加茂川石 1964年(昭和39年)公布、翌年施行の河川法により 起点よりすべて鴨川の表記に統一されていますが 通例として、およそ高野川(たかのがわ)との合流点より 上流は賀茂川または加茂川と表記される場合が多いようです 上賀茂神社、下鴨神社がそうした例です 水石では、鴨川石でも、賀茂川石でもなく なぜか加茂川石と書かれます 鴨川は、瀬田川と同じ、淀川水系の河川で 桂川(かつらがわ)の支流です 桂川は 京都府京都市左京区広河原と 南丹市美山町佐々里の境に位置する佐々里峠に発し 保津峡を流れ、嵐山で京都盆地に出て、伏見区で鴨川を併せ 大阪府との境で木津川、宇治川と合流し淀川となります 長さは107km また、淀川は、琵琶湖から流れ出る唯一の河川で 瀬田川、宇治川、淀川と名前を変えて大阪湾に流れ込みます 長さ75.1km 鴨川の長さは21kmです 北区雲ケ畑(くもがはた)の 桟敷ヶ岳(さんじきがたけ・さじきがたけ 896m) 東部の谷を源とする祖父谷川(そふだにがわ)と 桟敷ヶ岳南部の薬師峠を源とする雲ケ畑岩屋川が 雲ケ畑岩屋橋で合流し雲ケ畑川となります 雲ケ畑川は、雲ケ畑の魚谷山(いおだにやま 816m)南部の谷を源とする 中津川と出合橋で合流し これより「鴨川」となるそうです このため鴨川の源流は、桟敷ヶ岳が魚谷山とみなされます 鴨川本流とは別に、京都市右京区の芹生峠(せりょうとうげ) を源とする貴船川と 京都市左京区の花脊峠(はなせとおげ)を源とする鞍馬川が 貴船口で合流し鞍馬川となり 山幸橋(さんこばし)で鴨川と合流し大きな流れとなるそうです 鴨川は鞍馬川と合流後、北区上賀茂で京都盆地に出て 上賀茂神社(賀茂別雷神社・かもわけいかづちじんしゃ) 下鴨神社(賀茂御祖神社・かもみおやじんじゃ)の脇を流れ 賀茂大橋(加茂大橋)手前で高野川(たかのがわ)と合流します 高野川は、京都市左京区と 滋賀県大津市の境に位置する途中峠(とちゅうとうげ) の南部に発する河川で、長さ17kmです そこから京都市内を流れ、伏見区下鳥羽で西高瀬川と合流 そのまま桂川に注ぎます なお、中京区では高瀬川 〔江戸時代初期に京都の中心部と伏見を結ぶために 物流用に開削された運河 なお西高瀬川は河川〕 を分け、九条付近で再度合流します 初代 神武天皇が即位して大和朝廷を開くまでを 「神代」(かみよ)と言いいます 天照大神(太陽の女神・皇祖神)の 長男 忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)は 母の天照から、高天原〔たかまがはら・天上界〕から 葦原中国〔あしはらのなかつくに・下界〕に降臨し 下界を統治するように命じられますが 下界に行くのが嫌だった ちょうど妻の万幡豊秋津師比売 〔よろずはたとよあきつしひめ・高御産巣日神(たかみむすひのかみ)の娘〕に 天照国照彦火明命(あまてるくにてるひこほのあかりのみこと)と 邇邇芸命(ににぎのみこと)が生まれたので 天照に自分の子を降臨させることを願う 天照はやむなく、赤子の邇邇芸命に 神々を従わせて天降りさせることにした これが記紀(古事記と日本書紀)神話の「天孫降臨」です そして、邇邇芸命の曾孫(ひまご)が 神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと) のちの神武天皇(初代天皇)になります 但し、邇邇芸命 山幸彦〔火火出見命(ほほでみのみこと)〕 鵜葺屋葺不合命〔うがやふきあえずのみこと・鵜葺草葺不合命〕 までは九州王朝です 神倭伊波礼毘古命が東征を行い(神武東征という) 大和朝廷を開き、初代天皇に即位したのです その東征において熊野の山中で道がわからずに苦戦していた東征軍に 高御産巣日神(たかみむすひのかみ)の命により 天から先導役の 八咫烏(やたがらす)が遣わされます これにより連戦連勝。熊野、吉野の山を越えて、紀伊半島を北上し 大和(奈良県)の宇陀(うだ)に至ります 大和まで東征軍の道案内をつとめた八咫烏は3本足の烏で 勝利への導き役として 日本サッカー協会(Jリーグ)のシンボルマークになっていますが この八咫烏こそが、古代の豪族 鴨(かも)氏の祖先とされる 京都の 下鴨神社〔正式名 賀茂御祖(かもみおや)神社〕の祭神 賀茂建角身命(かもたけつのみのみこと)の化身とされているわけです 一方、上賀茂神社〔正式名 賀茂別雷(わけいかづち)神社。山城国一の宮〕 の祭神は 火雷神(ほのいかづちのかみ)と 賀茂建角身命の娘 玉依姫(たまよりひめ)の子 賀茂別雷命で 玉依姫が加茂川で禊(みそぎ)をしていると 川上から丹塗矢〔にぬりや・正体は、火雷神〕が流れてきたので これを拾って寝室に置いたところ身ごもり、賀茂別雷命を産んだといいます 下鴨、上賀茂両神社は、神武天皇の代に創建されたとされます 下鴨の祭神は、比叡山の西麓の御蔭山(みかげやま)に 上賀茂の祭神は、現社地の北西の神山(こうやま・賀茂山)に 降臨して祀られていたそうですが ともに天武天皇6年(677)に、現在地に移されたそうです 平安遷都以来、皇城鎮護の社として伊勢神宮につぐ扱いを受け 祭神は全国に勧請(かんじょう)されているようです なお、神武東征については こちらに詳しく書いてあります さて、加茂川石というのは 瀬田川石、佐治川石とともに 水石の三大名石の1つというのは 周知のことです しかし、現実はとてもとてもそんな石ではありませんよね 1960年代に活躍した水石界の大御所 村田圭司は 「加茂の七石」について 京都の北山を水源とする清流が高野(たかの)川や賀茂(かも)川に 合流するあたり一帯から産するもので 古くから最高の質を備えた雅石として名高い (1)八瀬真黒(やせまぐろ) 高野川上流八瀬の産 落ち着いた黒い色調に巣立ちといわれる粒状の小穴が無数にある (2)賤機(しずはた) 静原(しずはら)川の産 珪石(けいせき)に糸を巻いたような糸巻石が出る (3)鞍馬(くらま) 鞍馬川の産 鉄さび色を帯びた渋い色調の石である (4)畚下(ふごろし) 鞍馬川と貴船(きぶね)川の合流点から出る 茶褐色のチャート (5)貴船 貴船川の産 帯紫色の雅石 (6)雲ヶ畑(くもがはた) 雲ヶ畑産 黄褐色のチャート (7)紅加茂 市ノ瀬(いちのせ)産 赤色のチャート と語られています このうち、畚下石(ふごろしいし)と雲ヶ畑石(くもがはたいし)は 存在すらよくわかりませんが これまで写真で確認した数点 またチャートであるということから とても全国レベルの石ではないでしょうね チャートは、色味では とてもジャスパーにかないません 畚下石 転写 京都の水石展より 昭和39年刊行の「原色日本水石図鑑」(徳間書店) にみられる畚下石 横38 水石ブームのときならともかく、また地元の人ならともかく 今、このレベルの石を、欲しがる人はいませんよね 畚下石 転写 この石だけは、なかなか綺麗な色に見えますが 写真だからなんとも言えません ちなみに畚下石 「畚」(ふご)とは、藁(わら)や竹で編まれた籠(かご)をさします その昔、鞍馬山で取れる火打石(チャート)を畚に入れ 名産品として商売したことより 鞍馬山で取れる火打石が 畚下ろし石(畚下石)と呼ばれるようになったそうです また別の資料には 「畚」とは「モッコ」のことで 山からモッコで担いで下ろされたことからついた名とあります モッコ 転写 賤機石(しずはたいし)は糸掛石です そもそも糸掛石自体がそんなに高い評価はつきません 鞍馬石はつくばいや靴脱ぎ石として 茶室には欠かせない石で 京都の石の代表格です しかし、水石となるとソゲを整形し 錆付けしたものが多く 良品であっても 1つ2つはほしいけどいくつもいらない というレベルの石です 貴船石は、主に庭石で 庭石としては最高級品の評価をもちます 石は、輝緑凝灰岩といわれていますが 黒紫色、柴色、緑色、などがあり 1種に限定されるものではないのかも知れません とりわけ紫貴船の評価が高いです しかし、水石としてはマイナーな存在と言わざるを得ません 紅加茂石については これぞ日本一と言っても過言でない石を 所有しています やはり庭石として定評があり 水石としても扱われますが、どちらかいうと美石の石です 紅がよく出ているものはチャート系の美石としては最高と言えます そうなると残るのは真黒系統ということになります 村田圭司氏によると「巣立ち真黒」と限定していますが ふつうの真黒石の加茂川が ときおりヤフオクに出品されますし 知り合いの業者さんからも写真が届いたりします しかし、千軒石や八海山石など別の地域の石が 加茂川石に化けて流通していた時代もあり 加茂川の真黒の場合、巣立ち真黒以外は 固有の特徴をもたないので 今でもかなりの数の別の地域の石が 加茂川石に化けていると考えられます 正直、業者さんのいう産地なんてデタラメなものも多いです ある業者さんから、2月おきぐらいに石の写真が送られてきます なかに北上川石があったので、たずねると 「その石は売れてしまった」 「ただホントに北上かの確証が持てないところがある」 「関東で出た(入手した)ので 産地不詳では出せない(売れない)ので北上とした」 というのです まぁ、こっちもそういうのも分かっていて 水石という趣味を楽しんでいるのでいいんですが(笑) 水石を趣味としていた主人が亡くなると ご夫人では石の産地なんかわからない そうして業者の手にわたった産地不詳のそれらしき石が つぎつぎと加茂川石となって生まれてくるわけです(笑) つまり誰かが「加茂川石」と言えば そうなってしまう石なわけです 鴨川の支流である高野川(たかのがわ)は 上流の左京区八瀬(やせ)流域では 八瀬川とも呼ばれていますが 巣立ち真黒(八瀬の真黒)はこのあたりで主に採取されたようです ちなみにウキペディアに 左京区大原北部のミタニ峠を源とする川を三谷口で合わせ 左京区鞍馬と左京区大原の境に位置する 天ヶ岳を源とする高谷川を小出石町で合わせる 三谷口からは大原川、八瀬流域では八瀬川とも呼ばれる とあります なお、よく京都の石は 「真黒石以外、軟らかい石である」 なんて言われますが こういうのは水石家の勝手な思い込みからの話です 逆に、真黒石が一番軟らかいくらいです 糸掛石は論外として・・・ チャートも、ジャスパーほどの硬度をもちます そもそも、チャートとは堆積岩の一種で 主成分は水晶、メノウ、ジャスパー同様の石英です この成分を持つ放散虫・海綿動物などの動物の殻や 骨片(微化石)が海底に堆積してできた岩石と言われています 但し、チャートはジャスパーに比べると 色味に鮮やかさや深みがありませんが・・・ 鞍馬は花崗岩系統の石で、花崗岩の硬度は6.5もあります 古谷石が4.5、神居古潭石が5.5 翡翠やジャスパーが7~6.5なので 翡翠やジャスパーなみにあるわけです ここで石の「硬さ」にふれておきます 石を指ではじくとと清音を発する カンカンとか、キンキンとかいった音がする だから硬い という水石界の常識があります しかし、古潭よりずっと硬度の高い 翡翠や石英(水晶やジャスパー)は 叩いても清音を発することなどありませんよね ダイヤモンドがモース硬度10に対し、翡翠は6.5~7とされます 但し、モース硬度とはひっかき傷に対する抵抗力を示すもので ダイヤはハンマーで叩くと粉々に割れてしまいます これに対し翡翠は、ハンマーを跳ね返すほど硬い石です ダイヤが、劈開性(へきかいせい・ある特定方向へ割れやすいという性質) をもつのに対し、翡翠はもちません ちなみに、サヌカイト(カンカン石)は硬度6~7とされるので 清音を発する→ 硬い というのは正しいと言えますが 翡翠やジャスパーのように 清音を発しなくても硬いモノもあるので 一つの目安でしかないということです 石の厚みも関係してきますし・・・ また、ダイヤモンドでもサファイヤでも 硬度が高い、石が硬いから 磨くと輝くわけです これは河原の石、川ズレの石でも一緒です 神居古潭石の本真黒はなんかは 硬質ゆえにあれだけの光沢、ツヤが出ているのです モース硬度は ダイヤモンドが10、コランダム(ルビー・サファイア)が9 トパーズが8、エメラルド8~7.5 石英(水晶・瑪瑙・ジャスパー)が7~6.5 翡翠のジェダイドが7~6.5 翡翠のネフライトが6.5~6 オパールが6.5~5.5、トルコ石やラスピラズリが6~5、黒曜石5.5~5 蛍石4、珊瑚が3.5、真珠か4~2.5 大理石4~3、蛇紋岩4~3、雲母2.5、琥珀が2.5~2 とされます また 歯(エナメル質)は7、鉄工用ヤスリ6.5、ガラス6~5 50円と100円は5.5~5、釘やナイフは4~5 10円硬貨は3.5、ツメは2.5、チョーク1 とされます 地球上で最も多い鉱物は「石英」で 砂埃(ほこりやチリ)の成分にも当然石英が含まれます 車の塗装などもこれよより傷をつきます なので硬度7(石英)より、硬度の低い石の手入れは こするのではなく軽く埃を払うようにするのがよいそうです なお、石英鉱物は、目に見えるほど大きく結晶しているもの つまり顕晶質(けんしょうしつ)のものを「水晶」と呼びます 一方、ミクロサイズの結晶が集まった潜晶質(せんしょうしつ)のものは 「カルセドニー」(玉髄)、「瑪瑙」(アゲート)、「ジャスパー」(碧玉)に分けられ 「カルセドニー」(玉髄)と「瑪瑙」(アゲート)は、半透明なモノ 「瑪瑙」(アゲート)は、カルセドニーのなかで模様の美しいモノをいいます これに対し、ジャスパーは不透明なモノを指します 「欠け」とか「割れ」に対する抵抗を靭性(じんせい)といいます よく「粘りのある石」とか「石に粘りがある」とか表現される ≪粘り≫を示す値です 最も粘りのある材料として知られる カーボナードを10としたときの靭性は カーボナード 10 コランダム(ルビー・サファイア) 8 翡翠の硬玉(ジェダイド) 8 翡翠の軟玉(ネフライト) 8 ダイヤモンド 7.5 水晶 7.5 エメラルド 5.5 トパーズ 5 カーボナードは、ダイヤモンドの微細な結晶が緻密に集積したもので ブラックダイヤと呼ばれます 生産量は少ないそうですが、宝石としての需要は少ないため 単結晶ダイヤモンドと比べると安価だといいます カーボナードは、劈開性をもたないため 単結晶ダイヤモンドと違い非常に割れにくいわけです ダイアモンドの硬度が高いのはよく知られていますが 靭性は水晶と同じ7.5で、あまり高くありません エメラルドが割れやすいのは靭性が低いからです 翡翠が割れにくいのは モース硬度は低いけれども靭性が高いからです 鉱物には、衝撃を加えると一定の方向に平行に割れる あるいは裂ける性質をもつものがあります この性質を劈開(へきかい)といいます 劈開の方向には、雲母やトパーズのように一方向に劈開するもの 方解石(石灰岩の主成分鉱物)のように三方向に劈開するもの 蛍石やダイアモンドのように四方向に劈開するものなどがあるそうです 水晶には 柱を斜めに切るように割れる 「不明瞭な劈開」があるとされます これに対し、劈開のない瑪瑙やジャスパーなどの鉱物は 彫り物などに加工しやすいわけです クリックすると写真が拡大表示されます 巣立ち真黒石 横26×高さ(台込)10.5×奥15.5 およそ3.5㎏ この石は、今年の1月にお亡くなりになられた 著名な石の収集家 静岡県在住の一刻爺さんこと 田旗さん(故人)のもとに行ってゆずってもらったものです 一刻先生のブログに 「作りの巣立ち石を幾つか見ましたが 此の石については、手は入っていないと確信しています」 とあります とはいえ、なんせ京都の石というのは 全てに手が入っていると言っても過言ではありませんし 「怪しさ」はあります そけだけ景がよすぎるわけです(笑) ただ、月水先生のいうように 世に出ている天下の名石の99%以上 が多かれ少なかれ手が入っている 自採の石以外、本当にウブなのか証明することは不可能 与十郎石(加工石)の名人 有澤氏などは、全く加工跡を残さなかった ということを思えば 「怪しい」で、加工跡がはっきりしない。わからない のなら それはそれで自然石と思って楽しめばいいと思います また、一刻先生は 「形は理想の物で有ると思われますが 何度見直しても、今一つグット来る物を感じられません」 ともお書きですが それはたぶん、先生のお好きな分野が 抽象石(心象石)だからではなかったからではないでしょうか? この石は、やや抽象的でありますが 逆にいうと抽象性が中途半端 そこが先生が「今1つ」と感じたところかと思われます しかし右脳の発達していない私などにとっては 素晴らしい石であり、気に入っていますし まったくの自然石であるとしたら 天下の名石どころか稀有の名石だと思います まず言えることは、これまで私は何度か 加茂川の巣立ち真黒というのをオークションで落札してみましたが どれも岩に巣立ちが入ったようなもろい質で、これが真黒石なの? というようなものでした この石の硬質なのにびっくりし 「これが本当の加茂の巣立ち真黒か・・・」 と感嘆したのを憶えています また景もさることながら、川ズレが素晴らしいのです 横15×高さ(台込)11×奥9.5 1070g この石は、札幌愛石会の相談役の野村さんよりいただきました そのさい、サイズの小さいことに、私が難色を示し また「本当に加茂の石であるのか?」 「硬さはあるのか?」 と問うと 野村さんは 「〇〇水石会の会長が ガラスケースに入れて観賞していたくらいの石で 加茂川の石に間違えない」 「加茂紅石(かもべにせき)というんです」 「硬さはそれはもう神居古潭と変わらない」 などと あまりに勧めてくるので 紅加茂石なら有名だけど 加茂紅石なんて聞いたことないけどな・・・ と思いつつも お付き合いもあるのでいただきました 確かに、サイズよりも大きさを感じさせる石であり 赤系であっても派手さがなく、 色調とジャグレが織りなす 質感は素晴らしいものがあります しかし硬さに関しては、神居古潭は言い過ぎで 水石としてギリギリ合格くらい硬さで、むしろ軽い石です 横22×高さ(台込)13.5×奥9.5 2697g この石も、京都の河合香艸園(こうそうえん)さんからいただきました 真黒ではないのですが、硬質で 川ズレがよく、肌が滑らかです 京美人の秘訣と言えば 軟水である「加茂川(鴨川)の水」 そんな加茂川の水の産湯につかり 生まれたときから、この水で肌を磨いてきたというのです そんな京美人を連想させる 肌石と言えましょう 形は、四万十川石に似た抽象的な山形で、なかなか得難いです 本当に、加茂川石であるかを、河合さんに尋ねたところ 保証はできない 仕入れた先が、加茂と言っていたのでそれを信じている とのことでした やはり、加茂川石の場合、巣立ち真黒でもない限り 特徴がないので、怪しさがつねに残るということです なお、今回 加茂川も色々な種類の石がとれるが 真黒は、八瀬(やせ)ぐらいにしか出ない というちょっと興味深い話が聞けました 大文字山 横24.5×高さ7×奥7.5 1558g 夏の京都の風物詩、大文字焼き(五山送り火)を 想わせる大の文字が浮かびあがっています 京都盆地を彷彿とさせる石です 転写 転写 横39×高さ(台込)16×奥23.5 およそ11㎏ この石は、ある筋から 加茂川のウブとしていただきました 大きさがあり、名石クラスです ただ、加茂や瀬田の名品のお定まりで どことなく手が入った感じはあります 底を吹いて直したようにも見えます 産地に関しては 石質、石肌から、加茂川の巣立ち真黒系 でいいかと思われますが 加茂の場合、他の産地の石が 加茂に化けている可能性もみなければなりません この石の場合、可能性としては わたしの知識の範囲では 他に、千軒石が考えられます ただ、千軒よりも、粘りのない質にみうけられます 質は、写真では溶岩のようにも見え 軟らかそうに見えますが キンキンの硬さで 厚みのある部分を叩いてもカンカン音がします 横16×高さ7.5×奥9.5 1112g 静岡骨董舘というショップから ヤフオクを通していただきました 加茂川の巣立ち真黒系の石のようです 底の一部を直してあります それと 文化圏による 加工に対する意識の違い で、このように↓書きました 北海道では 「潤石」という習慣があり 神居古潭石や幸太郎石に 機械油を塗ったり、ロウ引きしたりすることが ふつうに行われているようです 白山紋石庵のご主人 山下さんのご友人が 3度、凡石さんのところに遊びに行かれ 石を買ってきたことがあったそうです そのさい、凡石さんは 石にツヤを出すため 油絵で使うペンチングオイルを塗っている と言っていたそうです ぜんぶの石がそうではないでしょうが 石質の劣るものの大半はそうしていたようです (中略) 正直、私の所有する古潭や幸太郎、トマムや千軒のなかにも もしかしたらペンチングオイルのような 落とせないワックスが塗られていることを 怪しまざるを得ないものはいくつかあります 「もしかしたら」と表現したのは 薄く塗られているようなので、なんとも微妙なんです この石も、一部、そうしたツヤ出しが塗ってありました 全体を塗るのでなく、一部だけ塗ることで、見栄えをよくしたわけです この石の場合は 観賞には、問題ない程度ですが 一緒に購入した 紫晃石の滝石 (紫貴船とありましたが、おそらく紫晃石です) は、誰がみても明らかに判るレベルであったので 紙やすりと鉄ブラシで 丹念に落しました 静岡骨董舘の担当者に これからは、ツヤ出しについて ちゃんと明記して、出品すべきであることを伝えておきました 静岡骨董舘の担当者によると 「前所有者より、購入したままで出品している」 とのことで 静岡骨董舘の方で、ツヤ出しを塗ったわけではないようです ヤフオクの水石の出品数からいっても 静岡骨董舘さんは、骨董品のかたわら ついでに水石も扱っている というレベルではなく かなり積極的に水石を扱っていることはあきらかなので もう少し知識をもって 商売してもらいたいところです 加茂紅流し石 横25×高さ(台込)11×奥13 2330g この石は、今年の1月にお亡くなりになられた 著名な石の収集家 静岡県在住の一刻爺さんこと 田旗さんのもとに行ってゆずってもらったものです この石を先生のご自宅で拝見したとき 私が「この石、よさそうですね」と言うと 先生は「いいどころの騒ぎじゃない石だよ」 と言っておられたのを記憶しております この石は、先生のブログでも紹介されていて コメントを寄せた人が 溶岩のような紅加茂は何故か好きになれないでいますが このように川擦れ?の肌で硬質真黒に見える加茂川石は堪りません と書いてありました 紅流し石は、加茂川の他 奈良井川(長野県・信濃川水系)や 犬上川(滋賀県・淀川水系)のものも知られます 奈良井川の紅流し石 転写 犬上川の紅流し石 転写 奈良井川 紅流し石 参照 この加茂川の紅流し石は 実際に手にしてみても 石灰岩?の紅を、真黒の皮目で包みこんだような 印象を与えます 実際には真黒石とまではいきませんが こうした竜眼系統(母岩に石灰がまじる)としては かなり硬い黒です 紅がその硬い皮膜を破って 顏をのぞかせているのが素敵です 一刻先生は「ちょっと紅が少ないけれど」 とも言っておられましたが 前述の方が 「私の場合、赤が目立たないのが嬉しい」 とコメントを寄せているように これくらいのほうがオシャレなのかも知れません 形については、先生は、手前のハネあがった部分を気にしていましたが これによって奥に谷と起伏が生まれているので 私はむしろよしとみています それとここまで頭(山頂部)がよいいと 頭は作ったものではないかという疑いが生じます これについては わずかですがこの石の場合、肌に「皺」(しゅん)がみられます それがしっかりと頭部にもみられることから サンドペーパーをかけたくらいなことはあっても 削って頭を造作したということはないと思われます 加茂川の紅流し石は 「八瀬の紅流し」と言われるので 巣立ち真黒同様 高野川(たかのがわ)に産するようです 加茂紅流し石 横24×高さ(台込)14×奥13.5 およそ3.5㎏ 紅を観賞する石ということからすると こちらが正面のほうがいいですね 真上から 底 京都の河合香艸園(こうそうえん)さんからいただきました 底は自然ですが、景にいくらか手が入っている感じです 台座に、八瀬 紅流し石 龍石作 とあります 紫貴船石 貴船川は、京都市左京区を流れる鞍馬川の支流で 長さはわずか3kmです 京都市右京区の芹生峠(せりょうとうげ)を源とし 貴船の山間集落を流れ下り 叡山電鉄の貴船駅付近で鞍馬川に合流します その後、鞍馬川は鴨川に合流、更に鴨川は桂川に合流し 最終的には淀川へといきます なお、 貴船神社社伝においては 神武天皇の母である玉依姫命(たまよりひめのみこと)が 淀川、鴨川の源流を遡上した際にたどりついたのが貴船の地とされるため 日本神話的には貴船川を鴨川の源流と見なすこともあるそうです 横29×高さ20(台込)×奥15.5 およそ11.5㎏ 以下、フラッシュありで撮影 ホンモノの紫貴船というのが 関東人の私にはよく解りかねます そもそも庭石なので 菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんが 直接、庭石屋さんに聞いたところ 「白い石灰岩が噛むのが、ホンモノ」 ということでした ただ、あまり石灰岩が多いと 竜眼のようになってしまうので 庭石としては、石灰岩の少ないものがよいようです この石は、外見、ほんのわずかしか石灰岩の貫入はなく とても重く、紫貴船では最高の質かと思われます 景は、山頂部がやや後ろに反っているという欠点はありますが 石の向きを変えることで補える範囲です 色は、画像を修正しても なかなか実物に合わせることがかなわず フラッシュなしと、フラッシュありの両方で掲載しました どちらかというとフラッシュありのほうが実物に近いです 愛知県の菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんからいただきました 畚下石 (ふごろしいし) 横12.5×高さ(台込)5.5×奥10 447g 茨城県結城市の水石業者 株木さんよりいただきました 水石マニアの人が売りに来たもの ということでした 叩くと清音を発する キンキンの質です
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