佐治川石 神居古潭石、佐渡の赤玉石、菊花石が日本三大銘石 と言われる一方 水石の世界では、加茂川石、瀬田川石 そして佐治川石が三大銘石とされています 但し、これはおそらく水石文化が関西地方から 広まったことからだと思われます 瀬田川の良質の真黒は、神居古潭石と並べられる名石ですし また瀬田の石は石質が豊富なことから異論はないでしょう しかし加茂川の真黒(巣立ち真黒は別としても)なんかは これといった特徴がありません なので千軒石や八海山石など他の地域の石が 加茂川石に化けて売られてきたわけです 「これは加茂川石です」と言えば 加茂川石になってしまうよう石なわけです では佐治川石はどうでしょう? ヤフオクをみていても、めったやたらと色んな佐治川が出てきますね なんでも佐治川で通用しそうです(笑) よく言われるのが「揖斐川の青」に似ているという話です 転写 新潟県の仙見川石にも似てますね しかし、外装のとれた中の芯は 揖斐というより北海道の豊似石(硬質の砂岩)を思わせます 豊似は山石ですがこれが川ズレしたような肌をしています そしてこちらのほうが固有という視点からいうと 佐治川らしいのではないでしょうか? 転写 転写 豊似のような質の芯が川ズレして なんとも言えない風合いを醸し出していますね 佐治川石の真骨頂は こうした芯の肌合いに他ならないと私は思っています つまり佐治は、第一として形を観る石でなく 肌合いを楽しむ石なのです 豊似石 横22.5cm 横31.5×高さ(台込)19×奥14.5 およそ6㎏ この石も、豊似ですが 豊似にしては 少し川ズレしているようにもみうけられることから 佐治川石と称しても通ると思われます 以下、佐治の名石です 転 写 この石は、「須弥山」と銘のついた佐治の名品です とても有名な石です クリックすると写真が拡大表示されますが 外装の中の芯が素晴らしいですね 但し、頭は切って磨いてあるでしょうし 他にも多少、手が入っている感じをうけます 底は、台座の深さから推測すると自然かもしれません 転写 この石は、仮に30cm以上あって、底切りでないとしたら 超一級品の名石でしょう!! 肌が素晴らしすぎます 転写 これが、一番標準的な水石としての佐治です 景もよく、写真でみる限りでは大きさもあり 佐治の肌の良さが、思う存分、楽しめる石という感じがします 仮に底切りでないとしたら、一級品の水石ですね 佐治川石は、鳥取県鳥取市を流れる 千代川(せんだいがわ)の支流の1つ 佐治川に産出する石だと言います 鉱物学的には、緑泥石千枚岩や緑色岩と呼ばれるものだそうで もととなる岩石は約3億年前の海底火山の活動で噴出された玄武岩質の溶岩や 火砕岩(噴火による粒や砂や灰が固まってできた岩石)だとされます これらの岩石が、圧力や熱の影響を受けて 暗い緑色の岩石となったものとありました なお、千代川は、鳥取県八頭郡智頭町の沖の山に源を発して北流し 鳥取市で日本海に注ぎます 千代川水系の本流で、長さは52km 河口一帯には鳥取砂丘が広がります 旧佐治村役場 黎明の庭に置かれている佐治川石 転写 転写 転写 佐治川石は、大正末期から昭和の初期に 鳥取市内の大邸宅や旅館の庭石として使用されるようになり やがて京都に進出し、庭石や盆栽用の石として 世に知られるようになったそうです 昭和30年に、水石趣味家に広がると乱採が始まり 40年代前後には、探石銀座のような状態だったようで 佐治川本流での「全面採石禁止」の条例が出されています 現在でも佐治川での探石は、県の条例で禁止になっていて 千代川との合流点の用瀬(もちがせ)から千代川の下流全域にわたって 採取されたものが佐治川石として世に出ているといいます 佐治石と呼ばれる石にはいろいろなものがあるようで、地元の愛石家は 真黒石、灰地石、雲かけ石(石英質が雲のように入り込んでいるもの) 糸かけ石、碧譚石(へきたんせき・ジャグレをもつ青黒石)、虎石 紋石、霰石、巣立石、天平石(頭が平らなもの) の10種に分類するらしいです 上がちりめん、下が天平・紋、右が雲かけ 愛石より転写 このうち針鋸状の肌をした真黒は別格の存在とされているようです 転写 この石は、針鋸状の肌をしていて景色も申し分ないのですが 色が真黒というには薄いですね ただ佐治の場合これくらいの色でも真黒で通るようです 転写 2012年7月号の愛石の表紙を飾ったのも針鋸肌の佐治です なお、鳥取県には、佐治の芯に似た 若桜三倉石(わかさみくらいし)という石があります この石は、千代川(せんだいがわ)最大の支流 八東川(はっとうがわ) その支流である三倉川〔若桜町・わかさちょう〕に産するそうです 八東川は鳥取・兵庫県境の戸倉峠西側に発し 氷ノ山(ひょうのせん)南西麓から支流を集めつつ 西流し、千代川に注ぎます 日本200名山 氷ノ山 標高1510m 転写 山陰地方では、三瓶山(さんべさん・200名山 1126m)とともに 大山(だいせん・伯耆大山・100名山 1729m)に次ぐ名峰 以上のようなことから 三倉川・八東川で拾われたものはともかく そこから千代川に入ったものは、三倉産であれ 佐治川石として世に出たものを多かったことと思われます なお、若桜町といえば、若桜翡翠 も有名です クリックすると写真が拡大表示されます 横14×高さ(台込なし)40×奥12 およそ9.5㎏(台込) 針鋸状の肌をした佐治川の真黒です 10㎏近くあります この石は、日本名石発掘センターというなにがしが アマゾンのショップで売っていたのですが 12万ととびきり安かったので びっくりでしてすぐ買いました 日本名石発掘センターの他の商品をみてみると そんなたいしたことない石が7万とか13万などと出ていたので それほどまでには石のことに詳しくないのかも知れません 運がよすぎました もっとも、佐治川石のマニアにとって 針鋸状の真黒がどれだけあこがれの的であるかを あらかじめ知識として養っておかないと なかなか買えるものではないですね 商品の説明書きに 佐治川石は、日本の鳥取県鳥取市佐治町を流れる 佐治川から採石される石であり 結晶片岩(輝緑凝灰岩の変成岩)・緑泥石千枚岩 変玄武岩などと言われています 天空に向かって屹立する峻岳の上に険しい連峰が連なっており 角閃石の鋭い針峰が懸崖の所々に尖っており 恰(あたか)も須弥山を想わせる信仰的な山岳の姿を旁奪とさせてくれます この石は、石の三要素(形・質・色)を具備した上 特に優れた見所として ①天空の山の形が連山の姿をしている点 ②全くの自然石であるため角閃石の針峰が手に突き刺さる程鋭い点 ③床の間に飾るのに程よい大きさであり 須弥山の世界を想わせる点に特徴があります このように、漆黒色で硬質の結晶片岩であるにも拘わらず 美しい連山を形成する佐治川石は非常に 珍しく、正に「神品」とも呼ぶべき名石であると認定します とあり 「天山」という銘がついていました 12万をとびきり安いと書きましたが 現在、最高峰の水石(山水景情石)の相場価格は これくらいとも言えるのかもしれません 菊花石の見方 なんでも鑑定団は出来レース で書きましたが こんな程度の石が150万なんて ふざけるのもたいがいにせい となわけです(笑) 横24×高さ8×奥11 1869g まだ外装をまとった佐治ですが 重くて硬いです 横18.5×高さ(台込17×奥65 2488g 左の部分にふくらみみがあるのと 右下の2本の線が、この石の景をよくしています この石は、みなフラッシュなしで撮影です なので青味を感じさせますが、実物は青味は全くありません 実際の色は、フラッシュありで撮影したこの写真の方が近く これにほんの若干、茶が混じった感じの色です この石も肌がよく、佐治の中でも独特な感じです 芯の部分が、川底に埋まり 長年、砂利によって削られることで このような石になったのでしょうか? もし仮にそうだとすると、佐治川石というのは 外装をまとった石 外装を取り去った芯の石 芯が川底で砂利によって削られて生まれた石 というように 3段階楽しめる石 3度美味しい石 と言えます 横13.5×高さ(台込)26.5×奥7.5 2570g 空滝(からだき)の景 写真では判りにくいですが この石は細かいラメ(雲母)が全体にちりばめられています フラッシュなしでの撮影なので 若干青味が出ていますが 肉眼では青っぽさは全く感じません 横31.5×高さ(台込)9×奥21 5㎏強 この石は、京都の河合香艸園(こうそうえん)さんからいただきました 河合香艸園(こうそうえん)さんのウエブサイトをみると それほどでもない石がとんでもない値段がついていますが なぜかこの一番いい石が安く売られていましたので いただきました 秩父の古谷系の砂岩なんかも 石肌が素晴らしく、またその種類に富んでいます しかし、佐治の場合、そこに川ズレが加わるわけですから 敵いません この石は、景はたいしたことはありませんが 石肌が素晴らしいので 石肌を見せるような飾り方でも楽しめるわけです 激しくジャクレているわけでなく 古谷のような皺相も、瀬田のような梨もなく 多摩川の大栗のような硬質化した泥もありません ごく単純、シンプルの川ズレなのに そこはかとない趣きを感じさせる ここが佐治の素晴らしさなのです 横28×高さ(台込)7×奥16 2854g この石は、最初に紹介した針鋸肌の真黒の川ズレが完全なもので この石の肌をみると 佐治こそ日本一の肌石というのを改めて実感させられます 肌惚(はだぼれ)する石です 質ももちろんキンキンの硬さです 長崎県の水石業者 佳石庵の中路さんからいただきました 前に紹介したこのような石は すごい石ではありますが 手が入っている感じが否めませんし 肌において 針鋸肌の真黒の川ズレには 及ぶものではありません 結局、銘柄石の頂点とされているのが 神居古潭石であるわけですから 「質」のみを、突き詰めていくと ≪神居古潭石≫に行きつかざるを得ません これに対し、≪古潭の仲間≫でくくれないモノにこそ 「肌合い」のよさがあるわけです 古潭、あるいは四万十川のような 肌に、緻密さがない代わりに なんとも言えない風合いがあります とりわけ「佐治川石」は、肌に 素晴らしい特質をもつと言えるのです 横18.5×高さ(台込)325×奥24.5 およそ13㎏ この石は、菊花石・水石専門業者 天勝庵の渡辺さんよりいただきました 渡辺さんは、水石収集も長年なさっていたので ヤフオクに出品をはじめた当初は、かなりいいモノを出していました 長年、収集してきたコレクションを出していたわけですから 外装をまとった佐治の傑作です 中の芯もみえていますが 味わいのある質ですね 端っこの小さな天場が景をさらによいものとしています 横29.4×高さ(台込)22.3×奥18.2 およそ12.5㎏ 埼玉県 羽生市の盆栽と水石を販売なさっている 雨竹亭さんから、ヤフオクを通していただきました 商品説明には 佐治川独特の石肌と重量感、そして重層感を持つ古石です 唐木台座の作行も素晴らしいこの石は 旧高砂庵・故岩崎大蔵先生の遺愛石でもあります さながら天部の雲、そして下界への姿など その姿は仏界・天界を思わせるほどの 抽象的な精神性を帯びている逸品石です とありました キンキンの質、屏風の山岳に雲がかかった景 まさに、最高の石です 同時期に入手した神居古潭石です ( 神居古潭石〔真黒・本真黒〕に載せてます ) この神居古潭石が10万なら こちらの佐治は70万でも分割払いにしてもらって 手にしたいというくらいの石でした 最近、雨竹亭さんもよい石を ずいぶん安くヤフオクに出して いただけるようになりました 横47×高さ(台込)8.5×奥21 4.5㎏ 時代を感じさせる桐箱です 叩くとカンカン清音が響きます ジグレ感が素晴らしい 基本、山形石ですが、入り江、荒磯の景に見立てて 島形石としてもいいかもしれません 底切りですが、綺麗に直してあります 台座も悪くありません この石は、多摩川石愛好会の三代目会長 笹本さんからいただきました 笹本さんは、多摩川石への愛着がとてもつよく 基本、他の石は収集なされない方ですが 他の産地と比較する意味で、いくつかはもっていて この石もそのために、昔に、購入したものだそうです 底直し石ですが、これだけジャグレていて、また薄い上品な石も稀なので 工芸品としての価値もつくかと思われます また、外人さんはこういう石が好きです それから、右に白の脈線がみられますが これが、間違えなく佐治川石であることを保証しています 若桜三倉石 横20.5×高さ(台込)9.5×奥7 1318g 色は、灰に青味ががかって 若桜三倉の特徴である「よもぎ」という感じがあります この石は、長野の月水苑の月水さんからいただきました この写真より、実物は緑っぽいです 横28.5×高さ(台込)9×奥7.5 1649g ヤフオク写真 底部は、段差があるのでおそらく切ってないと思います 多少、手が入っていそうですが 入手しがたい若桜三倉としては、名石かと思います 質は、叩くと清音を発します ヤフオクで落札しましたが 若桜三倉石 遠山形 橋根龍石 紫檀台座です 遠山で、蓬色、山々の緑の美しさを感じさせる石です 台座は、大阪の名工、橋根龍石氏の手によるもの。 非常に美しく、荏油(えごまゆ)を塗りこんであるので 拭き込むたびにその深みを増していきます との説明がありました 関東ではなかなかお目にかかれない 若桜三倉なのでなんとも言えませんが これまでいくつかヤフオクに出品があった 若桜三倉の自採石(業者の石でなく)を観てきた結果から予想すると 若桜三倉は基本、よもぎ色をしているようです 以上に書きましたが その後、地元の愛石家の方と知り合うことができ 若桜三倉の基本の石は、ヨモギ色なのでしょうか? 千代川に入っても佐治川石との区別はつきますか? という質問をしたところ 若桜三倉石は、ヨモギ色しか見たことがありません(1石持っていますが) 佐治川石の肌と色は区々(まちまち)ですが 他の石との区別は難しくないと思います 一番多く持っている石は佐治川石です(庭石も含めてです) それと、そもそも佐治川石の探石は 八東川(はっとうがわ・三倉川はこの川の支流の谷川)と 千代川の合流地点よりも上流でおこなうのが主のようです また、若桜三倉石が千代川まで流れ出る可能性は低いと思われます という回答をいただいております
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