菊花石の見方 菊花石を求める場合 1、バランス 2、花に芸があるか? 3、母岩 が重要です バランス いちばん目のいく頂点にいい花があり 目のいく中心や左右にもいい花があって 全体的にも均整がとれているということ しまりがあること もちろん乳と呼ばれる白線やサビが入り それが絵的にじゃましていると評価は落ちます 神のバランスと呼べるものは 動きというか流れを感じさせます 花が多ければいいというのでもないです。 日本人の美意識は、襖絵などがそうであるように 「空間」を活かした「引き算の美」なのですから 私は、水石収集を趣味としますから バランス、さらには「流」や「韻」(リズム)というものを とても大切にしています ここが、単なる菊花石だけの愛好家とは一線を画すところです 「流」や「韻」がある石は、もののあわれや侘び・寂 また、雅などといった美的感情を呼び起こします 花 むろん、ボケた冴えない花はダメで くっきりとした花に評価がつきます 白花なら、当然、ねずみより純白に近いほど 評価がつくのも当然です また、花に芯があるほうが評価は上がりますし 母岩は紺、花は白、花の芯は茶 などといったように 花の芯に、母岩と違う色が着いているとさらによいです それから、赤花、ピンク花、糸菊、赤芯花 メノウ花、黄金花、二重咲きなど 特殊性を持つ菊花石は当然、評価があがります なお、赤が入ると花がまとまらなくなる 白がねずみになる というのも岐阜の菊花石の特徴なので 赤花菊花の白い部分がねずみっぽいのは許容範囲と言えます ちなみに、白山紋石や津軽錦石の岩崎花紋石は 球果流紋岩なので 花が球果として入っています なので、どっから磨いても問題なく花が出てくるそうですが 菊花石の場合、水平に入っていたりで うまく磨かないと花が出なかったり また磨き過ぎると花がなくなってしまったりで そのへんが難しいようです 母 岩 根尾の菊花石の一般的な母岩は、紫に近い小豆色から 茶に近い小豆色で、黒もわりと見かけます 紫に近い小豆色の母岩を、臙脂(えんじ)母岩と呼びますが 日本工業規格(IIS)の色見本の臙脂とはちょっと違います 孔雀母岩、グリーン母岩、梨地母岩など 特殊性をもつものはその分価値がつきます とくに緑(グリーン)の母岩は美しいとされます 孔雀母岩のものは孔雀菊花石として珍重されています 孔雀母岩よりもさらに希少なものとしては、桜母岩や 金砂地母岩といったものもあります なお、日本の色彩石については、私以上に関心をもち 熱心に収集している人はいないと思われます それだけ色彩石が好きなわけですが 菊花石についても色合いに、とてもこだわります この点も、単なる菊花石だけの愛好家とは一線を画します 偽の菊花石 叩きづくり 叩きづくりの場合、磨くと菊がないか 菊があってもお粗末なものです 写真は転写 周りの母岩を叩いて 花を浮き立たせた(花出しした)だけの 純粋な≪叩き仕上げ≫と さらに花までつくってしまった≪叩きづくり≫とは違います 酸焼き 酸焼きとは、周囲を酸で溶かして花を浮き立たせる手法で 白い部分を溶かして赤花を浮き立たせたりするものです 酸焼きは、自然風に仕上げているのに どこか人工的な香りがする といったチグハグさが感じられます それと磨けないような柔らかい石を酸焼きにすることも多いといいます ≪菊花石は岐阜の磨きに限る≫ と言われているのは質がよいからです 業者間の競りでも、叩きや酸焼きは 高値で落札されることはありませんし 貴重な「牙」(立ちサバ)とは似ても似つかないものなので オークションで高額で落札することは避けるべきです 写真は転写 樹脂を埋み 通常、孔雀の近くに菊花ができても、孔雀の中にはできません 最初の写真は石を掘って樹脂を埋めた偽菊 もう1枚の方は、私の所有する孔雀菊花石です 花の精巧さをみれば明らかに判断できます
この石なんかは 杉山さん(菊花石では1番か2番の専門業者)曰く 「加工にしても、樹脂を埋め込んだというより ただペイントしたようなひどい粗悪品だね(笑)」とのことです この石は、上とは別のものですが 同じ人によって作られたものでしょう こちらはかなりよくできてはいますが ホンモノがもつ微妙な濃淡は出せていませんね それに本来、菊の花びらの上にくるはずの 「ニュウ」(白線・石のひびに石灰や石英が入り込んだもの)が 菊の下にあるのもおかしいです こうした工芸の孔雀菊花石は かつて岐阜に石道楽というお店があり そこのおばあちゃんが名人でよく製作していた という話も聞きます 私の知り合いの友人が高価な菊花石を買って ストーブのそばに置いていたら「菊が溶け出した」 なんて洒落にならないこともおきています こうした工芸孔雀菊花石の場合、母岩の孔雀石が良品ならば すなわち、玉(孔雀の羽の模様)がしっかり出ているモノならば むしろ菊を削って、孔雀石にしたほうが評価があがるでしょう・・・ しかし、この石の母岩の孔雀石は、高く見積もってせいぜい2万 そうなると工芸品としてどれだけの価値をみるかということになりますが どんなに高く見積もっても10万がいいとこではないですか・・・ クリックすると画像が拡大表示されます この出品者は、私の質問に、本来なら たとえ入札があっても 「出品を取り消して、専門家の鑑定してもらいます」 と返答し オークションにもその旨を掲載して出品を取り消すべきなのに 質問自体を無視して 高額入札をうながしたのだから悪質です ほとんど「詐欺」です(笑) ちなみに 杉山さん(菊花石では1番か2番の専門業者)のお客さんも 当初入札してしまったようで 杉山さんは「高値で入札しないように」と 注意を促したそうです それと、ついでにもう1つ書いてておくと 日本愛石館館長 小森宗閑 の書き込みのある桐箱は 根尾の菊花石業者のあいだで売り買いされているので 宗閑氏の遺愛石とは、無縁である という可能性もあるのです 宗閑さんや古潭の大家として知られる吉田凡石さんは 石でご飯を食べていたわけで 純粋な趣味人ではありません 凡石さんは、拾った石を 神居水石庵の陶山さんのところに 売りに行っていたそうです また彼らは、書が達筆で 自分の石でなくとも依頼されれば、銘をつけ 箱書きや札書きしてあげていたようです なので、宗閑さんの箱書き付きの石 というのはやたらとあります この石が仮に、宗閑さんの遺愛石であったなら 宗閑さんというのは、よほど眼がないですし また仮に、この石がお客さんの石で 宗閑さんが箱書きしてあげたとすると 宗閑さんという人は、よほどの商売人であった と言わざるを得ません サバと牙(キバ) 母岩が柔らかく、花が硬質だと、雨や地下水によって、母岩が溶けて花のみ残ります これを「立ちサバ」また「牙」といいます 逆に、母岩が硬く、花が柔らかいと、花が溶けて母岩ほうが残ります これを「抜けサバ」また「サバ」といいます ≪サバ≫という名称については 「盆栽用語」の捌幹(サバミキ・サバカン)からきたと思われます ネットで調べると 幹の一部あるいは大半が自然の災害を受け 割れたり裂けたりして木質部が現れている状態 山岳の老樹に見られ、風情がある 樹に時代をもたせるため、人工的に幹を削って サバ幹をつくることもある とあります
サバやキバのよいモノは、なかなか手に入れることは困難です 酸サバ 酸サバとは 叩き花を、酸で焼き サバ菊(牙菊)にみせたニセの牙菊です これについて 菊花石研究の第一人者であられ 多くの著者や 菊花石の「聖典」ともいうべきサイト 菊花石物語 http://www.kikkaseki.com/index.html を発信なされている 石原宜夫氏が 写真集「根尾の菊花石」(2018年初版)で このように↓述べられています ≪ サバ菊の牙菊などは殆どないのです あっても、一見さんには分けてくれません 私が始めた頃、酸サバがサバ菊として横行していました 酸で火傷した花と母岩は気持ちが悪くなります なんでそんな下品な物を造るかと、たずねると、選ぶのは客という返事 地方の百貨店で視力の衰えた高齢者やサバ菊を知らない初心者に売りつけて 欺瞞な菊を散逸させてしまいました そして、京都の展示会に行くと、酸サバが堂々とサバ菊として展示され 賞までもらっています 毅然たるものが水石の世界にはありません ≫ 石原さんもだいぶご高齢とききますが ご健在でおられて このような貴重な見解というか事実を書いてくださったことに 心から感謝です 転写 クリックすると写真が拡大表示されます
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