緋山酔恭「山水石美術館」 全国の水石・美石を紹介 菊花石 Ⅰ


根尾菊花石 Ⅰ




岐阜の根尾谷より産出する菊花石は

世界の他の菊花石の追従を全くゆるさない

傑出した名石であることは、誰もが認めざるおえません


岐阜の根尾谷の菊花石の8割は、大須集落の赤倉山

残りの2割は、松田集落の初鹿谷(はじかだに)より出たとされます



初鹿谷の菊花石は

かつて白木さんという人が山を所有していたことから

「白木の菊花石」「白木菊」といいます

また集落名から「松田の菊」

あるいは「初鹿(はつしか)の菊」といいます

花弁の細い糸菊で世に知られています



大須の赤倉山のほうは現在、採掘が終わりましたが

初鹿谷では、近年、山を白木さんから買い取った

石神銘石店さんにより、わずかになされているようです




自分の山だからといって

今の時代、環境を破壊するということで

菊花石の採石は許可がおりないそうです


そこで、山を管理するという名目で林道をつくる許可をとり

林道をつくるさいに出る菊花石の原石を採取しているという話です

(おそらく菊花石の出そうなところに林道をつくっているのでしょう)






根尾とは、かつての根尾村、現在は、本巣市根尾を指します

菊花石は、昭和10年代から人気に火がついたとされます


その歴史を調べると

眼科医の白木孝一氏が、買い手のつかない丸山というヒノキ林の山を

18円で買ったのにはじまるようです


その後、村人が丸山の谷(初鹿谷)から菊花石を拾い

白木氏にみせたところ驚いたとされます


昭和16年に、初鹿谷の一部である16万3千平方メートルの地域が

国の天然記念物に指定され

昭和27年には特別天然記念物に指定されました


初鹿谷は指定地以外の所にも菊花石の層があり

そこから昭和56年頃まで採石されていたそうです




一方、大須集落の赤倉山からは、40年に渡り採石されてきましたが

産出も少なくなり、平成13年に台風で大きな被害を受けたのを機に

採石が一旦、終了となっています






以下の写真はクリックにより拡大されます






横48.5×高さ20.5(台込)×奥6  およそ9.5㎏
















この石は、白木の菊花石の名品で

日本人の美は、引き算の美、空間の美 でありますが

それを象徴する石です


また、侘び寂と、雅さ が融合した「雅寂」(みやびさび)とでも

言いましょうか

私の求めている美を表現してくれる石です


なお、赤が入ると

花がまとまらなくなる

白がねずみになる

のが、岐阜の菊花石の特徴なので


紅白菊花石の場合

白花の色がねずみっぽいのは許容範囲なのですが


この石の白花はどこまでも白く

赤花は、朱色で非常に美しく

また、メノウ化花に赤が入る

第一級の菊花石です





根尾の菊花石を長年扱ってきた杉山さんが

これとそっくりの石がもう1つあるというので

写真を送ってくださいました


おそらく同じ岩盤より採掘された兄弟の石かと思われます


いまはどなたの手に渡っているのでしょうか?












銘 「姫菊の里」







横19×高さ(台込)12.5×奥3  1060g










色はこの最後の写真が、実物に一番近いです



この石は、大阪の方が

菊花石・水石専門業者の天勝庵の渡辺さんのところに

持ち込んだ石とのことです


その際、大阪のその方は

「私のほうがおたく(天勝庵)のホームページにある石よりも

ずっといいものをもっている」

と豪語したといいます


持ち込まれた石の中でも

この石はとりわけ素晴らしく、バランスが神的です




上の方は花輪となっていて、右端の下に大きな親があり

左端のニュウと呼ばれる白線まで

すべてが景色に調和して、全体に流れがあります


また、全ての花がくっきりとしていて

黄色ないし茶色の芯が入っています


上部の花輪は

北斗星を想わせる花を中心として回転する動きがあります


小菊としては第一級と言えますが

欠点をいうと、花弁が細いことです



天勝庵の渡辺さんは

「この石だけは手放したくない」

「これを手放したら2度とこんな綺麗な菊花石は入るかわからない」

と言っていたのですが

これまでの私との付き合いもあることと

また業者さんの看板石としてはやや小さいこともあり

無理に譲ってもらいました


ちなみに前所有者の大阪の方が

「姫菊の里」という銘をつけています


白木の菊です









銘 「福寿菊」




横17×高さ13.5×奥4.5  2180g







この石も、前述の大阪の方が

菊花石・水石専門業者の天勝庵の渡辺さんのところに持ち込んだ石です


大須の菊花石の特徴である「角花」

この角花こそ、岐阜の菊花石の証明であり、特徴と言えるそうです


その角花に赤の縁取りをもつ大変貴重なもので

さらに花弁がピンクに染まり

希少性からいうと一級の菊花石と言えます


前所有者の大阪の方が「福寿菊」という銘をつけています












横16×高さ(台込)17.5×奥6  1665g

台は仮のモノです





本来はこのように飾るよう台座がついていました



花の白が純白美しく、中芯に特徴がある花です











横26.5×高さ(台込)7×奥12  2140g





黒の母岩に「梨」が入る 梨地母岩で

太陽のような赤芯の花が4つみられる

大変に珍しい菊花石です


石質がよく、山形で、水石家好みの石です


菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんよりいただきました












横13.5×高さ(台込)16×奥6  1720g






白花がねずみ色なのと

ややニュウ(白線)が多いのですが

黒の母岩に、綺麗な赤花がたくさん出ています











横26×高さ(台込)25×奥3.5  およそ4㎏










赤白の小花がたくさん出ている

たいへん珍しいタイプの菊花石です


菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんよりいただきました











横17.5×高さ20.5×奥6.5  およそ4㎏













これは神的バランスの菊花石です

流れもあり、景色は最高ですね


大須の特徴の角花で、色がやや暗いですが

微妙に青みがかっていて、ねずみ花ではありません

白花で十分、通用します

やや黄色みがかった花もあります



この菊花石は、ヤフオクで落札したものですが

のちに杉山さんから

「私もお客さんに頼まれて入札していたんだけど

9万までと言われていたので

それ以上の金額は入れなかったんです」

「その方が落札金額にうわのせして買い取ると言っているけど

譲る気はないですか?」

という話がありました












横21×高さ(台込)11×奥3.5  1040g











この石は、花の中芯が赤で

小ぶりですがなかなか美しい菊花石です


一級品ではないものの

なかなか入手困難なものだと思います












横26×高さ(台込)20×奥16.5  およそ5.5㎏





この石は、花自体はなんてことありません

しかし母岩が非常に面白く

また、花が上から下へと流れ落ちてくるさま

七夕の笹飾りの星が流れ落ちてくるさま

をイメージさせる菊花石です



菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんよりいただきました











横18.5×高さ(台込)15×奥4  1180g





この石は、小ぶりながら、孔雀菊花石の名品といえます

花に綺麗な黄色の中芯があり

孔雀の玉もしっかり出ていて、なにより動きがあります



菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんよりいただきました












横25×高さ21×奥9.5  およそ8㎏













この菊花石は、花がねずみがかっているとはいえ

なんと言っても、花が精巧なのが素晴らしいです

より本物の菊に近い という意味においては

他に落ちないと思います


バランスもわりとよく

ボリュームもあり、母岩にグリーンが混じっています


花がねずみがかっているので

一級品とまでは言えなくとも

凖一級品の資格はあるはずです










黄金菊花石

小森宗閑の遺愛石




横47×高さ(台込)28.5×奥19  およそ26㎏強





日本水石館(岐阜県)館長 小森宗閑の遺愛石です













菊花石の「聖典」ともいうべきサイト

菊花石物語 http://www.kikkaseki.com/index.html に

≪ 昭和62年、赤倉山から瑪瑙になった黄金菊花石が産出した

春の頃産出して、夏には白花に変わりました

この時、関西の愛好者が原石を求めて根尾谷に通ったので、

黄金菊花石が関西にたくさんあります ≫


また

≪ 菊花石の多くは、水蝕を受けています

水により錆を生じている花を「さび菊」と呼んでいます

おいておくと錆が深くなり黒ずんできます。石を売るために、

岐阜では、これを黄金菊といっていました ≫

とあります



「黄金菊花」と称している石のほとんどが

業者さんが、嫌われる「さび花」を「黄金花」と言い換えて

希少なものをイメージさせて販売しているということです


本当の黄金花は、さび花と違い

白い花の周囲を縁取る感じで黄色が入るものと言えるでしょう













横26×高さ(台込)33×奥8  およそ9.5㎏

















メノウ化花の傑作です

母岩も梨地で大変美しいです


根尾の菊花石専門業者の杉山さんよりいただきました









この石は、石原さんの本にも掲載された有名の石です

横37cm、台座込みの高さ30cmで、16.2キロ(台座込み)

現在、杉山さんの所有です

このタイプの石は、この石と、私が入手した石しか見たことないので

両石は、同じ母岩からつくられた兄弟の石なのかもしれません





なお、石灰岩(炭酸カルシウム CaCO3)と

玉髄やメノウ(二酸化ケイ素 SiO2)とでは

成分が違うので

石灰岩が玉髄やメノウになることはありません



化学変化では、原子の集まり方が変わるだけで

ある原子が別の種類の原子に変化することはありません


(なので質量保存の法則が成り立ち

卑金属が、金になるなどといった錬金術は

ニセ科学であったとされています)



ある原子が別の種類の原子に変化するには

もともとその元素が、放射性同位元素である場合か


核分裂、核融合といった原子核反応しかないのです



核融合というのは

太陽などの恒星でみられる現象で

これを利用したのが水素爆弾です



核分裂は、原子力発電や原子爆弾にみられる現象です



天然の原子炉は

ガボン共和国〔中部アフリカ。西は大西洋のギニア湾に面している〕の

オートオゴウェ州オクロにある3つのウラン鉱床で

核分裂反応があった場所が16箇所見つかっているといいます


このオクロの天然原子炉が、天然原子炉として唯一知られているものです




そう考えると、石灰岩の花が、メノウ花になる

というのは、おかしいのではないでしょうか?


なので、メノウ花と呼ばれているのは

実際には、透明な大理石(石灰岩の変成)ではないかと思います















西美濃の金生山(きんしょうざん)の

大理石より作られた更紗花瓶





ちなみに放射性同位元素とは

原子核が重すぎたり

原子核をつくっている陽子と中性子の数の割合が

つりあっていないため不安定で、放射線を放出して崩壊してゆく原子で



自然界に存在するウラン(ウラニウム)、ラジウム

カリウムなどの天然放射性元素と


プルトニウムなどの人工放射性元素に分けられます



なお、人間も炭素14や、カリウム40の崩壊によって生じる

放射能をつねに出しています



放射性物質の放射能

(放射線を出す能力)はしだいに減少していきます


これは放射性元素が

寿命によってしだいに減っていくためです


例えば、ウラン238の場合、途中色々な原子になり

最終的には、鉛206になって安定します




放射性元素の寿命の目安となるのが半減期です


半減期は

ウラン238は、4.468×10の9乗年(44億6800万年)

ウラン235は、7.038×10の8乗年(7億380万年)

プルトニウム239は、約2万4100年



【 半減期… 放射性物質の放射性元素の数が半分になるまでの時間

放射性元素だけでなく、素粒子にも用いる 】



最も半減期が長いのは、質量数が87のRb(ルビジウム)で、な475億年

ビッグバンによって宇宙が始まった138億年だから

宇宙年齢よりずっと長いってことになります


一番短いのは、質量数が207のPb(鉛)で0.805秒 です





炭素14の半減期は5730年で、原子核の安定した窒素14となるります


この炭素14は、地球の大気の二酸化炭素に一定濃度含まれていて

全ての生物にも同じ濃度の炭素14が含まれているといいます


大気中、生物中の炭素14の量は

植物の光合成などをとおして釣り合いがとれているそうです


そして、動植物が死ぬと、その遺骸から崩壊しつづけ減少していきます



放射性元素は、熱や圧力

あるいはいかなる化学反応にもに影響されず

時間の経過とともに一定の割合で崩壊していくので

含まれている炭素14の量を測定することで

その動植物の死滅した年代が判ります



骨や木や貝などはこうして年代を測定し

土器など生物以外のものは、その付近で出土した

動植物の遺骸を測定することで年代を推定しているのです




地球の年齢などはどのように測定するのか?


かつては、地球の年齢はせいぜい1~2億歳と考えられていました


1950年代になって、カリウム40(半減期13億年)が

岩石に取り込まれて崩壊してできたアルゴン40の量を測ることで

岩石がカリウム40を取り込んだ年代が判るようになったといいます



60年代には、ルビジウム87(半減期475億年)が崩壊してできる

ストロンチウム87の量を測定する方法も開発されたといいます


それによると最古の岩石は約38億年前にできたもので

地球の年齢は、地球と同様にできたと考えられる

隕石から、約46億歳と推定されたそうです












横23×高さ(台込)15×奥6.5  1963g











この石は2016年に初鹿谷で採掘された

グリーン母岩に、ピンク系の花弁や赤芯が出る新しいタイプの石です

50個ほど磨かれましたが

一級品と言えるものは、この石と別の1つだけで

この石が最高のものであるようです


寄せ菊としては、これ以上に美しいものを目にしたことはなく

2㎏をきる大きさですが、私が買った菊花石の中で2番目に高価なものです

一番のものとはじつに20㎏近くの差がありますが

金額の差はわずか2万円です



根尾の菊花石専門業者の杉山さんよりいただきました



ちなみに50個のうちの名品のもう1つが下の写真の右の石で

私のところにはありません



















横17.5×高さ(台込)27×奥16  およそ4㎏







この石は、全部が牙!

全牙の超めずらしいキバ菊です


牙菊の一級品ですね













横36×高さ(台込)27×奥6  およそ9.5㎏










この石は、白木の菊の傑作です

菊花石の聖典ともいうべきサイト

菊花石物語でも

http://www.kikkaseki.com/index.html


なかなかこれだけの「糸菊」はみられません


花の形が素晴らしく、また大きく、数も多いです

全体のバランスもいいです


また、よけいなさびやニュウ(白線)もなく

母岩に赤も混じっています



但し左端に補修跡があります


とはいえ観賞石の場合

「ここを切断すれば山形になる」

と思って切ってみると

石目があって割れてしまった


そこで 「じゃ、このように仕上げていこう」

と考えを変えていく

などということはよくあることで


石目があったら

あらかじめボンドを注入してから磨くというのも普通です



それよりもそのクラックが観賞に堪えうるか?

ということが問題であり

この石の場合ほとんど問題がなく


じゃまなニュウ(白線)やサビが入る

石よりぜんぜんよいです


この石は、オークションで4万くらいで落せましたが

15万くらいまでなら入札するつもりでした


それくらいな希少性は十分にあると思います












横11.5×高さ(台込)11×奥8.5  1655g












この石は、いわゆるミニ花、粒花です


ヤフーのオークションで、意外と高い落札となりました


台からみてもかなり古い石のようです



















横16×高さ(台なし)12×奥4  1480g





白木菊の川ずれ(梨地)


川ずれ菊花石とは

東谷川(ひがしたにがわ・木曽川水系根尾川支流)や

根尾川の本流で発見された菊花石だと言います


原石の多くが、長い年月の浸蝕により

花がなくなってしまうこと

また、菊花石の産地の根尾谷は海に近いこともあり

川ずれの効いた石の良品は、少ないようです


昭和初期の頃から熱心な愛好者が川ズレ菊を探しているといいます



根尾の菊花石専門業者の杉山さんよりいただきました














グリーン母岩は

菊花石の母岩のうちとくに美しいものと認識されていますが

この石は、グリーン母岩に赤花の最高傑作です





横25×高さ(台込)39×奥16  およそ21㎏


























根尾の菊花石専門業者の杉山さんよりいただきました



       もともとは

写真にあるように

もっと大きい石で

重さがありすぎたので

周りを削ったそうです











横15.5×高さ(台込)23.5×奥6  2498g




ピンク花でバランスもよい




この石も根尾の菊花石専門業者の杉山さんよりいただきました











横14.5×高さ(台込)18×奥7  2642g

















模様の面白い孔雀菊花石です

ヤフオクでの落札










    


横20.5×高さ(台なし)38×奥11  およそ8㎏


    



    


台込では

高さ43cmあります






花がねずみがかってはいるものの

花全体、さらに全部の花がピンクです


根尾の菊花石専門業者の杉山さんよりいただきました












横31×高さ(台込)21×奥6  およそ4.6㎏







ヤフオクで落したのですが

ヤフオクの写真は、いつものごとく

実物より、赤がかなり鮮やか(画像詐欺とまでは言いませんが)でした






これがそのヤフオクの写真です

色修正しないでそのままです

但し、机のゴミが汚くて掲載するに見苦しいので

机のゴミは消してあります


この色なら誰でも入札しますよ(笑)



ただ30万、40万で落したなら文句を言って返品するところですが

この石で15万ならそんなに高い値段ではないと思い

だまっていただいておきました



それにしても、菊花石に限らず

ヤフオクで購入すると、赤はほとんどこんな感じです



花もこんな白ではないです









美山 紅梅石



岐阜県の美山町(みやまちょう)は、岐阜県山県郡にあった町で

2003年に高富町・伊自良村と共に合併し、山県市となっています

山県市神崎が、もとの美山町だそうです


根尾の菊花石は、赤倉山で8割

初鹿谷(白木)で2割採掘されたといいますが


じつは美山でも菊花石をわずかに産出し

「美山の菊」と呼ばれているそうです



美山町には日永岳(1158m)を源流とする

武儀(むぎ)川の支流 神崎川が流れています

なお、武儀川は長良川の支流です


美山の菊は、神崎川と武儀川に添った広い山地で採取できるようです

また、美山には、菊花石の仲間で、紅梅石と呼ばれる石が採れます

多くは神崎川で採取されるようです


紅梅石は、石灰質の核が集まり、マグマの中で弾ける→菊花となる さい

穏やかに弾けたことにより梅に似た花ができたようです


紅梅石の母岩は石灰質を多く含むそうです


石灰質を多く含むので、弾けた核が軟らかく広がって梅花となるそうです






横17×高さ(台なし)15×奥4  1105g




もともとこの景色で台座にすえてありますが

よくありません









これが一番、景色がよいです


左端の花は、ぼたん 

あるいは、ぼたん菊

と呼べる大きさです







石原宣夫先生の

サイト「菊花石物語」の長田コレクションに掲載されている

美山のぼたん菊














横27×高さ(台込)35×奥9  およそ9㎏











茶色の線は、ヒビでなく、ニュウの一種です

ヒビ割れはありません


ちなみに石に入る線を、ニュウと呼びます

陥入のニュウだと思うのですが・・


石の陥入(割れ目・すき間)部分に、石灰岩や石英などが流れ込んで

空間を満たして凝結します

その結果、白い線のような模様が、石の中にできます


ただ、ふつう白いことから→「乳」→ニュウ

と呼ばれるようになったのかもしれません


もともとはヒビ割れができて

ニュウが生まれたということではありますが


菊花石物語によると

「入」は、山の地圧を受けて割れ、そこに石英が入り込んだもので

もし、ニュウが入らなければ菊花石は小さな欠片となり

割れた面は腐食して花も錆びていたかもしれない

入は母岩を繋ぐ大切な線である


とあります


とはいえ、全国の観賞石のなかで

根尾の菊花石と孔雀石は

とりわけニュウの混入が多いのは確かです







杉山さんが70万でヤフオクに出品したときの写真






この石は、当時の私が写真も含めてみてきた菊花石の中では

大きさ、バランス、花の形 において最高でした


大きさは大きすぎず小さすぎず

バランスはみてのとおり申し分ありません

花は勢いがあり、全部の花に芯があります


赤、ピンク、黄金花、グリーン母岩

梨地母岩などといった特殊性をもたない

オーソドックスなものとしては、この石に優るものは

当時の時点でみたことがなかったわけです


前所有者は一晩頼み込んで入手したそうで

そのときの値段は85万だったそうです


でも、今、観ると下方の花は、ボロいです


上は、繁栄を表現し、下は、衰退を表現しているので

銘をつけるとすると「諸行無常」とか、「盛者必衰」(じょうしゃひっすい)とか

「栄枯盛衰」とかいったところでどうでしょうか




なお、菊花石専門の業者 杉山さんでも

この石が大須産か白木産か判別できず

所有者に確認したそうです

白木産だとのことです












横33.5×高さ(台込)15.5×奥7  およそ3㎏















裏側

右側の中央にあるミニ花が可愛い




この石の赤、白は、どちらも特別、美しくはありませんが

白はねずみがかっていませんし

赤花としては花がしっかりしていて

ニュウも少なく

一級品ではないもののなかなかの石と言えます



紅白のおめでたい菊花石です











横31×高さ(台込)32×奥9  10㎏強















この石は、根尾の菊花石専門業者の杉山さんよりいただきました

「桜石の母岩の菊花石」

としていただきました



根尾の菊花石は、8割を産出したと言われる大須(赤倉山)と

初鹿谷(白木さんの所有地で白木ともいう)で採掘されました

現在では大須の採掘は終っています


一方、白木の山は、石神さん(石神銘石店)が買いとり

現在でも細々と採掘がなされているそうです


石神さんは、現在も唯一、菊花石を採掘し、加工して

月に一度、競りを催しているわけです




なんでも競りは、山の中の廃校で行われるらしく

20~30人ほどの参加者がいるそうです


11時から16時くらいまで続き

骨董品やら水石やら安価な菊花石などがつきづきと出てくるらしく

最後に、その月のトリとなる菊花石が登場するそうです


このトリになる石も

今では叩きの菊花石が多いそうです

手間がかかるので、今ではよほどいいモノしか

「まる磨き」にしないようです


トリの石は、たいがい、昔に採石しておいた原石を

仕上げて出しているようです




トリとなるようなレベルの菊花石を毎回競り落とすのは

杉山さん、飛騨高山の業者さんなど

3、4人の業者と決まっている

という話です

他の参加者がおいそれと落札できる金額ではないということです




なので

「今は、石神さんと彼ら(3、4人の業者)で

菊花石の値段が高値で安定してしまっている

彼らが亡くなると菊花石の価格は半値になるだろう」

と私に話した人もいますし


「菊花石は株価が安定している(値段が決まってしまっている)ので

商売として面白みがない。うまみがない」と考え

菊花石には手を出さない水石の業者さんも知っています



一方、「特級品、一級品の菊花石は、もともとそうあるわけではないし

盆栽のように外人が目をつける可能性もある

そうなるとむしろ今以上に入手困難となり、価格は上昇する」

という見方をする人もいます




いずれにせよ、その3、4人の業者さんによって

トリとなる菊花石が毎回競り落とされていくということは


彼らが、高価な菊花石を購入するコレクターを

顧客として抱えていることを意味するわけです





この石も、その3、4人の業者さんの一人である

杉山さんからいただきました


最近の石ではないようです



杉山さんというかたは、菊花石に関しては

豊富な経験と高い見識をもっておられます




ただ、「桜石の母岩」というのは

理解できません





そもそも、根尾の桜石とは、写真のような石で

母岩は黄色く、基本、赤く見えるところは

花がつながってそう見えているのです


花には白い芯(斑)が入り、斑(ふ)はとれやすく、巣穴をつくります



根尾の桜石








杉山さんばかりではありません


菊花石の「聖典」ともいうべきサイト

菊花石物語 http://www.kikkaseki.com/generation/page1.html


においても、以下のように


花がなく、単に赤が多い石を

「桜石の母岩」と書いています







写真は転写


この写真は、渡辺コレクションというページにあり

菊桜 横250 高110 幅100

硬い桜石の上に菊が被る母岩を菊桜と呼んでいます」

と書かれています







写真は転写


この写真は、泰中コレクションというページにあり

赤倉山  祝い菊 銘・初花  横39 高16 幅11cm

「紅い桜石の母岩に白花が咲いた菊花石を祝い菊といい」


と書かれています






この写真のも、泰中コレクションというページにあり

赤倉山  菊桜  銘・花舞台  横21 高17 巾10cm

と書かれています




しかし、これはあきらかに誤りでしょう

そもそも「桜石」というのは、初鹿谷産であって

私のホームページに紹介したとおり

赤倉山産のものは、本来の「桜石」とは別物です












天然石大好きさんより譲ってもらった

天然石大好きさん自採の石(赤倉山)








白山紋石庵の山下さんより譲ってもらった

山下さん自採の石(赤倉山)




「桜石の母岩の菊花石」と呼ばれる母岩は

山下よりいただいた石に、色具合からいうと

なんとなく似ていないとはいえませんが

やはりどうみても別物です




菊花石の研究者の方

業者さん、あるいはコレクターの人たちの間で

「桜石」と信じられている石とは

いったいどんな石をさすのでしょうか?





いずれにしてもこの石は、大変、美しい菊花石であり

また、大変、希少な石です


杉山さんから、写真がきた日に、手付金をうっておきましたが

のちに、愛媛県のコレクターから「せび、欲しい」

という話が、杉山さんにきて


杉山さんから「手付金の倍額を返金するのでどですか?」

という話がきたくらいでした(笑)












銘 「錦鯉」


この石は、有名な石で

杉山さん所有でヤフオクに340万(以前は360万)で出しておられます






サクラの赤が、錦鯉の形をしています



と、このサイト書いたところ 

それらしき石を入手しました








およそ18.5㎏








但し、この石は、あきらかに、下大須の孔雀石です

孔雀石の母岩に赤の花模様(桜)が入っています




杉山さんのお話では

「≪菊桜≫という言葉は昔からのものかは判らない」

「しかし、赤が帯状に入る菊花石の母岩を

≪桜母岩≫と言ってきたことは確か」

「花がなくてもそう呼んできた」

ということです



いずれにせよ観賞石の世界では


桜石と言えば

根尾の桜石か 渡良瀬川の桜石か

というくらい広く知られていますから

混同してしまいます



渡良瀬川の桜石



現に、他の追従を許さないくらい

の日本の美石の収集家である

私自身が悩みましたから・・・




なので

「桜石の母岩の菊花石」

でなく

「桜母岩の菊花石」

と呼ぶのが

本来は正しいと思われます










花は純白ではないですが、母岩が全部 桜というじつに稀な石です



もともと根尾の住吉屋という旅館が所有していたそうです


小説「薄墨の桜」によって

根尾谷の淡墨桜

(うすずみざくら・樹齢1500年以上のエドヒガンの古木

日本三大桜または五大桜に数えられる)

を世に知らしめた

女流作家の宇野千代〔1897(明治30)~1996年(平成8)〕は

住吉屋でその小説を執筆したといいます





淡墨桜   転写




この菊花石は当初、250万で住吉屋が購入し

のちに著名な菊花石のコレクターの手に渡り

杉山さんのもとを経て

長野の矢島さん(コレクター兼業者さん)のもとにいっているようです











昭和41年、石井銘石店刊行の 石井喜右衛門著「石のこころ」にみられる石

大きさの記述はない


この石も桜母岩の菊花石なのでしょうか?





この写真を、杉山さんに送ったところ

現在は、石神さんが所有しておられるそうです


白木さんが、初鹿谷で菊花石を発見した当時の

最初期の記念の菊花石で


石神さんが、白木さんから初鹿の山をそっくり購入したさい

菊花石も買い取ったそうですが


この三つ一組の菊花石だけは

最後まで手放さなかったそうです






さらに、杉山さんから

このような↓メールと写真をいただきました


写真の石は三蓋松(さんがいのまつ)と申しまして

勿論、天覧の石です


昭和の初めに、白木氏が山を買われて

菊花石を発見しましたが、最初のころの石です


昭和天皇が、岐阜でお泊まりの万松館より見学来られています


石神さんが白木山を買われても

天然記念物指定場所は、白木さんの持山のままでしたが

そこも結局、石神さんが買われ


そして最後に、三蓋松を手放されたそうです


白木家、最初で最後の最高峰の菊花石ということです



本日、交渉にいってまいりましたが

どれだけ聞いても金額は言われませんでした

僕の感では500万でも、買えないという石で御座います


それでも、僕のように、きちっと見せて頂いたのは3人目でした



三蓋松は、僕には分不相応と思いました

白木山の持ち主が、代々売ることなく、受け継ぐべき石と感じました















岐阜の菊花石は

8割が大須、2割が白木(初鹿谷)より出たと言われていますが


白木産には名品が多く

著名な収集家のなかには

白木産にこだわって収集される方もおられたと聞きます












横31.5×高さ(台込)25×奥10.5  およそ10㎏




二重の花もみられます












ピンク花の名石です


初鹿谷産で、表は、グリーン母岩に花が咲き

裏は、白木の孔雀石となっています



また色彩が「三蓋の松」によく似ています

こちらは、花がピンクなだけに一層、鮮やかです



菊花石専門の業者 杉山さんよりいただきました





貝沼喜久男 更紗花瓶保存会の

七里会長に、根尾の孔雀石についてお話をいただきました


七里さんは、ご自身、桜石、孔雀石、菊花石を

収集、コレクションもなさっておられるのですが


「赤倉山は、粒の大きな本孔雀が有名ですが

白木にも孔雀石はいっぱいあります

白木の孔雀は、粒は大きくても5mm程度です

ただ、白木の孔雀は種類が多いです」




「ちなみに、美山から神崎でも孔雀石は拾えます

赤孔雀や、珍しい孔雀が出る場合、美山(神崎)が多い気がします」



というお話をしてくださいました











横19.5×高さ(台込)16×奥7  2254g











菊花石の「聖典」ともいうべきサイト

菊花石物語 http://www.kikkaseki.com/generation/page1.html
 

金砂母岩(金砂地母岩)の菊花石というのが掲載されていて

ずっと入手したいと思っていました





転写  菊花石物語 企画展に掲載








このたび菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんより

手に入れることがいただきました


渡辺さんが、杉山さんから購入した石とのことでした


白のくっきり花が咲き乱れていて

金の砂という地特殊性をぬきにしても

なかなかの菊花石です



金雲のなかから花が湧きあがってくるさまを感じさせる景で

色調がじつに日本的です


中芯が黄金のものも見られます










横29.5×高さ(台込)12.5×奥18.5  およそ6㎏





孔雀菊花の場合、色がカラフルでも

孔雀の羽模様(玉)が出ていないものがほとんどです


また、玉が出ていても梨のように小さかったり

孔雀模様が、菊花石全体に対して

わずかばかり出ているにすぎなかったりです


また、仮に玉がよく出ていても

母岩にサビが多かったり、花がボケていたりと

なかなか完璧というのは難しいようです



この石は、菊より孔雀がよく

玉がはっきりしている上に、五色です










あと孔雀菊花の場合

花を作った(樹脂を埋め込んだ)可能性もみなければなりませんが

裏の写真をみると、花がちゃんと入っていますし

写真ではわかりにくいですが

結晶もみられることから樹脂でないことも明らかです






クリックすると写真が拡大表示されます


また、石を削って、樹脂を埋め込んだ場合

ニュウ(白線)が、花弁の下を通っているように見えますが

写真のとおり、ニュウがちゃんと花弁の上を通っていることでも

樹脂を埋め込んだものでないことはあきらかと言えます



と書いて、サイトに掲載していたところ




石友さんからこのような↓メッセージをいただきました


数人の仲間とオフ会でお会いして話しました所

(緋山のホームページでこの石を)

何人かが拝見したことがあり

あれは偽物だという話になりました


実物を見てないので

100パーセントとは言い切れないですが

ほぼ作り物の菊花だと思います



自分的に根尾 菊花石の研究の一環として何枚か

大きな画像頂けませんでしょうか?

研究したいんで・・・




そこで、写真を送るとともに

以下のような私の見解を述べさせていただきました




ヤフオクでこの石をみたとき

まず

「ニセモノかと疑う人は入札を控えるだろうから

うまくすると10万くらいで買えるかもしれない」

という印象をもちました

(実際には20万くらいで落としました)




現に、私のホームページで

ニセの孔雀菊花石に気をつけるよう情報を流していたことからか

質問箱に「つくったものですか?」

という質問をした方もいました





私も真偽については悩みました


最終的にホンモノだろうと判断して落札したのは

下のいくつかの根拠からです





1、亡くなられた一刻先生(静岡の著名な水石と美石の収集家)

の邸宅の玄関に

菊の花を盛り上げて仕上げた

大きな土佐菊花石が置かれていました



この土佐菊花石の花は、≪叩きづくり≫などではなく

誰がみても間違えのないホンモノと判ります



≪叩き仕上げ風の磨き仕上げ≫

と表現すればよいでしょうか・・・

あるいは

≪浮き彫り風の磨き仕上げ≫

と表現すれば適切でしょうか・・・



花を浮き彫りにしつつ

石を丸みがきしてありました




一刻爺先生のご子息 一刻亮さんが

ご厚意で写真を送ってくださったのでこれを掲載します

クリックすると写真が拡大表示されます

















おそらく、こうした叩きと磨きが同居したような仕上げは

水石家うけする仕上げ方として

流行した時期があったのではないかと想像できます






この石もそうですね

これは、根尾の菊花石専門業者の杉山さんが送ってきた画像で

ご自分で仕上げたと言っていたかと記憶しています





さて、一刻先生の土佐菊をみていた経験があった私は

オークションに出品された石を一目みたとき

「これは一刻先生の土佐菊と同様

叩きと磨きが同居したような仕上げで

ホンモノの可能性があるぞ!!」

と感じたわけです




ただ、一刻さんの土佐菊のように

花弁が、石英質に近いものなら

ホンモノであることは明瞭でしょうけど


ヤフオクに出品された石は

花弁が石灰質っぽいので

樹脂かどうかの判断しにくく悩んだわけです





2、この菊花石のオークション開催期間中に

別件で

菊花石・水石専門業者の天勝庵の渡辺さんに電話したさいのことです


この石に話題がいき

渡辺さんが

「ふつうニセモノは石を掘って、樹脂を埋め込むのだから

菊が平らだよな。ホンモノかもしれないよ

このような菊を盛り上げたニセモノはみたことない」

と言われていたこと


これに関しては、渡辺さんに言われるまでもなく

私もそのように思っていました





3、「太平楽」(本の写真の石)の花に

ヤフオクに出品された石の花が類似していたこと







「太平楽」は

「虫食い花」にはならず

花弁の内部に玉が浸食し

中芯にまで玉模様がみられます




虫食い花




クリックすると写真が拡大表示されます


この菊花石の花も

虫食い花にはならず、花弁の内部に玉が浸食し

花弁の中芯にまで玉がみられます



逆に、「花は加工されたものである」

と仮定すると


なぜ、素人うけする綺麗な花でなく

わざわざ、こんなへんな花をつくったのであろうか?

という疑問がでてきます




4、そしてこれが、一番の判断基準となったことですが

最高と思われるニセモノの花と比べても

この石の花は、複雑すぎます




最高と思われるニセモノ(樹脂うめ込み)の花でも

これ↓が限界でしょう







5、それと、樹脂を埋め込んだ場合

母岩を掘り下げてあるわけですから

花弁に母岩が混じる ということはあり得ません


まして、樹脂を盛り上げた場合

底の母岩の一部が

盛り上げてつくった花弁に混じる なんて

とても考えられないことです


仮にそこまで細工するたとしたら

大変な作業ですし

「そんな大変な細工して、こんな不自然な花なの?」

という疑問が残ります





以上、5つ判断からの落札でしたわけですが


正直、私もヤフオクで落札するさい

100%、ホンモノとの確信がもてず


五色で玉がはっきりしている孔雀石自体が希少なので

最悪、ニセモノでもそこは生きる

という保険をかけて、落札したところはありました






あと、この石を手にしてからの

真偽の判断ですが


1、ニュウという白線が、菊の上を通っていること

(偽物は、石を掘って樹脂を埋めるので、ニュウは菊の下になる)



2、石の裏の花弁は明らかに石です


3、岐阜の菊花石や孔雀石は、ジャスパーやメノウのような硬さがないので

磨いてもツヤがそれほどでません


そこで、ふつう「ロウ引き」といって

表面にロウを塗ってツヤをよくしてあります



【 ロウ引きの方法は、まずは、石に、ロウソクをクレヨンのように塗る

或いはロウソクをガスバーナーであぶって、ロウを石全体にたらして付着させる

つぎにこの石を立てて、ガスバーナーであぶり

ロウを薄くしていきます (余分に塗られたロウは下に落ちる)


なお、菊花石を専門に扱う杉山さんによると

ロウ引きは、長年置くと、黄色みを帯びてくるので

ロウ引きし直す必要か゜あるといいます


また、ロウ引きした菊花石を

湿気のこもりやすい部屋に置いておくと

2、3年で、一部のロウが

垢のようにボロボロはげてくることも分かりました


こうした場合、手でこすって落せるロウは落して

上から古谷石に用いるのワックスをかければ問題ありません

むしろロウ引きよりも、綺麗な艶がでます 】




ところがこの石は、なぜかニスのようなものが塗ってありました


後ろは、経年劣化により

はげた部分もみられるのですが

さらに経年劣化とは別に

写真のような塗りのムラがあるのです





ホンモノそっくりの花を作るだけの技術をもつ名人が

塗りのムラの残る仕上げをするとは考えにくい

ということもあります



以上からして、ホンモノではないかと思いますが・・・・

さてどうでしょうか?




真偽を判断するため、いずれ暇をみつけて

紙ヤスリで、ニスを落としてみようかな?

とも考えています



と書き、しめくくりましたが




石友さんから、以下の返信をいただきました



頂いた大きな画像や説明文を拝見いたしました

それで何故 自分が最初拝見した時に不自然さ 

違和感を感じたんかな?

と考えてみました



自分は、菊花石に特化した鑑賞石愛好家ではないんですが

何百?という根尾菊花石を見てきましたが

不自然さ 違和感を感じた菊花石は ほぼ無いです


何故か?

それは、自然が作り出す本物だからです


違和感 それは人間が手を加えた? または作ったから?

不自然さ 違和感を醸し出してしまうんです


「じぶんは菊花石の花だし加工も一応

作業してますので感じるのもあるかも?」




自分が考察してみると

母岩を掘り下げて樹脂を埋めるというのとは違うということです


それだとある意味 もっと綺麗な? 花弁になるでしょう

そりゃ樹脂ですから綺麗?だわ



これは 白い塊り(ニュウの塊り?)

花だししてると よくあるんです

超邪魔なんですが・・・普通 削り取る


を利用して、溝ををつくり

境目に黒い線を書き入れて花を作った


≪叩き仕上げ風に見せかけたモノ≫

だろうと思いました



気分を害されたかもしれませんが、メールさせていただきました

今までの付き合いからネ!







そこで、私は、以下のように返信しました


気分を害するどころか感謝 感謝ですよ

見識が深まります


ニューの塊に菊をつくる!!

そんなニセ菊花石もあるとは衝撃です



それにしても

≪叩き仕上げを装った 叩きづくり≫とは・・・




こうなったら紙ヤスリでニス落として

とくに菊の部分は入念に

黒い線が消えるかやってみます





ということで

仕事そっちのけで、ニスを落とし

どこまでがホンモノか確かめた結果が

この写真です





なお、古谷石を仕上げるワックスをかけています


床用の固型ワックス(ホワイト)を

石の表面に歯ブラシで薄く塗って

たわしでこすり、布でこすりツヤを出しました





このワックスは、ニスと違い

洗濯用の粉石鹸で洗ってから

外にしばらく放置して、雨にあてれば

すっかり落ちてしまいます













グリーン、黄色、こげ茶、茶赤、白の五色の孔雀で

特筆すべきは

グリーン、黄色、白の3色の玉が

混在しているというところです





みごと左上の菊は、完全に消えました

まるっきりの

≪叩き仕上げを装ったもの≫

でした



しかし、右下の菊は、思ったよりは生きていました



左上の菊の線は、紙ヤスリで簡単に落ちたので

「これは右下の菊も、すぐ消えてしまうな」

と思ったのですが


中芯もあり、それなりに菊にみえます




右下の菊の黒い線については

紙ヤスリのあと

ナイフの先でひっかき

さらに溝に、もう一度、紙ヤスリをあて、丹念にやり


さらに写真をとって大きな画像で確認し

怪しげな黒い線も再度ナイフでこすっていますので


まずまずこれが正体と言えます




右下の菊に関していうと

紙ヤスリをあてる前は、9割がたは叩きづくり


紙ヤスリをあてた後の現在は

右側の花弁の溝に作為が認められるので

8割がたの叩き仕上げ 2割の叩きづくり

といった感じでしょうか・・・





それと下の写真の石との共通点から考えると

左上の花=白の塊も、単なるニュウの塊ではなく

完全な菊花になりきれなかった

菊花くずれと言えると思います



つまり、偽花ではなく

菊花くずれということです





転写





結果をみると


≪孔雀菊花石のニセモノは

樹脂を埋め込んだものである≫

という先入観にとらわれていたことが

真偽の判断を、誤らせた原因でした




違和感を、知識によって打ち消しての

オークションでの落札でしたが

その根拠となる知識に誤りがあったわけです




それと加えて言うなら

「叩きづくりなんて簡単に見破れる」という

過信からも、はなから叩きづくりなど

頭に置かなかったのも原因の1つと言えます





さすが、地元で

自分で菊花石を拾ってきて

磨きまでしておられる石友さんです




とはいえ、右下の花から言えることは

「孔雀の玉が花弁の内部まで浸食しているのでホンモノのはずだ」

と見立てた部分だけは

私の見識の正しさが確保されるという形になり




さらに、奇しくも、左の上の菊も

菊花くずれであることが判明し

どちらもホンモノであった ということになったわけです






観賞石の分類について

全国的視点から、孔雀石について述べると

梅花と孔雀の違いは

基本的には、玉が〇が梅花  玉が◎が孔雀 となります


◎は、孔雀の羽根を象徴しているわけです





転写



岐阜の孔雀石



色が多彩で綺麗な石には「五色石」「錦石」などという名称が付され

「孔雀石」にもそうしたもの

〔金生山の紅孔雀石(紅更紗石)や、秩父大滝村の孔雀石など〕

もありますが


岐阜の孔雀石や、五城目孔雀石の場合

第一義はあくまで、孔雀の羽根を象徴しているもの

ということになります





五城目孔雀石




五城目孔雀石


岐阜の孔雀石が、石灰岩系統(大理石)の石なのに対し

五城目は、石英系統(水晶・メノウ・ジャスパー)で

質がずっとよく

中は、水晶がぎっしりつまった感じです




いずれにしても、岐阜の孔雀石や、五城目孔雀石の場合

第一義はあくまで、孔雀の羽根を象徴しているもの

ということになりますが


孔雀菊花石の場合

玉がしっかりしたものがほとんどなく

前述したとおり

母岩が綺麗なだけのもの

玉が梨地のように小粒で、しかも◎でないもの ばかりです


つまり全国レベルの視点からいうと

「いちお孔雀菊花石」というものばかりです




とはいえ

ここまでのレベル↓になると

脱帽ですが・・・





2017年、埼玉スーパーアリーナ開催の

第8回 世界盆栽大会と同時開催の水石至宝展に

展示された孔雀菊花石   転写



クリックすると写真が拡大表示されます


札の大きさから推察すると

そんなに大きさがない感じです






となりに展示された門司梅花  転写








転写


こちらは素晴らしい孔雀石です

かなり大きさもありますね



左肩の菊はホンモノでしょうか?




(写真では、拡大するとボケるので判断はムリ)





樹脂花





これもニセ花?










クリックすると写真が拡大表示されます


第10回 世界の盆栽・水石展 (平成元年出版)

横42センチ


この石は、ちゃんとした玉のある孔雀の

孔雀菊花石です


花もみごとですが

孔雀部分が少なすぎるのと、サビが少し残念です




なお、≪孔雀菊花石の菊花は、孔雀の中にはできない≫

≪孔雀菊花石の菊花は、孔雀の中でなく、孔雀のそばにできる≫

というのが、鉄則で

孔雀の中に、菊花がある石は、樹脂花を疑ってみる必要があります






クリックすると写真が拡大表示されます


この石は、杉山さんが写真を送ってきて

60万という値段でした


孔雀の玉がいいので、購入を迷いましたが

孔雀が少しボケているのと

菊も若干、たよりない感じで


また、石にサビが多いことから

孔雀=美しい というイメージがもてなかったので


スルーしました






この石も、杉山さんが写真を送ってきて

50万くらいの値段がついていたかと記憶しています


純白、くっきりの芯がある大花で

母岩も綺麗

サビの混入もありません


ふつうの菊花石としてみるなら

秀石でしょう


しかし、玉がはっきりしていないことから

「孔雀」のイメージがもうひとつ湧いてこずスルーしました






1985年6月号の愛石界という雑誌の表紙を飾った

日本菊花石協会会長の孔雀菊花石 横38㎝


孔雀はおもしろいですが

菊となると

右にいちおう菊があるという感じですね




このように、孔雀菊花石というのは

これは!! 

というのがなかなかないのが現実です





話を戻します


いずれにせよ

以上のことからすると私の入手した石は

しっかり玉が出ていて

しかも五色の孔雀ですから


花はよくなくとも

孔雀菊花石として、それなりの価値をそなえると言えましょう







なお





このような石は論外にせよ







こうしたちゃんとした叩き仕上げでも

岐阜の菊花石の場合

1割、2割は、叩きづくりの部分がみられます


いまだ岐阜の菊花石で

100%純粋の叩き仕上げ

というのは見たことありません


花がよいものは丸磨きにするからだと思います



そこで

100%純粋の叩き仕上げというものはどういうものか

紹介しておきましょう









この石は、多摩菊花石で

私に最初に石を教えて下さった方の自採石であり

その方自身による仕上げです



6.3㎏あります







その後、杉山さんより

「菊石 孔雀石」という素晴らしい写真集を

いただきました





ワコー菊花石センター  若森孝基

1974年(昭和49) 限定1000部出版

価格 2万円 とあります



杉山さんのお話によると

若森氏は、菊花石の8割を産出した

赤倉山の所有者であったらしく


「石神さんのように

採掘した原石を、磨いて売っていたのだろう」


「昔、岐阜にお店があったが

菊花石のブームが終わって

まもなく潰れてしまった」


「おそらく山も手放したのではないのか?」


という話でした





そこで

赤倉山の歴史を調べてみると

「菊花石物語」というサイトにおよそこのようにありました


昭和30年頃に、赤倉山の谷、門脇谷の河川工事のさいに菊花石が発見された

しかし、人の噂にあがることもなく、岩魚釣りの人が希に訪れる寒村であった


昭和36年頃に石ブームが始まり

昭和37年に採石許可を取り、坑道掘りによる採掘がなされるようになった


昭和40年頃に、石ブームは収束したが

赤倉山の菊花石の採掘は続けられた


昭和52年頃から、赤倉山の奥、上大須にダム建設が始まる

昭和54年頃に、仮設道路が出来てトラックが入れるようになると

菊花石の採石が、坑道掘りから、大がかりな露天掘りに変わった

これにより、これまでの何倍もの菊花石を産出できるようになった




なお、露店掘りとは、ウキペディアによると

坑道を掘らずに地表から渦を巻くように地下めがけて掘っていく手法

極めて原始的な採掘手法で、地元の人がダイヤモンドやエメラルドなど

宝石類の採掘に用いる程度であったが

第二次世界大戦後、大型機械の出現で

オーストラリアの鉄鉱石など大規模な開発が可能となった

とありました





オーストラリアにあるスーパーピット金鉱山   転写





オーストラリアのレンジャーの露天掘り  転写




赤倉山の歴史に話を戻します


さらに

露天掘りにより大きな母岩が産出され

索道(さくどう・宙ずりのケーブル)で山から降ろすので

母岩が割れることなく、大きな石が出回ることとなった





索道  転写




平成14年頃には菊花石層は取り尽くされてしまい

約40年に渡る採掘は終了した


とあります



また、「菊花石物語」というサイトを運営なされている

石原宜夫氏の「根尾谷の菊花石」という書籍には


平成26年、赤倉山閉山する とありました






「菊石 孔雀石」という写真集は

オールカラーで、写真の画質も最高で


私がこれまでに見てきた

石関係の書籍で、ここまでお金をかけたものはみたことありません



岐阜県知事の菊花石の紹介文や

岐阜市長の祝辞まで、顔写真つきで掲載されていて

当時の若森氏の隆盛ぶりを思わせます





また、この写真集には


伊勢神宮、熱田神宮(愛知県)、靖国神社、高千穂天岩戸神社(宮崎県)

多賀大社(滋賀県)、橿原神宮(かしわらじんぐう・奈良県)

出雲大社、大山祇神社(おおやまつみじんじゃ・愛媛県大三島)

明治神宮、北海道神宮(札幌市)、猿田彦神社(三重県伊勢市)

津嶋神社(香川県津島)、恵比寿神社(渋谷区恵比寿)

大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ・神奈川県大山)

南宮大社(岐阜県)、大神神社(おおみわじんじゃ・奈良県)

吉田神社(京都市)、稲荷神社(京都の伏見稲荷か?)

太宰府天満宮、貴船神社(京都府)

永平寺、高野山金剛峯寺(こんごうぶじ)、成田山新勝寺

首相官邸

などといった


名だたる社寺や公的施設に、菊花石や孔雀石を

奉納したときの記念の写真も掲載されており


若森氏が、日本の国土より生まれた至宝を

社寺に奉納することで

国家の安泰を念願したことがうかがえます











但し、全てが一級品の磨きの菊花石というわけでみなく

こうした叩きも多くみられます







それから

孔雀石については、赤倉山のうち

〇印をつけた一角(10平方メートル)からしか産出しなかったとあります




クリックすると写真が拡大表示されます




さてこの「菊石 孔雀石」から

とくに優れた孔雀菊花石を、紹介しておきます







横34×高さ40





横41×高さ35×奥23





大きさの記述なし

玉が大きいのがいいですね





横45





高さ55





高さ33




横47  クリックすると写真が拡大表示されます





横59





横60





大きさの記述なし





横27×高さ50×奥22

クリックすると写真が拡大表示されます


この石は、横浜慈徳学園 花輪次郎氏 所蔵

とあります



玉が小さい、石にサビが混入しているといった

欠点はあるものの

孔雀に、動き(流れ)があり

その流れから菊が湧出する感じをうける

素晴らしい孔雀菊花です


孔雀の中に、菊花はできない

孔雀の傍にできるのである

という定義をも崩しています


また、菊に芯あり、芯が黄色いのもよいですね



あくまで写真での判断ですが

水石を趣味とする私の眼からいうと

〔水石というのは、バランスや流れ

韻(リズム)といったものを重視します〕

これまでみた

孔雀菊花石としては、最高です




ぜひ実物を拝見したいと想い

横浜慈徳学園を調べてみると

正しくは仏教慈徳学園というようで

家庭裁判所補導委託施設で

非行のある少年を家庭裁判所より預かり、回復させる施設だったようです



花輪次郎氏は2012年に89歳で亡くなられ

1500人以上の少年たちと暮らし、非行回復させたとありました


どのような少年であれ能力を認め、家庭の愛を注いでいけば

更生するという信念を貫かれた方のようです


ご子息が跡を継いで、学園をなさっていたようですが

その後、学園は閉鎖されたようで、連絡がつきませんでした



「なぜ、非行少年を更生させる施設の学園長のもとに

このようなすごい石が渡っていったのか?」と

疑問に思っていたところ


「菊石 孔雀石」の別のページに

オランダのベアトリック王女

横浜仏教慈徳学園補導施設 ご訪問

石みがき見学

「王女は、菊花石をお持ちなりました」

という記述が、写真とともにみられました


おそらく、非行少年を更生させるための

一種の精神修養および職業訓練

さらには学園運営費を捻出するために

若森氏から、菊花石の磨き作業の一部を請け負っていたと推測され

その縁で、この孔雀菊花を入手し、所蔵していたのではないかと思われます













銘「天の川」   横38×高43

若森常次郎氏 秘蔵

天覧の石(天皇陛下がご覧になられた菊花石)

とあります


この本を出版した

ワコー菊花石センター 若森孝基氏と

若森常次郎氏との関係については

杉山さんも分らないようです


杉山さんによると

「私が知っているのは、常次郎氏のほうです」

とのことでした





要するに、孔雀菊花石というのは

これで最高レベルなわけです


赤倉山を所有した若森氏が

写真の石を秘蔵とし

天皇陛下もご覧になっています



なので、こんなのは↓ありえませんよ(笑)

樹脂を埋め込んだニセモノです





クリックすると写真が拡大表示されます













こちらの石は

花の造作が上より雑ですね



ただ、上の石よりも

ずっと孔雀はいいので

花など埋め込んでしまって

勿体ないことをしました






菊花石研究の第一人者であられ

多くの著者や

菊花石の「聖典」ともいうべきサイト

菊花石物語 http://www.kikkaseki.com/index.html

を発信なされている

石原宜夫氏が


写真集「根尾の菊花石」(2018年初版)で

このように↓述べられています


「菊石 孔雀石」の名鑑は昭和49年

赤倉山の採掘業者、ワコーが発行した立派な名鑑です

名鑑を開くと、素晴らしい孔雀菊花石が掲載されていますが

それ以後、孔雀菊花石の産出は少ないのです


それは、孔雀母岩と花との相性が悪いのです


孔雀が美しいと花が団子になっているのです

花が美しいと斑紋の色彩が悪くなり、孔雀と呼べないのです








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