安倍川の鉄丸石 (てつがんせき) 安倍川(あべかわ)は、静岡県静岡市を流れる安倍川の本流です 長さは53.3kmで、流域のすべてが静岡市内であります 下流部では、藁科川(わらしながわ)と合流し 市街地の西側を流れて駿河湾に注ぎます 伏流水は静岡市の水道水にも使われているということです なお、「あべがわ」と読むのは誤りなんだそうです 源流地は、大谷嶺・八紘嶺・安倍峠 だといいます 八紘嶺(1918m)は、日本200名山の七面山(1989)と 300名山の山伏(やんぶし・2014m・山伏岳)のとなりの山です 七面山は、日蓮の開いた身延山久遠寺の奥の院的存在の信仰の山で 日蓮の高弟である日朗が開いたといわれています 日本300名山 山伏(やんぶし)岳より富士 右に小さく200名山の愛鷹(あしたか)山 大谷嶺(おおやれい・2000m)の南斜面にある大谷崩れは 1707年(宝永4年)の宝永地震によってできた山体崩壊で 日本三大崩れのひとつとされています 転写 安倍川餅は、本来はつき立ての餅に黄な粉をまぶし その上から白砂糖をかけた物だそうで 現在では、黄な粉をまぶしたものと、こし餡に絡めたものの二種類を 一皿に盛った物が一般的のようです ウキペディアによると 伝承では 徳川家康が、安倍川の岸の茶店に立ち寄ったところ 店主が、黄な粉を安倍川上流(梅ヶ島)で取れる砂金に見立て つき立ての餅にまぶし献上した 家康はこれを大層喜び、安倍川にちなんで安倍川餅と名付けた 以来、安倍川のほとりの弥勒(みろく・静岡市葵区弥勒)には 安倍川餅の店が並ぶようになった 実際には 日本では大変貴重で珍しかった白砂糖を使っている事から東海道の名物となった とあります 一方、日本大百科全書(ニッポニカ)によると 安倍川餅の由来は、東海道往還の旅人が、安倍川の渡しで 川越人足を待つ間に、茶店で一服の際に供されたのに始まる 焼き餅を湯にくぐらせたうえ黒蜜(くろみつ)に浸し きな粉をまぶして食べさせたのが評判をとり、全国に伝えられた とあります 安倍川では、紫晃石(しこうせき)の滝石や、鉄丸石(てつがんせき)が 全国的に知られます 紫晃石については、滝石 に掲載 鉄丸石の名高いのは、この安倍川と 高知県室戸岬の海石です ヤフオクにもわりと出品の多い石なのですが 私は、茶室に似合いそうな抽象的雰囲気のこうした石には とんと興味が湧かず、ずっと後回しになっていました 以下に掲載した2石は 2016年のゴールデンウィーク以来、三度ばかり 静岡県在住の著名な石の収集家である一刻爺さんこと 田旗先生のご自宅におじゃまさせていただきましたが 2017年のお盆に、先生よりいたただいてきたものです 田旗先生は2018年の1月にお亡くなられましたが 俗っぽさがく、石については衆に優れた見識をおもちでした そしてなにより 先生の時代の人で 水石と美石の両方わたった あれだけ充実したコレクションをなしえた方は 私は他に知りません また台座づくりにおいても名人級で 水石、観賞石の世界に多大な貢献をなされた方でもあります 先生からは 美石においては、五城目孔雀石、羽茂五色石などを 水石においては、湘南海岸石、三倉石、神居古潭石 四万十川石、加茂川石、古谷石などを 譲っていただきました 私の所有する湘南海岸石のほとんどは、田幡先生よりきたものですし とりわけこの三倉石は先生のお気に入りの1つで 私もとても気に入っております それと日本一と言えるレベルの富士山の溶岩も 先生のもとからきています また先生は、静岡は、馬蹄石や鉄丸石が採取できることもあってか 抽象石、心象石にも精通しておられました さらに作り石に対しても偏見をもたず 作者の技巧をめでるセンスをおもちで 小さな緑の神居古潭石を私に示し 「この作者は実に上手だったよ。亡くなってしまったけどね」 などと言っていたことを記憶しています 一方、豊富なコレクションの中に滝石だけがないことを聞くと 「滝石だけはどうもダメだ。興味が湧かないんだよ」 と言っておられ 「誰にも好き嫌いがあるものだけど、滝石が嫌いとは珍しいな・・・」と 思ったものです そして 「先生、最近はどのような石に心が向いておられますか?」 と聞くと 「そうだな。小さくて形のいい茅舎石(くずやいし)かな」 と言っておられました 本当に長い間、お疲れ様でした 高邁なる先生に、ここに哀悼の意を表します クリックすると写真が拡大表示されます 横11.5×高さ(台込)11×奥10 1864g 馬蹄石と鉄丸石の違いは へそのあるなしで判ると先生は言っておられました 横11×高さ(台込)7×奥11.5 1131g 鉄丸は、茶色系がふつうで 黒鉄丸はずっと少ないそうです 薄溜まり石です 藤枝縮緬石 (ふじえだちりめんせき) 藤枝石(藤枝縮緬石)は、静岡県の瀬戸川が産地のようです 瀬戸川は、静岡県藤枝市および焼津市を流れる瀬戸川水系の河川で 長さは30km 藤枝市瀬戸ノ谷の高根山付近に源を発し南流 焼津市の焼津港付近から駿河湾に注ぎます 縮緬石(ちりめん肌の石)というと、この藤枝石の代名詞になっています 横45×高さ(台込)31×奥30 およそ28㎏ 底も自然 フラッシュありで撮影 藤枝縮緬石は ふつう硬さがないので、評価はもう一つのようです しかしこの石はなかなか硬質で キンキンとまではいきませんが 叩くと乾いた音を発します 私に石を最初に教えてくれた師匠は 秩父の沢(荒川水系)を全て登り、滝の写真集を出しています ひと口に秩父の沢といっても1500もあり おおざっぱに1週間に1つ登っても30年かかることになります この石はそんな師匠が 神岡銘石店さん(埼玉県児玉郡美里町)から譲ってもらったもので そのとき、一級品の菊花石2つと交換したといいます 〔神岡さんは、日本屈指、有名な水石業者さんでしたが、現在はご高齢です〕 水石としては大振りですが 和室に1石置くと、雰囲気ががらりと変わります 質素な和室が、天皇陛下をお迎えしても 恥ずかしくないものと変わるほどの名石と言えます 矢作川石 矢作川(やはぎがわ)は 長野県、岐阜県および愛知県を流れ三河湾に注ぐ矢作川水系の本流です 長さは117km 長野県下伊那郡平谷村の中央アルプス最南端にあたる 大川入山(おおかわいりやま・1908m)に源を発して南西に流れ 岐阜県恵那市と愛知県豊田市の奥矢作湖周辺では、矢作川が県境を決めています 流域に豊田市、岡崎市などがあります 横16×高さ(台込)14×奥6.5 1481g 愛知県の菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんからいただきました 庄内川石 庄内川(しょうないがわ)は、岐阜県恵那市の夕立山を源(水源の標高727m)とし 岐阜県南東部および愛知県北西部を流れ、伊勢湾に注ぐ庄内川水系の本流です 岐阜県内では「土岐川」と呼ばれて、 なんといっても土岐石の産地として名高いです 他に、瀬田川の虎石に似た石が揚がることでも知られ 梨地真黒も揚がります 横25.5×高さ(台込)7×奥16 2927g 段石土坡の真黒で、質もよいです なかなかの名品 長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんからいただきました 横23.5×高さ(台込)14.5×奥9 およそ3.68㎏ 庄内川の梨地石です 長野の月水苑の月水さんからいただきました 員弁川石 員弁川(いなべがわ)は、三重県の北東部を流れる員弁川水系の本流です 鈴鹿山脈の御池岳(おいけだけ・1247m)北麓に源を発し いなべ市・東員町・桑名市などを流れ伊勢湾に注ぎます 長さは37km 員弁川水系全体の河川数は34河川におよびます 横19×高さ(台込)11×奥12.5 2503g 員弁の段石。質は硬質です 愛知県の菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんの自採石で 底は平らですが全くの自然石です 形もなかなかない景ですし 石の質も珍しいです 愛知川石 愛知川(えちがわ)は、滋賀県東部を流れる淀川水系の河川です ちなみに、淀川は、琵琶湖から流れ出る唯一の河川で 名石の宝庫とされる瀬田川が、宇治川、淀川と名前を変えたもので 大阪湾に流れ込みます 愛知川は、鈴鹿山脈の御池岳(おいけだけ・1242m)に源を発する茶屋川 同じく鈴鹿山脈の200名山 御在所山(ございしょだけ・1212m)に源を発する神崎川が 滋賀県東近江市で合流し、愛知川となり 下流では彦根市と東近江市の境界となりつつ琵琶湖へ注ぎます 長さは37km 横41×高さ14.5×奥26.5 およそ16.5㎏ こちらの方を正面とした方が景色はよいです 白毛門登山道より 左に100名山 谷川岳(左がトマノ耳・右がオキノ耳)、右に一ノ倉岳 表銀座ルートより見る槍ヶ岳 ホンモノの名山というのはこのように沢(谷)や カール(氷河によって削られた窪地)をもちます 転写 転写 硬質の青 吊り尾根の美しさは絶品です
底はほぼ平ら、もちろん自然です 愛知県の菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんからいただきました
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