緋山酔恭「山水石美術館」 全国の水石・美石を紹介 神居古潭石 (真黒・本真黒)


神居古潭石

〔真黒・本真黒〕




川石の王者、ひいては、水石の王者

とみなされている神居古潭石


その川ずれた石肌は多くの人を魅了してやみません



神居古潭石とは、神居古潭石とは で詳しく書いたように

神居古潭変成帯の岩石が転石となり

急流で洗われ水石となるとされ

基本、蛇紋岩を含む変成岩です



石狩川の中流域にある景勝地 神居古潭渓谷で採れます


しかし、一口に神居古潭石と言っても

水石の世界では

この渓谷で採取できるジャスパーの赤を「赤古潭」と呼んだり

ジャスパーの黄色を「黄金古潭」と呼んでいて

総称して「神居古潭七石」という言葉もあるくらいです





私の所有するものでも

真黒(まぐろ)、本真黒(斑入り)、蒼黒(そうこく)、墨黒(すみぐろ)、銀流し

輝緑(きりょく)、緑泥(りょくでい)、茄子紺(なすこん)

赤、黄金、翡翠系、虎、碧玉の古潭

と呼ばれるものがあります



このうち真黒、本真黒、輝緑、茄子紺はとくに人気で

翡翠系、虎なんかは珍品といえます




つまり、基本、蛇紋岩を含む変成岩ですが

わりといいかげんに、神居古潭石という言葉が使用されているわけです





また、蛇紋岩と変成岩の割合によって

真黒となったり、蒼黒と呼ばれたり、墨黒と呼ばれたり

さらには、輝緑や緑泥と呼ばれるので

境界線にあるものも当然存在し

どれに分類しようか悩むものもあります




なお、神居古潭石で、「真黒石」(まぐろいし)といっても

詳しくは、蒼黒(あおぐろ)、墨黒(すみぐろ)、真黒、本真黒 と分かれます


おおざっぱにいうと

他の川で採れる真黒石は、神居古潭の蒼黒に近いものが多く

四万十川の一般的な真黒は、神居古潭の墨黒に近く

四万十川や瀬田川のきめの細かく硬質な真黒は、神居古潭の真黒に近いです


神居古潭石の本真黒とは、茶色い「斑」が入ったもので

じつは、神居古潭石は、この斑が入ると、より黒さをまし

色調もしっとりしてくるのです

なので、斑入りの古潭として喜ばれるのです






クリックすると写真が拡大表示されます






横24×高さ(台込)17×奥17  およそ7.5㎏

















本来は、こちらが正面で

突き出しの土坡をもつ山として観賞する石なのでしょうが

気に入らず、私は、裏を正面としました







この石は、旭川水石会の会長 水上(みずかみ)さんの所有で

神居水石庵の陶山さん(副会長)を通して入手しました



陶山さんは、神居水石庵という

神居古潭をはじめとした北海道の石の展示場を営まれていて


また、高齢になった地元水石会の会員の石を

ヤフオクに出品してあげることなどをしている方です


会長の水上さんは、すでに80歳を超え

陶山さんも76歳になられています


そのような事情から

石を、これからの人に譲っていこうとお考えで

神居古潭石の名石、秀石が、入手しやすくなっています




このような茶色の斑(ふ)が入った石を

本真黒と呼びます



この石は、景としては100点ではないにしても

それをおぎなって余りある質感をもつがあり

斑の入り方もよいです











横18×高さ(台込)13.5×奥11.5  およそ3㎏











斑入り本真黒の名品

長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんからいただきました





以下、フラッシュなしで撮影











台座は、現代名人の一人とされる

中路さんの作です


台座自体は、素晴らしいものなのですが

200名山のうち150は登り

名山に選ばれていない山を含めると

400も500も登ってきた私からすると

もっと左を高くしなければなりません


これは、腕の問題ではなく

センスの問題なのでいかんともし難い





東北屈指の名峰 岩手山  転写





岩手山  転写





日本100名山 早池峰(はやちね)山より、100名山 岩手山





岩手山より見る100名山 早池峰(はやちね)山





岩手山より、200名山 姫神山(左)












横21×高さ(台なし)9.5×奥10.5  およそ4㎏













この石は、土坡(どは・平野や平地)を高い位置にもつ

いわゆる 高土坡(たかどは) の名品です


亡くなられた旭川の水石業者 一選堂の相内さんからいただきました



そのさい「これが神居古潭石で一番黒い真黒ですか?」

と質問したところ

「この石は質としては最高だけど、黒さだけいうならもっと黒いのがあるよ」

「斑入りの古潭で本真黒と呼ばれるものですよ」

「なので古潭では斑入りがとても人気なんです」

というお答えをいただき


はじめて、本真黒の存在を知るとともに

真黒と本真黒の違いも知ったわけです



ちなみに神居古潭石の真黒、本真黒では

20cmあれば大きい方で、大きくてもせいぜい30cmまでと

相内さんが話されていました














横19×高さ(台込)6×奥11  1190g


















札幌愛石会の相談役の野村さんからいただきました














横23×高さ(台なし)14×奥13  5.5㎏弱




この石はこのように観賞するよう台座が作られてありましたが

私は、前の写真のようにみています

峠道とその奥に望む

これからめざす山頂の景色です

このような見方をするのは

登山を経験し、いくども実際に山を見てきた人でないと

理解できないかもしれません


いずれにしてもこのように段をもつ石は珍しいといえます












横15×高さ(台込)5.5×奥12  719g





















この石は、小ぶりながら遠山土坡の名品、お手本のような石で

札幌愛石会の相談役の野村さんが「せび、あなたに持ってもらいたい」と

譲ってくださった石です

野村さんの石には珍しく銘がついておりました

≪さいはて≫ という銘です


お気に入りの石です



しっとり黒といった本真黒に近い真黒ではなく

瀬田川の良質の黒のようないわゆる「真黒」の最高の質です


この石はなぜか写真にするとボケてしまうのが残念

シャプで補正すればするほど、眼には全く気にならないミクロの穴が

浮き出てきて汚なくなります

このへんの写真が限界でした












横16×高さ(台込)9×奥7  703g














この石は、長野の月水苑の月水さんからいただきました

そのさい「この石は教科書どおりの形の石ではない

だからこそ

この石のよさがわかるあなたに持ってもらってよかった」

というお言葉をいただきました


斑入りではありませんが

色は斑入りの古潭と遜色なく

黒が深くしっとりとした色調です


















横22×高さ(台込17×奥16  およそ9㎏







この石は、著名な石の収集家 静岡県在住の一刻爺さんこと

田旗さん(故人)のもとに行ってゆずってもらったものです


田旗さんはいくつも古潭をお持ちですが

その中で私が最も気にった石でした



裏の写真をみると、斑入りですが

本真黒ほど黒くなくむしろ

黒は黒ですが若干、緑がかった感じの色調です












横44×高さ(台込)15×奥19  13㎏弱


















石肌に皺(しゅん)をもつ大型の古潭です

岐阜の菊花石・水石販売業者 天勝庵の渡辺さんから購入したもので

渡辺さんいわく「この石を持ってば水石界の王になれる」とのことでした



水石の場合、手が入っているかいないかで全く評価が変わってきます

九州最大の水石業者 佳石庵の中路さんが実物をみており

「手前の一部に怪しいが場所が見受けられるが、あとは自然」と言っています



また、神居古潭石専門を自称した

旭川の水石業者 一撰堂の相内さん(故人)には

写真を送りみてもらっております

相内さんいわく「私なら手が入っていればいっぱつでわかる」とのこと。。。

相内さんによると「表面をペーパーで磨いたくらいのことはあるかもしれないが

写真でみたところでは手の入っている様子はない」

と言っておられました



ただ「天下の名石の99%以上は手が入っている」

という立場をとっている 長野の月水苑の月水先生は

「これだけの石に手が入っていないことはない

与十郎石(作り石)の名手 有澤なら、まったく加工跡など残さず仕上げる

ただこの石質とこれだけのボリュームで

相内さんのお墨付きもあるというなら片手(50万)は出せるね」

とのことでした




私の見解としては

佳石庵の中路さんのいうとおり手前の一部が怪しいのと

左の溝や、手前のカール(氷河によって削られて谷となった場所)のような部分も

皺(しゅん)がないので怪しさはもっています




ただ月水苑の月水先生のいうように

世に出ている天下の名石の99%以上が多かれ少なかれ手が入っている

自採の石以外、本当にウブなのか証明することは不可能

ということを思えば

「怪しい」で、加工跡がはっきりしない。わからないのなら

それはそれで自然石と思って楽しめばいいと思います




さて、次に分類についての問題です

じつは、天勝庵の渡辺さんより「茄子紺」ということでいただきましたが

到着した石をみて「どう見たって黒だよな・・」ということになったわけです


よくよく見ると、前の写真の石(一刻さんからいただいた石)と同様

若干、緑がかっていて

超硬質の蒼黒(あおぐろ)の古潭という感じもうけます


また、底をみると、渡辺さんのいうように

茄子紺特有の模様に類似する模様があり

そうすると、超硬質の茄子紺なのかな?とも思えます


悩んだすえ、はっとみで真黒に分類しました

もともと変成岩と緑の蛇紋岩が混じって古潭の色調を生むので

真黒にも、蒼黒にも、茄子紺にも、緑にもみえてくる古潭もあるわけです












横27×高さ(台込9×奥19  およそ7㎏








      








この石は、神居古潭石の大家として知られた

吉田凡石さんの遺愛石です


神居水石庵の陶山さんがヤフオクに出品していたのを落札しました


結構、値があがって10万を超えました ><



陶山さんは、旭川水石会の副会長です


以下に、ヤフオクの説明を記述します



この石は神居古潭石の特質が備わり滑らかで硬質でありながら

油石とも言われる光沢のある石です

真黒石の中に茶の斑が入っていますが

地元では黒色の中に茶が入れば本真黒の証明とも言われています

凡石さんとよく一緒に川に探石に行きましたが

茶の斑が入る石を揚げると大変喜んでいましたが

最近では川に行っても採石することがほとんど無くなりました

やはり凡石さんは先見の目があった様に思います

凡石さんが大切にしていた一級の一石です

台座の裏に凡石さんの落款と石銘「臥竜台」と入っています

水石展示会に出展歴があります

底部を含めて自然石です



以前、旭川の水石業者 一選堂の相内さん(故人)から聞いたお話ですと

北海道の愛好家は、本真黒の斑の入り方を楽しむ ということでした


本土の水石観賞では

真黒は真っ黒でよけいなものが入らないものがよい

と信じられているので

「北海道には、真黒石を紋石のように観賞する文化があるんだ」

と驚いたのを記憶しております











横14.5×高さ(台込)7×奥8.5  795g























神居古潭、とりわけ真黒・本真黒というのは

なかなかジャグレることがないし

こぶりながらこれだけ景のよい山形石は得がたいものです

底をみると、茶色の斑がみられるように

本真黒の最高の質です












横24×高さ(台込)13.5×奥14  およそ4㎏

























神居水石庵の陶山さんからヤフオクを通して購入しました











確かにいい石ではありますが、一つ上の古潭にくらべると

誰が見ても質は劣ります


これだけジャグレる石としては、最高質とは言えるかもしれませんが・・・・



もともとこれだけジャグレる石が最高質であるわけない

くらいは予想して入札しているので問題はありませんが


この石は、写真では判りにくいですが

明らかにペンチングオイルのたぐいの

洗剤+雨ざらしでは落ちない

ツヤ出し剤が塗ってあります





とくに背面の山裾から土坡部分の塗りは

誰がみても明らかです





柳屋ポマードを塗るにしても

完全に黒でない石が、真っ黒になる

なんてことはよくあります




柳屋ポマードを塗る前の荒川石

黒に青味がかかった蒼黒です





水に濡れた状態 (ポマードは塗っていない)




柳屋ポマードを塗った後の荒川石

真っ黒で、古潭の真黒と言ってもバレません




セメダイン系?か、ラッカー系?、樹脂系? かよく解りませんが

ペンチングオイルのような

洗剤で落せないツヤ出しを塗ればなおさらでしょう


〔 静岳石なんかを黒くする場合

業者さんは墨汁に接着剤を混ぜたものを、温めて塗るようですが 〕




つまり極端に言うと

いや違うか・・・ 極端に言わなくても


今回 入手した古潭は、もともとどれだけ黒かったかは

よくわからない石であるということです



古潭では、「蒼黒」というと

真黒、本真黒より質の悪い黒ですが

こちらはジャグレます


なのでもともと蒼黒の古潭の可能性もありますし

底をみると「トマムではないのか?」とさえ勘ぐってしまいます



ただ、端を叩くとカンカンと音が響くので

ちゃんとした古潭の真黒の質なんでしょうけれど

最高質の真黒はいいすぎですよ




旭川水石会の副会長で

古潭にかけては自分の右に出る者はいない

みんな私に聞きにくる と語る

陶山さんを批判するつもりはないですが


(陶山さんには、柵留川(サックル川)石 でも

煮え湯を飲まされていますが)



陶山さんですらこうであるということは


逆にいうと、水石という文化がこんなもので

なにかを塗っても

「よい石に見れればいいんですね」

ということを

分からせてくれた石、勉強させてくれた石である

ということなのです





ちなみに北海道では

「潤石」という習慣があり

神居古潭石や幸太郎石に

機械油を塗ったり、ロウ引きしたりすることが

ふつうに行われているようです



白山紋石庵のご主人 山下さんのご友人が

3度、凡石さんのところに遊びに行かれ

石を買ってきたことがあったそうです


そのさい、凡石さんは

石にツヤを出すため

油絵で使うペンチングオイルを塗っている

と言っていたそうです


ぜんぶの石がそうではないでしょうが

石質の劣るものの大半はそうしていたようです




ペンチングオイルとは

油絵の具を溶かす溶剤です


我々が絵を描くとき

絵の具を水で溶かしますが、油絵の具の場合、水ではなく

ペンチングオイルなどを用います





私は、荒川の梅花石なんかには

ベビーオイル(赤ちゃんの肌に塗るものなので

サラダ油のようにベタつかない)

を塗って観賞します


オイルを塗るのは

疑似的に水に濡れたときの状態にするためです



しかし、ベビーオイルはどんな石にも通用するというものではありません


一度、塗ると、洗剤で落とさないかぎり

そのままずっと観賞できる石ばかりでなく


石が油を吸うのか

油分が蒸発するのか 謎なのですが

(たぶん吸うのだと思います)

2、3日もするともとの状態にもどってしまう石も多いのです



かといって山石の古谷石で使うのワックスを塗ると味気なくなります



そういうという場合に

両者の中間的存在として

「柳屋ポマード」がいいですね






柳屋本店は、1920年(大正9年)に

アメリカより技師を呼んでポマードを開発し

現在まで続くロングセラー品である

柳屋ポマードを製造販売している

と、ウキペディアにあるように


柳屋ポマードは、日本最古のポマードのようです



これは、茨城県結城市の水石業者 株木さんより教えていただき

株木さんが、色々ためした結果、たどりついたものだそうです


ポマードなら、人間の頭髪につけるものですから

簡単に落とせます



とはいえ、柳屋ポマードでもしばらくすると

もとの状態にもどってしまう石もあります





古谷用のワックスも

岐阜の菊花石でなさせれている

ロウ引きなんかと違って

粉石鹸で洗って

しばらく、外に放置し、雨にあてれば

すっかり落ちてしまうものです




ちなみにワックスをかけるとは

床用の固型ワックス(ホワイト)を石の表面に歯ブラシで薄く塗って

たわしでこすり、仕上げで布でこすれば完成です


色々なメーカーのワックスを試した結果

私は、リンネイの乳化性固型ホワイト 白木・白木床専用

というのを使っています






歴史的には、古谷のワックスには

イボタ(イボタロウムシより分泌されるロウ物質を精製したもの)

を用いたようです




古谷用のワックスならまだしも

ラッカーやニスみたな

洗剤で落とせないものを塗れば

当然、味気のないものになりますし

私の意識なかでは、最終手段です




ペンチングオイルなんか塗ってしまったら

落しようがないです


紙やすりをかけるにしてもくぼみ部分はかけられないし

かえってへんなことになります





正直、私の所有する古潭や幸太郎、トマムや千軒のなかにも

もしかしたらペンチングオイルのような

落とせないワックスが塗られていることを

怪しまざるを得ないものはいくつかあります



「もしかしたら」と表現したのは

かなり薄めて塗られているようなので、なんとも微妙なんです

(簡単に分かるような細工はするはずがないですし)



これらは完全な自然(ウブ)と称するものを

まちがえのない業者さんや

地元水石会のえらい方から入手したものですから

北海道の石も

つねに「そんなものだ」という認識は

もっておかなげればならないと思います






水石というものは

形ばかりでなく、石質、石肌を楽しむ文化なので

なにか塗ってしまったものは、最高レベルの古潭とか

また、超一級品の水石とか

とても称せないですよね




古谷などの山石ならともかく

川ズレの肌を楽しむところに川石のよさがあります






わたしも試しに、そこいらの石に

ペンチングオイルを塗ってみたのですが

(わりと厚めに塗ってみました)

セメダインを塗ったようになります





ペンチングオイルを塗っていない肌






ペンチングオイルが乾いた肌






塗った石の表面は当初、ベトベトしていて

手で直接触れないような状態なのですが


ペンチングオイルは徐々に乾燥していき

一週間もすると、透明でカチカチになります






菊花石研究の第一人者であられ

多くの著者や

菊花石の「聖典」ともいうべきサイト

菊花石物語 http://www.kikkaseki.com/index.html

を発信なされている

石原宜夫氏が


写真集「根尾の菊花石」(2018年初版)で

このように↓述べられています



≪ サバ菊の牙菊などは殆どないのです

あっても、一見さんには分けてくれません

私が始めた頃、酸サバがサバ菊として横行していました

酸で火傷した花と母岩は気持ちが悪くなります

なんでそんな下品な物を造るかと、たずねると、選ぶのは客という返事

地方の百貨店で視力の衰えた高齢者やサバ菊を知らない初心者に売りつけて

欺瞞な菊を散逸させてしまいました


そして、京都の展示会に行くと、酸サバが堂々とサバ菊として展示され

賞までもらっています


毅然たるものが水石の世界にはありません ≫






酸焼きによる菊花石  転 写





酸焼きによる菊花石  転 写


叩きづくりの花を、酸焼きにして自然風に見せていますが

そもそも叩きづくり自体、菊花石の業者間では値がつきません






そこで毅然たるものを確立すべ

ペンチングオイルの使用が許される条件を考えてみました


まぁ、以下の3つなら

水石であっても、ペンチングオイルの使用は

いたしかたないでしょう ということです



1、瀬田の虎のような柔らかい質の石で

石質や石肌よりも模様を楽しむ石



2、白っぽくて、オイルを塗って

観賞するしかないような石


(例えば、瀬田の虎でも下の石のように

なにも塗らないで飴虎なら

なにか塗って飴虎にする必要もなく

そのまま観賞できます)







3、形がよくて捨てがたいが、質がやや柔らかく

なにかを塗って観賞するしかないが

ベビーオイルやポマード、また古谷のワックスでは

しばらくするともとの状態に戻ってしまうもの



こうしたものなら

ペンチングを塗ってもいたしかたないとは思われますが


こういう石を、展示会に出すと

見る人が見ると

レベルが知れてしまいます




ちなみに今回の古潭は

自宅で楽しむならいいですが

上記の理由から

ちょっと展示会には出せない石ということです









もち込みが古いとは?



瀬田の虎には以下のような話があります




およそ11.5㎏












この石は、愛知県の水石

菊花石専門業者 天勝庵の渡辺さんからいただきました


虎としては、白っぽかったのですが

天勝庵さんが「瀬田の虎は長年雨にあてて養石すれば黒くなる(飴虎)になる」

と言うのです


この話を、長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんに話すと

「黒くならないと思いますよ

黒いものはもともと黒いのであって

よく、≪持ち込みが古い≫とか書いてヤフオクに出ているのは

なにか塗って黒くしているはずです」と言うのです



そこで、ものは試し、長年(5年以上、10年はいかないかな?)

外にほったらかしておいた石なのです



なんか、若干、黒っぽくはなった感じです

片側だけ雨にあててきたので

裏というか背面と比べても黒っぽくなったような気はします


しかし、汚れて黒くなったという程度の感じて

多分、金属のたわしや鉄ブラシでこすると落ちそうな感じでもあります



また、この程度黒さがあれば

水を濡らせば飴虎になるので

オイルやワックスを塗れば、飴になりますね






陶山さんの石の説明文にも





≪持ち込みが古く≫とあり

≪持ち込みが古い≫という言葉が

いかにいいかげんな言葉であるかが分かります



本来、≪持ち込みが古い石≫とは

およそ【 布に染み込ませた油(なたね油や綿実油など)

あるいは、手の油を

石が乾いたら付着させ、また乾いたら付着させる

といったことを長年してきた石

これにより、表面の化学反応をうながした石 】

という理解でいいかと思いますが


洗剤で落せない艶出し剤なんかを塗った石は

石が乾いた状態に戻るなんてことはないので


そもそも≪持ち込みが古い≫とかいった話とは

無縁なはずですよ(笑)






また「持ち込みの古い」という表現は

じつに曖昧で

他には


 ① 川から揚げて、長年、新聞紙かなにかにくるんで

部屋に放置したことで、石が黒くなった


② 長年、水盤に飾り、ときおり水をかけて養石したことにより

表面が化学反応を起こし、黒っぽくなった


という意味にもとらえることができますが


いずれにせよ

セメダインやラッカーのようなものを塗って黒くした石は

塗った瞬間に黒くなり、およそ永久にそのままなので


≪持ち込みが古い≫という言葉は

あてはまらないことを、ここに明記しておきます








油を塗るのは常識なのか?



それともう一つ重要なことを書いておくと

業者さんの間では

台座に据えて鑑賞する石は、油を塗るということは

常識的に認められているということです


水盤で鑑賞する石にも塗ってあることも少なくありません



しかし、【全ての石】に

≪台座に据えて鑑賞する石は、油を塗るということは

認められている≫という業者さんの論理が通用するでしょうか?



水石という世界には

例えば、北海道の石でいうと

足寄には油は塗るが、豊似には塗らないとか

古潭の蒼黒には塗るが、真黒や本真黒には塗らないとか

いった暗黙の了解というか

共通認識、常識があり

こうした常識を犯したらやはりアウトなはずです



「古潭は、オイルなど塗らなくても真っ黒」

この言葉は、石をはじめてから

今に至るまで、様々な人から聞きました



つまり、関東にもこれが常識として轟き

古潭というブランドを維持してきたわけです



また「うちの川の石は古潭に負けてない

昔は、古潭として売られていたこともある」

という言葉も、何度となく聞きました


それほど古潭の硬さと色調は

川ズレ石の理想であり目標となってきた

と言えるかと思います







以下の石は

茨城県結城市の水石業者 株木さんより購入した石です


購入した時点において

油(おそらく柳屋ポマード)が塗ってありました




①  只見川石


10㎏前後









② 抜け 産地不明

28×22×5  およそ5.5㎏









ラメがふんだんに入った石なので

八海山石ではないのか?

と考えていただいてきた石です



抽象石としてサイトに載せていました





③ 北上川石

横22.5×高さ5.5×奥16  2838g

















この石は、ちょっと黒が薄かったので

株木さんに「墨黒に油を塗って黒くしているのではないの?」と

聞いたところ

「北上の最上級の真黒に間違えなく

北上の石では、このようにジャグレをもつものは少ない」

という言質が取れたので、購入してきました






ところがのちに油がとれて

(石が油を吸ったのか? 油が蒸発したのかは判りませんが)

このような状態となりました




① 只見川





緑だと思って買った石が

青白くなってしまったわけです





② 抜け (産地不詳)

この石については、むしろ穴を人工的に開けたかどうか?

という点が問題としてあり


質は硬く、指ではじくとカンカン響きますし

色に関しては、黒だと信じきっていました


まさかのまさか真っ白です(笑)


にしても、ここまで白い石だったとは・・・

やられました ><










③ 北上川石

この石は、景がよく、質もカンカン響くし

わりと気にっていて

写真もたくさん写して、サイトに公開してましたが

この石もやられました (*´-`*)





この石の質感は、真黒系統の蒼黒なんかではなく

むしろ下の石のように

地は白っぽく、キラキラしています








これら3石は

外に放置して、雨にあてたので

油(柳屋ポマード)がとれたわけではないのです


もともと油を吸ってしまう

(あるいは、油が蒸発してしまう)石で

部屋に置いておいただけで

こんな状態に戻ってしまったのです





但し、①に関しては

株木さんに落ち度はあったとしても

さほど問題ではないです


なぜなら、もともと水石として

通用する石を

水に濡れたような状態にみせるために

塗っておいた油がとれてしまった

というだけだからです




落ち度といえば

油を塗って半年くらい置いておいて

油がとれてしまう石か

そうでない石かを確かめて

それから売ればよかったのではないですか?

ということだけです




なので①の石だけなら

なにもこうして書くまでもありません





ところが②と③はちょっと話が違います


そもそも水石にならない白っぽい石を

ポマードで黒くみせて、売ったということになります



これは、昭和30年代後半におこった石のブームのときに

静岡の業者さんなんかでさかんに行われた細工に近いです


例えば、ジャグレがいいけれど、白くて水石にならない石なんかに

墨にセメダインを混ぜて熱したものを塗り

黒くして売られたのです



結局、我々なら河原に石拾いにいって

「この石、景がいいけど白っぽいからダメだな」

と言って捨ててきますが


業者さんは

「この石、なんとか売れないだろうか?」

を考えるわけです




業者さんの間では

≪台座に据えて鑑賞する石は、油を塗るということは

常識的に認められている≫ということはあっても


それはあくまで、水石になる石に対しての話であり

水石にならない石を水石に見せかけては売っては

いくらなんでもダメでしょ(笑)



石のブームのときのように

一般の人も石を買うような時代ならいざ知らず


今は、本当に石の好きな人しか残っていないのですから

ちゃんとしたものを売ってもらいたいです




なお、株木さんは、ちゃんと別の石と交換してくれましたので

この件に関しての対応に満足しておりますが



石に限らず

「いやいやお客さんが現物を見て買ったのだから

それはお客の落ち度でしょ」

なんて平気で発言する人もいるのが

人間の世界です


なので、いちいち頭にきていてもきりがありませんね







「この石、なんとか売れないだろうか?」

これについて

今のネット時代では、こんなことができます



業者さんの中には

ヤフオクで安く落として

これを、ヤフオクで高値で転売している方もおられます



例えば、あなたが業者で

佐渡の錦紅石なんかの3級品を1万で落札したとしましょう



さて、この石を10万で売るにはどうしたらいいでしょうか?

これを考えてみてください




3級品の錦紅でも

部分的には、いいヵ所を含むので

そういった部分部分の写真を掲載することで


あたかもよい石であるかのごとく

閲覧者のイメージを膨らませてあげればいいわけです



写真の彩度を上げたり、色を濃くしたりして

よい石に見せかけて売ると


気の強い落札者だと

「これ、色が全然違うよね」 「返品してよ」と

文句を言ってこられる可能性もありますが


よい部分部分の写真を載せただけなら

文句の言われようがない(笑)




一番よい方法は、多少、彩度をあげたり、濃くするにしても

落札者が「これなら仕方ないかな」

という程度の加工にとどめて


よい部分部分の写真を載せることでしょうね




もちろん、買った人は

石がきたらがっかりするので

こんなことをしていると

「この業者の石は、いつも写真より悪い」

ということになり

長い目でみたら損することになるはずですが・・・・











横19.5×高さ(台込)8×奥10  1293g












「これぞ 古潭」と言える質のよい石です






景は右の裾野がやや太いのですが

それを補って余りある黒々とした色調をしています



(写真ではどうしても青味が強くでています

修正したのですがうまく実際の色を出せません

実物はもっと黒々しています

しっとりとした黒です)




また、ペンチングオイルのたぐいのものは

おそらく塗ってなさそうですが


仮に塗ってあったとしても

その質のよさがうかがえる石です



一選堂の相内さん(故人・旭川の水石業者)から

吉田凡石さんの葬儀のさい

真黒の古潭の

山容おだやかな小ぶりの山形石が飾られていた

というお話を聞きましたが


どういうものだったのでしょうか?



この石をながめていると

そんなことを思い起こさせます




なお、この石は

茨城県結城市の水石業者 株木さんよりいただきましたが


東北の石、なかでも伊南川・只見川を専門とする

株木さんが言うには


何十年と只見の石を扱ってはきたが

只見の真黒では

ここまで黒くなるものはない

というお話でした










神居古潭石

〔墨黒〕





横30.5×高さ12.5×奥16.5  およそ7㎏





以下、オイルを塗って撮影しました













ヤフオクをみていてもあきらかなように

土坡(どは・平野や平地)の石はやたらと出てきます

しかし段石の名品には、めったにお目にかかれません




なお土坡には

山と一体となった「遠山土坡」(山形土坡)

土坡が高い位置に存在する「高(たか)土坡」

段石と一体となった「段石土坡」がありますが

出てくるのは

山形土坡か高土坡です


段石土坡は希少です




この石は、段石土坡のお手本となる石ですね



質は、標準の四万十川石ぐらいで

超硬質ではないものの、硬さはあります


質が悪いと、オイルを塗ってもよくなりませんので

それなりに硬質なわけです



さらに、この石のよいところは

段差のところも、おっかけた感じがなく

ちゃんと川ズレが効いているということです






なお、神居古潭石でいう蒼黒(あおぐろ)は

黒いです


真黒石より質の悪いモノが

だいたい蒼黒と呼ばれているようです


蒼というより若干、緑がかったようなものが多いです



真黒がオイルや手脂(てあぶら)などつけなくても

黒々しているのに対し

蒼黒になると、オイルや手脂をつけて

観賞されることが多いようです



また、本真黒・真黒よりも景ができやすくなります



このようなことから神居古潭石でいう蒼黒は

真黒よりも評価が落ちる石という認識があるわけです










参考資料












横25×高さ(台込)9×奥18  およそ3.5㎏










中国広西チワン自治区西江上流の紅水河原産の中国名石の一つ

黒珍珠石(黒真珠石)と呼ばれる真黒石








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