石井喜右衛門著「石のこころ」に


宝泉寺五色が掲載されています









この本の色彩が、どれだけ事実を反映しているかは

ちょっと疑わしいところがあります




というのも標準的な (とは言ってもほとんど目にすることがない石ですが)

宝泉寺五色の赤は

およそこんな色彩の石だからです








石友さんから

所有する宝泉寺五色の写真をいただきました




クリックすると拡大表示されます








赤緑系と赤系の中間的なタイプなのでしょうか?




20㎏くらいあるとのことです



こうした石に比べると、入手した石は

色彩が濃く、硬さもあり、重く質がいいです

おそらくチャートではないでしょうか





それと、皺(しゅん)が織り成す表情、肌質は

決して佐渡の石では、樽をかけても表現することができないところです


前所有者は50万で購入したとのことでした



この石に関しては、宝泉寺であっても

それくらいの価値は十分ある石です







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