緋山酔恭「山水石美術館」 日本の美がここにある!! 全国の水石・美石を紹介


秩父の古谷石




古谷石(ふるやいし)は、和歌山県田辺市周辺に産し

その産出場所は江戸時代すでに徳川御三家の一つ紀州藩のお止めの山

すなわち現在でいう天然記念物とされいて

一般には採石がかたく禁じられていたそうです

山水の景を示す多くの名石が世に出ていて

頼山陽の愛した石としても知られています


 また、加茂川石とともに、古来から日本の観賞石の代表格で

歴史は加茂川石よりむしろ古いといいます

田辺市岩代川上流付近の山より産出されますが、現在は採掘禁止となっています

また、南部川系のものは、瓜渓石(うりだにいし)と呼ばれます



 秩父の古谷石を三田川の古谷と言いますが

三田川とは川の名ではなく、両神村の一地区をさし

秩父の古谷も川の石ではなく山の石です

埼玉県両神村から群馬県の上野村、さらに長野県佐久にかけての

ところどころの山中で古谷を採石できますが

両神から遠くなるほど良質の石が少なくなるようです


昭和30年代後半に水石ブームがありましたが

三田川の古谷は、その頃 発見されたと聞きます


当時の秩父は養蚕などを生業とする貧しい農家が多かった為

ほとんどの石が県外の水石愛好家に売られてしまい

今では秩父に秩父の石がない状態となっているようです

宮中や神宮にも奉納されたようです











そもそも古谷石に限らず

北海道のポンピラ石、金山石

静岡県の静岳石、三倉石

愛媛県の抹香石 といった山石・土中石は、硬質の石灰岩です




なお、砂や泥などと炭酸カルシウムが混ざった石灰岩の場合

詳しくは、砂質石灰岩、石灰質砂岩、泥質石灰岩、石灰質泥岩と細分化され


古谷石、丹波紫雲石 などといった

水石となる硬質の石灰岩は、こうしたもののようです




また、土中石といっても、多くは土砂が崩れて露出し

谷に転がり、長年風雨にさらされたもので

山や沢にそのままの状態で放置されています




 秩父の古谷の特質すべきは、本場和歌山の古谷に比べて、石質が豊富なことです

大きく 古谷(黒)、赤古谷

砂岩(肌がざらついていることからこのように呼ばれていますが

学術的な砂岩ではなく、砥石などで表面を磨いてゆくと古谷の質があらわれます)

に分けられますが、古谷(黒)なら軟質から硬質まで

砂岩なら細かい質から粗い質まであり

秩父の古谷は、はっきりと違いが判るものだけでも10種以上あるようです




 山の石なので、拾ったときは表面に硬質化した泥がたかっています

この泥を鉄ブラシで落として仕上げてゆくのですが

いくらこすっても落ちない泥もあり、少し落としては外にほっぽっといて雨にあて

半年くらいしたらまた落としてゆくことを繰り返し

何年もかけて仕上げたものもあります

これを機械で泥を落として

(砂を吹き付けて泥を落としたり

ハンドグラインダーを用いて泥を落とす)

地を削ってしまうと

味わいのないものとなってしまいます











写真は、どちらも古谷系統の砂岩で、上は鉄ブラシで仕上げたもの

下は吹きつけにより、地を少し削ってしまったものです

このように砂岩も表面を削ると、古谷の質が現れます



かつては仕上げ屋という人がいたそうですが

水石ブームが加熱して忙しくなると、機械で仕上げをするようになり

多くのよい石が残念なものとなってしまったようです







この石は、砂岩を砕き、接着剤をまぜ

型につめて固めたものです


水石ブームのときには、石渡さんがずいぶん売ったようです



石渡さんは、秩父の水石業者で

よく樹石という水石雑誌の裏表紙一面に広告を出していましたが

高齢でお亡くなりになり、お店もなくなっています



写真の石は、私の石の最初の師匠が秩父の人で

石渡さんと懇意にしていて

石渡さんが亡くなった時、形見分けみたいにして

もらってきたものです



なお、抹香石でも同様の成型石がつくられたようで

静岡の一刻爺こと田幡さんのちころで拝見ています



なお、抹香石でも同様の成型石がつくられたようで

静岡の一刻爺こと田幡さんのちころで拝見ています





さて、古谷は、泥を少し残しておいた方が自然風で

泥がかえって景色となります


また川の石を水に濡れたような状態で飾りたいの場合、オイルを塗りますが

同様に泥落としをした山石は、ワックスをかけます

かつてはイボタ(イボタロウムシより分泌されるロウ物質を精製したもの)

を用いたそうです



静岳石(せいがくいし・古谷とともに山石の代表格)

の名品とされるなかには

墨汁で黒く色づけしてあるものも多いのに対し

(墨汁に接着剤を混ぜたものを温めてぬるようである)


一般に古谷は色づけはしません

ワックスは、洗濯用の粉石けんで洗い流し

さらに3ヶ月くらい外にほっぽっといて雨にあてればすっかり落ちてしまいます




ちなみにワックスをかけるとは

床用の固型ワックス(ホワイト)を石の表面に歯ブラシで薄く塗って

たわしでこすり、仕上げで布でこすれば完成です


色々なメーカーのワックスを試した結果

私は、リンネイの乳化性固型ホワイト 白木・白木床専用

というのを使っています











現在、秩父の古谷は、里に近い山のものはほとんど取り尽くされていて

一般の者ではなかなか入れないような山でないと拾ってこれなくなっています




なお、写真の石は、全て私か、私に最初に石を教えてくださったHさんの自採石で

秩父の古谷に関しては、業者から入手したものはなく

全て底切りしていません





古谷石(黒)


古谷系砂岩


赤古谷石


赤古谷系砂岩














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