各地の翡翠 そもそも「翡翠」とくくりますが 「硬質翡翠」(ジェダイト)と「軟質翡翠」(ネフライト)に 鉱物的なつながりはなく どちらも「翡翠」(ジェード)と呼んでいきたそうです 歴史的経緯は 中国では、軟玉(ネフライト)しか採れず 古代より中国で価値ある宝石とされてきましたが 18世紀に入りミャンマーでジェダイトが発見されたため ネフライトは軟玉と呼ばれ区別されるようになったといいます 日本では、地方の緑色の石を 産地名をつけて長崎翡翠とか日高翡翠などととよびます こうした石は、産出量が少なく、採掘できなくなっているものもあり 鉱物ファンにとっては、本物の国産翡翠と同等 あるいはそれ以上に惹かれる存在となっているようです そこには絶滅した動物、マンモスやナウマンゾウなどを 捕獲しているような心情があるなどと表現されているかたもいます 一方、別の土地でなら〇〇翡翠と呼ばれたはずであろう石が 姫川の河原やヒスイ海岸にあるばかりに 本物翡翠に似たあやしい石とさげずまれて 「キツネ石」とよばれているわけです 神居古潭石 翡翠系 神居古潭石(かむいこたんせき)については 神居古潭石とは を参照してください 横29.5×高さ(台込)9.5×奥7 2273g 底切りなしの自然石 この石は、硬質の緑泥(りょくでい)の神居古潭石に 翡翠らしき石が混入しています 緑泥は、ふつう比較的、軟らかいのですが この石は、指ではじくとキンキンと音がするくらい硬いです 亡くなられた一選堂(旭川の水石業者)の相内さんよりいただきました 長崎翡翠 長崎県でのヒスイ輝石の発見は、昭和52年(1977) 当時大学生であった、九州大学の西山忠男教授によります 西山氏は、卒業論文のため 長崎県の西彼杵(にしそのぎ)半島を調査していたとき 長崎市三重町の海岸で淡緑色の翡翠を発見したといいます 三重町三京海岸には1~1.5m大の翡翠の転石が 3個、保管されているらしいです また、長崎市三重海岸に露出する緑色岩には 陽起石(ようきせき) 緑廉石(りょくれんせき) 緑泥石(りょくでいせき) 曹長石(そうちょうせき)などの変成鉱物と共に ごくわずかですがヒスイ輝石が含まれていて 「三重海岸変成鉱物の産地」として 県の天然記念物に指定されています (1978年指定) その後、西山教授の研究グループは、平成15年(2003) 三重町の琴海町(きんかいちょう)の小さな沢(戸根渓谷)で 世界的に珍しい石英入りの翡翠を発見しています 曹長石(そうちょうせき)という岩石が ヒスイ輝石と石英に分解されるという化学反応によってできたと考えられ その証拠に石英が含まれているそうです 宝石としての価値は低いものの ヒスイ輝石岩中に石英の含有分が多く 地質学的に大変珍しいものであることから 市の天然記念物に指定されています こうした翡翠輝石とは別に 観賞石とされてきた長崎翡翠というのがあって これは、クロム、ニッケルによって色がついたドロマイト(苦灰石)と 石英が混合した岩石だといいます ドロマイトとは、珊瑚などの生物が海底に堆積して石灰岩になった後 カルシウムの一部が海水中のマグネシウムに置き換わっ て生成された鉱物だそうです 緑色はニッケル発色によるといいます 古墳時代には勾玉や管玉が作られたこともあったらしいです 横10.5×高さ(台込)21×奥8.5 2400g 翡翠似の長崎翡翠のニセモノも多いですが ホンモノはこのように茶色が入るそうです 石は キラキラしています 長崎県の佳石庵の中路さんからいただきました 横12.5×高さ9.5×奥10.5 1720g この石は、琴海町産で 翡翠輝石とも思える緑点がみられます ジェダイトの長崎翡翠かな? 若桜(わかさ)翡翠 日高翡翠や、長崎翡翠がジェダイドでないのに対し 鳥取県若桜町の翡翠は、れっきとしたジェダイトです 基本、ラベンダー翡翠で、白や青もあるようですが、緑はないようです 糸魚川(青海・朝日・小谷・白馬を含む)の他に、国産のジェダイドは 鳥取県の若桜町、岡山県新見市の大佐山 兵庫県養父市(旧 大屋町の加保坂)が知られ 他にも、北海道の旭川市の神居古潭地区と幌加内町 群馬県下仁田町茂垣、埼玉県の寄居町 静岡県静岡市中河内川と浜松市(旧 引佐町)、 高知県高知市円行寺地区、徳島県勝浦川と眉山、愛媛県野村町 長崎県長崎市三重町と琴海(きんかい)町、熊本県八代市泉町、 などで確認されているようです こうした各地のジェードのなかでも 若桜ラベンダーは、観賞石としての美しさをもっています 大佐山や大屋町加保坂の翡翠は、鉱物サンプルにはなっても 観賞石にたるような石は、まだ写真ですらみたことはありません 若桜町の北東の角谷という所で昭和40年(1965)に発見されたといいます 発見者は日本鉱物趣味の会の会員で一行寺という寺院の住職 中野知行(当時47)という人です 若桜のひすいも偶然の発見ではなく狙って見出されたそうです このあたりには出るとめぼしをつけ、山を歩き回って探しあてたといいます 発見した大小約30ケのうちの1つは、1.7m、4.5トンもあったそうです 現在では角谷川では翡翠は見られないようです 若桜翡翠は、「氷の山」 (ひょうのせん・1510m、日本300名山)の西方山麓 三郡帯と呼ばれる変成岩の分布する地域 蛇紋岩が貫入したあたりに出たと考えられています 蛇紋岩は風化しやすいため、翡翠は転石となっている場合が多く 角谷川流域において発見された翡翠も全て転石であったそうです その後探査を繰り返したそうですが 母床と見るべき岩石は発見できなかったようです 横18×高さ8×奥13 2524g 糸魚川の石とは、ラベの入り方が違います 表面は、ワックスが塗ってあるようです これで7万ほどしました 写真は、やや青味が強く出ています 利根川翡翠 利根川翡翠は、群馬県沼田市片品川上流で採れるとあります 翡翠似の石でしょうが、なかなか美しい石です 横20×高さ(台込)9.5×奥11 1392g 秩父、荒川の翡翠 荒川の源流は、奥秩父山系の 甲武信岳〔こぶしだけ・甲州(山梨)・武蔵(埼玉)・ 信濃(長野)の県境にある山。日本100名山〕 だとされます 下流で隅田川が分かれ、本流・隅田川ともに東京湾に注ぎます 荒川の上流、寄居あたりまでは、梅花石が拾えることで有名です 秩父の翡翠を調べてみると 埼玉県皆野町三沢地区、秩父市黒谷地区に 硬玉(ジェダイト)と軟質(ネフライト) 大滝村中津川に、硬玉 大滝村中津川渓谷上流の秩父鉱山に、硬玉 寄居町三品地区に、硬玉(石英岩中にわずかにみられる程度) が出るとあります 三沢川は、荒川に注ぐ小さな川で 三沢川上流では、蛇紋岩と一緒に軟玉(ネフライト)が 見つかることがあるといいます このネフライトの秩父翡翠で作られた 平安時代の石帯(皮のベルトに装着する装身具)が 旧妻沼町(現熊谷市)の鵜ノ森・入胎遺跡で出土しているそうです ![]() 熊谷市江南文化財センター所蔵 転写 昭和40年刊行の木耳社「水石」 村田慶司にみられる 秩父の翡翠 とありますが 村田氏のこの話がおかしいのは 翡翠の場合、緑のところが「翡翠」であとは母岩というのではなく 翡翠の基本は「白」で、それに別の鉱物が混じったところが 緑になったりラベンダーになったりするわけで つまり白い母岩を含めて全部が翡翠なのです 逆に、この本の写真で翡翠としている石は ジェダイトなのかな? という感じさえします 横16×高さ16×奥7.5 3㎏強 寄居付近の川原でこのような素晴らしい翡翠が拾えました 15年くらい前に、知り合い(私に最初に水石を教えてくれたHさん)と 荒川に石拾いに行った際、Hさんが拾ったものを譲ってもらったものです なので正真正銘の荒川の翡翠、秩父の翡翠です 当時、Hさんは、毎日のように荒川の川原に石拾いに行っていましたが このような石ははじめて拾えたそうです 三沢産か、中津産かもわかりませんが 三沢川あるいは中津川から荒川本流に流れてきたものでしょう また、硬玉か軟玉かはわかりませんが 白地に緑(アップルグリーン)が入るという様式は、硬玉そのものです なお透過はありません 緑の部分は、蛇紋岩らしいです なんといっても川ずれがきいていて 山形にして飾れるというのがいいいですね 寄居の翡翠 Field Note フィールドノートさんの https://planet-scope.info/Nishinoiri.html 埼玉県寄居町西ノ入のヒスイ輝石と藍閃石 というサイトの記事を引用させていただきます 【 寄居町西ノ入には稚童岩と呼ばれる ヒスイ輝石を含む岩石の露頭があります ここの岩石はヒスイ輝石を50%ほど含み、残りは大半が石英 さらに脈状に藍閃石含まれています 糸魚川などの 宝石になる「ひすい」はヒスイ輝石が90%を超える割合で 含まれている"岩石"です そのようなものは緻密な結晶から成る岩石のためハンマーで割るのは大変ですが こちらの埼玉のヒスイは比較的容易に割れます 】 JR八高線折原駅より稚児岩まで、およそ1時間かかるようです ![]() 稚童岩 ヒスイ輝石を含む岩石の露頭 クリックすると画像が拡大表示されます 横16×高さ17×奥14 5.5㎏ 石英がはっきりとみられます この石は、私の石の最初の師匠から もらってきました 「石英がくっついているのがよい」ということで この石をもらってきました 師匠H氏は、勾玉にしているようですが 珍しいということで、ほしがる人はいるようです ![]() 磨くとこんな感じになるようです 三沢翡翠 横16.5×高さ(台込)15.5×奥.5 1960g 庭石とかを販売なされている 61STONEさんより入手した 超レアな秩父の三沢翡翠です 前述したように 秩父の翡翠を調べてみると 埼玉県皆野町三沢地区、秩父市黒谷地区に 硬玉(ジェダイト)と軟質(ネフライト) 大滝村中津川に、硬玉 大滝村中津川渓谷上流の秩父鉱山に、硬玉 寄居町三品地区に、硬玉(石英岩中にわずかにみられる程度) が出るとあります 三沢川は、荒川に注ぐ小さな川で 三沢川上流では、蛇紋岩と一緒に軟玉(ネフライト)が 見つかることがあるといいます このネフライトの秩父翡翠で作られた 平安時代の石帯(皮のベルトに装着する装身具)が 旧妻沼町(現熊谷市)の鵜ノ森・入胎遺跡で出土しているそうです ![]() 熊谷市江南文化財センター所蔵 転写 61STONEさんに、「この石はどこから手に入れましたか?」 と聞いたところ、「秩父の石屋さんから入手しました」とのことです 三協さんなのかもしれません (のちに違うことが分かりました) 先日、石友さんの渡邊さんから 三協さんのところに磨きに出していた錦紅石を 引き取りに行ってきたということで、写真をいただきました 磨きに出したのは、お父様がかつて入手なされて66キロもある 佐渡の錦紅石の原石です その際、三協さんも90歳近くになり 一人いる職人さんも70代で、営業を終わりにするということで 全ての石を処分したという話でした 渡邊さんの話では 61STONEの秋山さんが家に来た時 庭の片隅にあった原石に気づき 買い取りを希望しましたが 父との約束を果たせて良かったです 欲を言えば・・・もっと良い模様が希望でした! とのことです 三協さんには、私の最初の石の師匠がよく磨きに出していました 師匠は当初、水石を収集していましたが そのうち、鉱物の収集に移り 日本の鉱物の収集家として有名となっています 国産の鉱物を扱う業者さんが少ないため 各地のミネラルショーにもひっぱりだこになっています (池袋のサンシャインシティで開催される東京ミネラルショーには 国内外から約360店舗が出店しまが、国産を専門に扱うのは 10店ぐらいといいます) 最近は、翡翠で勾玉をつくったりもしていて 最終の仕上げをまとめて(50個以上) 三協さんにだしていました なので、師匠からも、三協さんが営業をやめることは耳にしていました 三沢翡翠の話に戻ります ![]() ![]() ![]() これは私がいただいた石ですが もう一石、61STONEさんがヤフオクに出しています ![]() ![]() 緋山は、ジャスパー系の色彩石が一番好きで 翡翠はついでに集めているので 今回いただいた石で十分ですが 翡翠を専門的に収集なされている方でしたら ぜひ、買っておいた方がいいですよ 三沢翡翠、もう、二度と手に入らないと思います 七里さんに、黒檀の 最高の台座をつけていただきました 黒檀は、紫檀とは比べものにならないくらい高価です ![]() 七里さんの撮影 実物の色に近いです ![]() 裏は、七里さんの撮ったこの写真がほぼ実物の色です 黒檀の縞も綺麗に写っています
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